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物流最前線/ディープラーニングで物流自動化、 物流画像判別技術で一気通貫

2018年08月21日/物流最前線

パートナー関係で実現した物流画像判別技術の確立

―― 物流画像判別技術はディープラーニング技術で簡単に実現したのですか。

櫻井 簡単ではありません。人間の目に並んだと言っても、自動車と羊とりんご、洋服等、特徴が違うものを判別することは高い精度を出すことができますが、物流の現場で要求されるのはもっとシビアです。段ボールひとつとっても、きれいな直方体なのか、歪んだ形なのか、識別しないといけません。ただ、ディープラーニング技術を使えば、その差を埋めていくことができます。

―― どのように埋めていったのですか。

櫻井 NTTデータさんが物流現場から荷姿の写真データ3000枚を集めていただき、我々がプロフェッショナルベンダーとして、チューニングしていきました。一つのモノを認識・区別するには、数千枚のデータが必要です。例えばキュウリを認識しようとすると、キュウリのさまざまな形態・色・大きさ等を覚え込ませることです。ディープラーニングとは一種のソフトウェアですので、そのソフトウェアのフレームワークに学習させるということです。そうすると、これはキュウリの可能性が94%ですと、答えをだしてくれます。赤子の脳に、一生懸命覚え込ませて、子供に、そして大人に成長させていくようなものです。ただ、何を覚え込ませるのかは、顧客が何を望んでいるのかを正確に把握し、全体として必要なものを洗い直して最適な判断をしていかなければなりません。

―― 業務にマッチさせるということですね。

大野 そうです。一般的にAIは何でもできると感じている人が多いですが、業務にどうインテグレーション(ITサービス)できるかを随時確認していかなければなりません。机上検討し、現場に足を運び話を聞き、効率的に覚え込ませるプランを立てていかないと仕事になりません。先ほどのキュウリを例にとると、1個の荷物を覚え込ませるのに数千枚の画像データが必要とすると、もし1000個の荷物なら、とんでもない時間がかかってしまいます。そこは、どういうアルゴリズムで丁寧にやる部分ともっとライトにやる部分を判別し、十分な設計をした上で具体的な実証方法を研究開発してきたのです。

櫻井 当然ながら業務についての改善策は、その業務を熟知していなければなりません。NTTデータさんは物流についてのプロ集団ですし、課題感を含めて問題意識を持って業務を見ているので、業務フロー全体を見てこうしたら良い、という逆提案をします。そこをNTTデータさんは我々にトランスファー(移行・移転)してくれるので 我々も非常にやりやすい環境となっています。

―― 両社のパートナーとしてのきちんとした役割分担が技術開発を実現したと。

櫻井 そういうことです。NTTデータさんが問題や課題を掘り起こしてくれ、我々がテクノロジーでそれに挑戦して貢献していったわけです。プロジェクトに当たっては報告・連絡・相談が最も大切な要素で、課題等についてはすぐにアクションを起こし、全力で一つひとつつぶしていきました。

川口 NTTデータは元々物流ITのコンサルティングをやっていたので、物流現場を視察して業務フローを見せてもらい、顧客と議論し、困っていることをどう解決したら良いかについて長年やってきました。Automagiさんとのプロジェクトでは、週に1回は物流現場を訪ねていましたね。

<Automagi社内で最新技術を議論>
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技術は日進月歩、物流の課題は全体最適化

―― シミュレーションでは実績を出していますが、今後の課題は。

櫻井 技術的には非常に大変です。AIの会社ですので、言語処理でも高い技術力を持っていますが、映像に関しての技術で言えば、ディープラーニングの技術進歩が早く、自社技術で囲い込むのは無理です。最先端の技術論文を読んで追っていかないと間に合いません。今現在数多く使っているのは2017年の論文から推察しての技術ですし、今現在開発を進めているものは2018年の頭に出た論文です。人間は具体的な問題を解決しようとすると死ぬほど頭を使い解決できますが、目的意識なく論文を読んでも全く頭に入らないですね。

大野 論文ですので一種のロジックだけです。Automagiさんはそれを解析して応用しているんですね。それを半年くらいできちんとした技術に落とし込んでいます。一般的に、ある課題で出来るか、出来ないかを問うと、多くの企業はどちらかを答えます。Automagiさんは、こうだったら出来る、こうなったら出来ないと、具体的な答えを返してきます。さらに、逆提案されることも多かったですね。これは課題を確実に理解していないとでてこない答えですね。そして、やりきる力も重要です。3か月と決めると確実に達成してくれます。AIベンチャーとしてスピード感、確かな技術、それをやりきる力を備えています。

―― Automagiに対するNTTデータの信頼感が醸成されたと。

大野 実際、過去何社も他のAIベンチャーにも掛け合いましたが、課題を落とし込むレベルは抜きんでています。さらに、最新論文に常に目を光らせ、最新技術のキャッチアップスピードが速いことも優れている点です。NTTデータは顧客への対応に精一杯ですので、なかなか技術を追いかけるには限度がありますので、それをパートナーとしてAutomagiさんに支えてもらっています。

―― Automagiさんは限られた人数で限られた時間、どのようにハードな業務を達成しているのですか。

櫻井 NTTデータさんの目標が高いので、毎回チャレンジングなのは確かですね。ただ、我々の技術者も特性があり、各自得意分野があり、組織内でこの分野は誰というように担当を決めていますし、これまでの蓄積も非常に大きいと感じています。

―― 今後の課題について。

櫻井 技術的な観点から申せば、完全自動化まで後5年から10年は半自動化、人とロボットの共存が続くと考えています。サプライチェーン全体を見ると、方向性を合わせていくことが大切です。上流、中流、下流の内、上流と下流だけが自動化出来ても意味がありません。計画系の自動化ができないことになります。推進しやすいところの自動化が進み部分最適になる。これを全体最適に持っていくことは、産業界、あるいは消費者を含めた日本全体の課題になります。残された時間は限られています。例えば、このデータは出したくないということで、設計を進めても、うまくいかないですし、今後の完全自動化に必要だと感じてデータを出し、設計を進めていくかは、企業にとり大きな分かれ道になります。

大野 これまである意味サプライチェーンは夢の話でした。部分最適で、どこかが良くなると、どこかにしわ寄せがあります。サプライチェーンに強者と弱者が存在することは、それが最適ではないということです。多くの場合弱者は物流事業者になります。我々が、全体最適の立場に立ち、荷主側にも飲んでもらうことは飲んでもらうように提案することも多くなり、相当の割合で理解されてきました。ただ、あとは実行ですね。ここ2〜3年が勝負です。

―― 一気通貫型のサプライチェーン構築ですね。

大野 NTTデータの社歴は約30年ですが、当初は基幹システムの開発をしていました。この10年は経営戦略とIT戦略を擦り合わせて、実現可能性と経営効果の2つのバランスをとってシステム開発をしています。我々も一部分のシステム開発から始めてしまうと失敗し、顧客に迷惑をかけてしまうことになります。逆に今はビジネスチャンスだと捉えています。他社も上流から下流まで一気通貫型のサプライチェーン構築に向け、幅出ししてきました。我々は、下流のシステム開発から上流を攻めているので、逆からのアプローチで、攻めていくつもりです。

―― 今後の展望について

川口 Automagiさんとはこれまで一緒に物流画像でやってきたわけですが、今後は物流以外の分野にも挑戦していくつもりです。物流が一番難しいと感じていますので、物流で蓄積された知見が生きてくると思います。ぜひ、今後もAutomagiさんとパートナーを組んでやっていきたいと思っています。

大野 物流は幅広く、単にモノを運んでいれば良いという時代でもありません。例えば、流通小売の店舗在庫、EC在庫やオムニチャネルという分野もあります。今後、全てを含んだロジスティクス全体に幅出しをしていきたいと思っています。

櫻井 物流は荷姿や季節波動性等、非常に複雑な課題を抱えています。その物流でさまざまな技術を獲得してきたので、今後は他の分野にも進出していく予定です。一番難しい物流から取り組んだわけですので、それだけの蓄積はできています。今後はシステム開発力を横展開できるライブラリーのような、プロダクト化した製品を送り出して行きたいと思っています。また、物流画像判別技術により、映像認識支援システムのようなものをNTTデータさんの協力を得て、実現させていきたいと思っています。

<櫻井 将彦社長>
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■プロフィール
櫻井将彦(さくらい まさひこ)
1973年1月、長野県生まれ。
1997年 東京大学理学部物理学科卒。理論物理学(素粒子理論)専攻。
2001年3月 東京大学宇宙線研究所 特別研究員/博士課程。
2001年より研究者から進展著しいインターネットビジネスの世界へ飛び込み、
2001年 インフォコム入社。モバイルインターネット事業担当。
2006年に独立後、海外テクノロジー導入の複数プロジェクトを歴任。
大規模サーバシステム開発、組込システムプロジェクト等のPMの他、
数理系ライブラリの技術導入、設計・製造などをおこなう。
2010年年6月に JibeMobile社を設立 取締役CTO/Founder。
2014年に同代表取締役社長に就任。
2016年にGoogleに商標ブランド譲渡し、Automagi(株)に社名変更。
自社開発のAI(人工知能)ソリューション「AMY」を開発・提供中

<大野 有生課長>
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大野有生(おおの ありき)
東京工業大学経営工学専攻修了(SCM・国際物流を研究)。NTTデータに入社し、SCM・物流システム導入に複数参画。2009年にベトナム現地法人へ赴任し、在アセアン企業向けに50社超の倉庫・輸配送業務改善を支援。2014年より現職にて、顧客の物流業務変革のITコンサルティングに従事するとともに、物流高度化を目的としたAI・IoT・ロボティクス技術の調査研究および活用試行を産学連携で進めている。2015年日本ロジスティクスシステム協会「IoT、ビッグデータ、人工知能の進展による2030年の物流ビジョン」委員。ロジスティクス経営士。

<川口 有彦シニアコンサルタント>
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川口有彦(かわぐち ありひこ)
筑波大学ビジネス科学研究科経営システム科学専攻修了(機械学習、エージェントシミュレーションを研究)。NTTデータに入社し、金融系システムの開発担当を経て、2013年より現職。法人分野における業務変革・ガバナンス強化、組織人材コンサルティング、UXデザインによる新サービス検討コンサルティングなど幅広く活動。近年はAI技術のビジネス適用に関する業務変革コンサルティングに従事。

●「平成28年度IoT推進のための新産業モデル創出基盤事業」
(IoT・人口知能技術の活用による物流効率化のための調査)報告書
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000153.pdf

●Automagi 画像映像解析AI紹介ページ
https://amy-ai.com/

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