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3PLで物流センターが急拡大
靴EC・ロコンドの成長の舞台裏

2020年02月12日/物流最前線

出店企業向けの3PLサービスが成長を牽引

――    3.4倍もの倉庫面積が必要な理由は。

中村 一番の要員は「LOCONDO.jp」の出店企業向けに提供している3PLサービスによるものだと思います。靴メーカーやサプライヤーの物流を受託すると、一気に数十万点規模で商品が増えてしまいますので、それに対応するだけの倉庫が必要になります。

――    3PLはいつ頃から始めたのですか。

中村 南砂時代から店舗発送を手伝う程度の規模でスタートしていましたが、サービスとして本格的に始めたのは1年半程前からです。

――    サービス開始のきっかけは。

中村 もともとは、自社ECサイトの在庫量を増やすために始めた取り組みです。創業当時の「LOCONDO.jp」はまだ海の物とも山の物ともつかないECサイトでしたし、当時の婦人靴業界はECを全く相手にしない、靴は対面販売が常識という古い体質でしたので、出品してくれるサプライヤーが非常に少なかった。

そんな状況下で自社ECサイトを運営するには、いかに在庫を確保するかが課題でした。そこで、サプライヤーの物流を請け負い、在庫を自社ECと共有することが解決策になるのではと考えました。

――    どのような部分からサービスを展開していったのですか。

中村 まず、サプライヤー向けのサービスとして始めたのが、店舗に在庫が無い商品をロコンドから消費者へ直接届ける「LOCOCHOC(ロコチョク)」というものです。ロコンドに商品を預けておくことで販売機会のロスを防げるため、このサービスの提供を機に自社ECへの出店企業が次第に増えていきました。

その次の段階として提供したのが、店舗に見本品だけを置き、商品はロコンドから発送する「LOCOCHOC D(デパートメント)」というサービスで、その過程の中で自社の物流ノウハウを生かして3PLも可能なのではという発想が生まれました。

――    自社のEC物流と3PLを同時にこなすのは負担になるのでは。

中村 チームを分けていますし、WMSの思想的にはあまり変わらないため、特に負担になるようなことはないですね。1か所の配送先に送る商品が1個でも100個でもシステム的には全く影響がないので、単純に物量が増えることでスケールメリットが生かせるようになる。従業員1人あたりのKPI(重要業績評価指標)を見ても、物量が増えた方が格段に上がっています。

――    3PLは今後も強化する方針なのですか。

中村 そうですね。サプライヤーさんは季節波動のリスクもなく、格安に近い物流経費で商品を預けることができますし、ロコンドは売るものが際限なく確保できるという意味で、Win-Winのサービスだと思っています。3PLの料金は客観的に見ても安いですね、物流の担当者としてはもっと儲けを出したいところですが(笑)。

2012rokond07 - 3PLで物流センターが急拡大<br>靴EC・ロコンドの成長の舞台裏

女性スタッフが9割、自社雇用にこだわる理由とは

――    事業の拡大に合わせてスタッフの増員も必要ですね。

中村 現在、GLP八千代ではアルバイトだけでも300名のスタッフを雇用しています。4月に完成するGLP八千代IIへ移っても出荷量が大幅に増えはしないので、極端な増員はないと思いますが、人手はコンスタントに必要ですので、毎週求人広告を出していくことになるでしょう。GLP八千代IIIが完成して本格的に動き出す頃までには、あと300人、最低でも100人は欲しいところですね。

――    それだけ人数が多いと人員の管理も大変ですね。

中村 今はなんとか対応できていますが、これから人数がアマゾン規模になっていくことを考えると、人員管理が一番頭を悩ませる部分です。現在はチームリーダーを中心に30人程度でチームを組むことで連絡網を構築しており、ある程度は目が行き届いていると思います。

KPIを絶対の基準にして徹底管理する方法もあるようですが、その方法はロコンドには間違いなく合っていないですね。スタッフとのコミュニケーションは、人材管理の上でとても重要だと認識しています。

――    人材の確保に向けた取り組みは。

中村 評価をもとにした給与査定を定期的に行っていたり、フルタイムのアルバイトさんを正社員に切り替えたりしています。やる気のある方は早いタイミングでどんどん昇格していますし、実際に応募して下さる方達もその辺りに魅力を感じて貰っているようです。あとは、ランチを無料で提供するなど、福利厚生の面でも充実を図っています。

八千代市は街がまだ新しく、これからも人口が増えていくので、スタッフを募集しても反応が良いですね。南砂の頃は派遣を使わざるを得なかったですが、八千代ではほぼ全員を自社雇用でまかなえています。

――    自社雇用にこだわる理由は。

中村 コスト的な要因もありますが、一番の理由は「クオリティ」です。特にスタッフに関しては派遣よりも自社雇用の方のほうがロコンドの人間だという意味で1つ1つの作業に対して真剣度が違いますね。

スタッフには、我々がしている仕事は倉庫業ではなく、百貨店や小売店の店員と同じなんだということを、必ず頭に入れてくれと言っています。購入した商品が適当に送られてきたり、開けたら中身がぐちゃぐちゃになっていたら絶対嫌ですよね。ですから、店員になった気持ちで自分達がユーザーとして商品を購入し、箱を開けた時に嬉しいと思えるにはどうすれば良いかという視点で仕事をして下さいと必ず言っています。

――    それが品質向上に寄与しているのですね。

中村 そうですね、やはり1日に万単位の商品を出荷しているので見落としも少なからずありますが、我々にとっては例え1万分の1でも、お客さんにとってはお気に入りで買った1分の1ですから。南砂から八千代へ移転する際にも、当時のスタッフに「お願いだから、とにかく来てくれ」と頼み込んで、一緒に八千代へ移ってもらいました。このスタッフ達がいなければ、八千代に来てからの業務を乗り切れなかったですよ。それだけ自社のスタッフを信頼しています。これから先、拠点を移すことになっても今のスタッフがゼロの場所には怖くて行けませんね。

――    スタッフには女性が多いですね。

中村 特に女性をメインに募集している訳ではないのですが、結果的に応募してくる方の殆どが女性になっていますね。従業員の9割弱が女性で、その大半が主婦の方です。

身近な商材を扱っていますし、EC物流の場合、力仕事ではなくピッキングや梱包といった軽作業が中心なのも理由になっているのだと思います。ECの庫内作業は比較的女性率が高めですが、ロコンドはその中でも特に女性の割合が高いですね。彼女達からは施設内に設けた目安箱を通して、女性目線でのサービスの改善点なども指摘してもらっています。貴重な意見です。

<昼休憩で賑わう食堂、女性の姿が目立つ>

2012rokond08 - 3PLで物流センターが急拡大<br>靴EC・ロコンドの成長の舞台裏

――    人件費が上昇しており省人化の取り組みも必要かと思います。

中村 省人化に向けた自動化は常に考えています。ただ、色々調べると、完全自動倉庫のような大規模なマテハンを導入すると機器のスペックに縛られてしまうので、これは現実的ではないなと思っています。

導入コストもネックの1つです。靴はアパレルの中でも特に利益率が低く、原価率がアパレルで17~18%のところ、靴は40%弱、海外で生産しても30%程かかり、それが卸値に反映されてどうしても利幅が狭くなります。ですので、大型の自動倉庫などはコスト面で導入が難しいですね。「AutoStore」も一時は導入を検討していましたが、コスト面で断念しました。

――    ロボットやAGVの導入は。

中村 今のところ、どちらも考えていないですね。特にAGVの導入については懐疑的です。

一般的に、AGVを使ったGTP(Goods To Person)形式のピッキングを採用すると作業効率が上がると言われています。ですが、AGVに対応した商品棚は高さの制限がありますし、AGVが潜り込むスペースを作るために棚の最下層を開けておく必要もあるので、どうしても保管効率が低下するという問題が生まれます。我々は、これまで倉庫が手狭になっては移転を繰り返してきた経緯があるので、少しでも商品を置くスペースを確保したいというのが正直なところです。

AGVについては、アマゾンのKIVAシステムが登場して以降、色々なメーカーに話を聞いたり、実際に1社とは導入効果を試算してみたんですが、結果として床面積あたりのキャパシティが20%も低下したので、保管効率の面で導入は考えにくいですね。

ただ、今春にGLP八千代IIが稼働し、倉庫が広くなり階層も増えるので、縦横の搬送手段については何かしら考えていかなければならないと思っています。自動化についても、新倉庫へ移ることで何か新しいアイデアが生まれるかもしれないですね。

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