連載 物流の読解術 第38回:サプライチェーンにおける物流施設の立地場所 -物流施設の配置計画を考える(2)-

2026年05月21日/コラム

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kusesensei202605 - 連載 物流の読解術 第38回:サプライチェーンにおける物流施設の立地場所 -物流施設の配置計画を考える(2)-

物流施設の立地場所の重要性

経済のグローバル化が進むことで、生産施設(工場)が海外にも展開されるようになると、物流施設の立地場所も生産地や消費地を含め、国内外で多様になった。

このため、物流施設の立地場所も、生産地から消費地までのサプライチェーンを見渡しながら考えることになる。

企業の海外進出と撤退の要因

企業の物流施設の立地場所について、ここでは、主に4つの要因(市場、コスト、インフラ、リスク)から考えてみる(表1参照)。1)

市場要因では、当該国の経済発展にともない市場(需要量、消費者・購入企業など)が大きくなれば進出し、経済が衰退して市場が小さくなれば撤退することになる。

コスト要因では、国内よりも海外の生産コストが安ければ海外進出を考えるが、このとき物流コスト(輸送コスト、保管コストなど)も同時に考える必要がある。なぜなら、いくら生産コストが安くても、物流コストが高くなれば、進出の意味が薄れるからである。

インフラ要因では、効率的な生産と物流を維持するために、進出先での整備された港湾や道路などは必須である。また、生産や物流に関する現地の技術水準も、品質の維持にとって重要である。さらには、輸出入手続きをはじめ関連法制度が整備されていなければ、混乱する可能性がある。

リスク要因では、政治的な安定性や通商摩擦、経済的な安全保障や金融・為替リスク、社会的な意味での労働争議や国民感情も重要である。リスクが少ないほど進出しやすく、逆にリスクが高いほど撤退を考えることになる。

国内外での物流施設の立地の検討要因

国内外における物流施設の立地場所の選定にあたっても、上記の4つの要因を参考にすることができるが、特に3つの要因(市場、インフラ、リスク要因)をクリアすることが前提となる。

すなわち、市場要因では、物流施設を配置しようとしている地域での物流の需要量や消費者の指向性などを検討する。インフラ要因では、道路整備状況や労働者確保の可能性などを検討する。リスク要因では、政治的な緊張や地震や洪水などの自然災害などを検討する。

そして、これらの3つの要因をクリアできた物流施設の候補場所のなかから、コスト要因を検討することになる。

<表1 物流施設の立地場所を決める4つの要因>
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輸送コストと物流施設の立地場所

コスト要因には、先述したように主に3つのコスト(生産コスト、輸送コスト、保管コスト)がある。これらのコストについては、業務内容(業種、業態、扱う商品の特性など)が大きく影響する。

生産コストは、人件費の高低、材料の入手の難易度、生産品の価格の高低などによって生産施設の位置が変化する。これにともない物流施設の立地場所も、生産地や消費地を含め検討することになる。

輸送コストは、生産地から消費地までの距離が長くなるほど高くなる。このとき、高価で購入頻度の少ない製品の物流施設は、消費地までの距離が長くなって輸送コストが高くてもよい。しかし、日用品や食料品などの物流施設は、消費地に近く輸送コストも低いことが求められる。

保管コストは、原材料保管・半製品保管・製品保管などによって変化する。このとき、原材料や半製品の保管は、注文を受けてから製品を生産する受注生産になる。製品の保管は、注文を待たずに販売量を想定して生産する見込生産になる。たとえば、生産量が少なく高価な医療用機器であれば、部品や半製品を保管しておき、受注してからの生産(受注生産)が多い。コンビニで販売するサンドイッチは販売量を想定しての生産(見込生産)であり、店舗に配送されたとき売り切れも売れ残りも起きる。2)

コスト要因にもとづく物流施設の立地場所

以上の3つのコストのうち、生産コストと保管コストは、製品(高価格製品、日用品・食料品など)や業種業態(受注生産型、見込生産型など)によって、物流施設の立地場所についても、一般的な傾向が明らかになる。

そこで今回(第38回)の補論では、生産コストと保管コストは製品や業種業態ごとに大きな変化がないと仮定して、輸送コストに限定して物流施設の立地場所の特徴を考えることにする。

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【補論】:数字とグラフで読み解く「物流の課題」
(その20) 物流施設の立地特性

中央大学経済学部教授 小杉のぶ子​

物流施設の立地特性に関する仮定

物流施設の立地場所を考えるために、以下のように仮定する。

1) 生産地から物流施設を経由して消費地に輸送する場合について考える。

2) 物流施設の立地を決定する4つの要因のうち、コスト要因だけを考える。つまり、市場要因は想定済みであり、インフラは同じように整備されており、リスクの差はないとする。

3) コスト要因のうち、輸送コストのみを取り上げて分析する。すなわち、輸送コスト以外の生産コスト(見込生産、受注生産)、保管コスト(原材料在庫・半製品在庫・製品在庫)、物流施設のコスト(賃貸ないし建設コスト、運営コスト)は、立地場所にかかわらず等しいと仮定する。

4) 輸送コストについては、物流施設に入庫するときの輸送コスト(入庫輸送コスト)と、物流施設から出庫するときの輸送コスト(出庫輸送コスト)を考える。総輸送コストは、2つのコスト(入庫輸送コストと出庫輸送コスト)の合計とする。

5) 輸送コストについては、自社が入庫と出庫の両方のコストを負担する場合と、出庫のコストのみを負担する場合を考える。前者は、メーカーが生産した製品を物流施設に輸送して保管しておき、注文があると物流施設から顧客に届けるような事例である。後者は、卸小売業がメーカーに製品を発注し物流施設に届けてもらい、注文に応じて顧客に届けるような事例である。

6) いずれの場合も、物流施設の立地場所は、自らが負担する輸送コストが最小となる場所を選ぶものとする。

入庫輸送コストと出庫輸送コストの関係

物流施設の立地場所を考えるために、グラフを用いることにする。ここでは簡単のため、輸送コストは直線で表されるとする。横軸に生産地から物流施設までの距離をとり、縦軸に輸送コストをとると、入庫輸送コストと出庫輸送コストは概念的に図1のように示すことができる。

入庫輸送コストは、生産地に近いほど(消費地から遠いほど)低く、生産地から遠ざかるほど(消費地に近くなるほど)高くなる。逆に、出庫輸送コストは、生産地に近いほど(消費地から遠いほど)高く、生産地から遠ざかるほど(消費地に近いほど)低くなる。2)

これを数式で示すと、以下となる。

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<図1 入庫輸送コストと出庫輸送コストによる物流施設の立地>
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総輸送コストによる物流施設の立地

最初に、物流施設の立地の検討において、自社が入庫輸送コストと出庫輸送コストの両方を負担する場合を考える。このとき、総輸送コストは、入庫輸送コストと出庫輸送コストの合計とする。

輸送距離に対する輸送コストの変化量が入庫時と出庫時で異なるので、物流施設の典型的な立地場所は、生産地立地型と消費地立地型に分けることができる。

「多点入庫・1点出庫」の場合の物流施設の立地

ここでは、生産地の多くの地点から物流施設に入庫し(多点入庫)、物流施設から1か所に出庫する(1点出庫)場合を考える。一般に、物流施設が生産地から離れて消費地に近づくほど、入庫輸送コストは大きくなり、出庫輸送コストは小さくなる。ただし、多点入庫・1点出庫の場合は、入庫輸送コストの増加の割合が出庫輸送コストの減少の割合を上回る。
このことは、先に示した式1
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において、
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が成り立ち、式1で示される直線の傾きが正となることを意味する。

この結果、生産地に近いほど総輸送コストが低くなるので、生産地立地型になる(図2参照)。

一例として、生産地で多くの農家から農産物を小型トラックなどで物流施設に集荷し、物流施設から遠距離の消費地に大型トラックなどで出荷するときの、物流施設の立地場所を考えてみる。このとき、入庫は農家から物流施設への輸送であり、出庫は物流施設から大都市の消費地への輸送である。もしも、物流施設を消費地の近くに設けると、多くの小型トラックで物流施設に届けるために入庫輸送コストが高くなってしまう。このため、物流施設は生産地立地型になる。

<図2 「多点入庫・1点出庫」の場合の物流施設の立地>
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「1点入庫・多点出庫」の場合の物流施設の立地

これとは逆に、生産地の1か所から物流施設に入庫し(1点入庫)、物流施設から多くの地点に出庫する(多点出庫)場合を考える。一般に、物流施設が生産地から離れて消費地に近づくほど、入庫輸送コストは大きくなり、出庫輸送コストは小さくなる。ただし、1点入庫・多点出庫の場合は、入庫輸送コストの増加の割合が出庫輸送コストの減少の割合を下回る。

このことは、先に示した式1
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において、
kusesensei 2026 05 07 - 連載 物流の読解術 第38回:サプライチェーンにおける物流施設の立地場所 -物流施設の配置計画を考える(2)-
が成り立ち、式1で示される直線の傾きが負となることを意味する。

この結果、消費地に近いほど総輸送コストが低くなるので、消費地立地型になる(図3参照)。

一例として、農産物を生産地から大型トラックなどで遠距離の物流施設に輸送し、物流施設から消費地内の届け先に小型トラックなどで出荷するときの、物流施設の立地場所を考えてみる。このとき、入庫は生産地から物流施設への輸送であり、出庫は物流施設から大都市の消費地内の複数の届け先への輸送である。もしも、物流施設を生産地の近くに設けると、多くの小型トラックで消費地の複数の届け先に届けるために出庫輸送コストが高くなってしまう。このため、物流施設は消費地立地型になる。

<図3 「1点入庫・多点出庫」の場合の物流施設の立地>
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出庫輸送コストのみ負担する場合の物流施設の立地

最後に、自社が物流施設の出庫輸送コストのみを負担する場合の立地場所について考える。

たとえば、卸小売業などがメーカーから商品を調達する場合には、物流施設に納品するための輸送コスト(入庫輸送コスト)は、メーカー負担となることが多い。

このように入庫輸送コストを負担しない場合には、輸送コストのうち出庫輸送コストのみを考慮することになる。このため、物流施設の立地場所も消費地に近づくことになる(図4参照)。

<図4 出庫輸送コストのみ負担する場合の物流施設の立地>
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参考文献

1) 李志明・苦瀬博仁:ロジスティクスの視点からみた日本企業の海外進出と撤退の要因、日本物流学会論文集第13号pp51-58、日本物流学会、平成17年(2005年)5月
2) 苦瀬博仁:付加価値創造のロジスティクス、pp129-160、税務経理協会、平成11年(1999年)3月

連載 物流の読解術 第37回:物流施設の種類と配置計画の課題 -物流施設の配置計画を考える(1)-

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