最高の材料完成でアップコン設立
―― アップコン工法を武器として会社を設立したわけですね。
松藤 会社を設立したのは2003年6月でした。実は以前私は14~15年間、オーストラリアの設計事務所で働いていました。ある時ウレタンを使った建物沈下修正の技術を持った会社が日本進出したいという話を日本でいうJETROのような現地の機関から聞きました。この技術はフィンランド企業の工法でした。その技術を一定の国で使える権利を買い取ったオーストラリアの会社が日本法人を作りたいということでした。これは革新的な技術だと考え、私が日本に帰り日本法人を立ち上げることにしたわけです。2001年に設立し、2年目には単独黒字になる目途がつくまで順調に成長を続けました。ある時、本社の社長と話しをしているときに材料の話になり、今後日本ではフロンが使えなくなるが、この材料にはフロンが含まれているのかどうかを尋ねました。その答えは、「問題が起こった時は会社をクローズしてオーストラリアに戻ってこい」というものでした。もちろん材料の中身も教えてもらえませんでした。
―― その話の経緯だと、フロンが入っていたということですか。
松藤 それはわかりません。でも、当時従業員も抱えていましたから、私だけオーストラリアに帰るなんてできません。事業自体は社会貢献も高く日本にまだない画期的な事業であると思っていました。問題は材料面の不安だけだったので、その後独自に材料開発に取り組むことにしました。当時ウレタン樹脂では国内でトップシェアを持っていた企業と共同開発しました。「こんな感じ」という手探り状態から始めました。全く資料も材料本体もないものですから、苦労しましたが、フロンも使わず、環境にやさしい材料が出来上がりました。当初私が考えていたものより、明らかに良い材料になりました。
―― 事業自体が画期的な事業の上に、良い材料ができたことでビジネス展開としては盤石となりましたね。
松藤 そうですね。材料開発には苦労しましたから、それも当初の予想に反してより良いものになったわけですからね。これで革新的ビジネスに打って出られると起業したのです。
―― その材料をもとにアップコンとして事業展開するわけですね。
松藤 そういうことです。ただ、問題はその材料が高品質だけに、価格も高いのです。当初は利益が出るかどうか微妙だったのですが、とりあえず利益は低くても施工ができる材料を手に入れることができたのです。その後もずっと研究を続けており、改良を進めています。
―― 松藤社長が共同開発した材料の特許は取られたのですか。
松藤 実は材料について特許は取らないものなのです。平たく言えば、カレールーと同じで、何のスパイスを何%と表記すれば、1%でも他のものを混ぜれば別のものになります。ですから、その割合を教えることになる特許は通常は取らないのです。
―― 高品質で環境にやさしい材料をどのように顧客にアピールしていますか。
松藤 そのために、品質マネジメントシステムに関する国際規格であるISO9001の認証を2005年に取得しています。この材料はトレーサビリティをもたせるように、いつ仕入れた材料がどこでどのくらい利用されているのかまで、すべて分かるようにしています。材料に関しては10年間の保証をしています。なお、保険に入った場合は、施工の成果については10年間の保証としています。