CLO特集/対談 CLO選任から仕組み化へのヒント【前編】誰を選ぶか

2026年06月01日/物流最前線

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物流危機への対応として改正物流効率化法(物効法)が施行され、一定規模以上の企業には「物流統括管理者」の選任が求められている。これに伴い業界では「CLO(Chief Logistics Officer)」という言葉も急速に浸透しているが、現場では「物流統括管理者とCLOは同じなのか」「自社で誰を選べばいいのか」といった戸惑いも少なくない。今回、JPIC(フィジカルインターネットセンター)でCLO協議会を組織する森隆行理事長(流通科学大学名誉教授)と、物流専門メディアでの発信やコンサルティング活動を通じて業界改革を提言してきたエルテックラボの菊田一郎氏に、CLOの本質や人選、企業価値向上につながるサプライチェーン改革への方向性などを聞いた。実施:5月15日 於:LNEWS編集部

CLOとは何者か――
「物流責任者」ではなく経営改革の司令塔

―― 改めてCLOとは何を指すのか。その本質をどう見ていますか。

菊田  私は森理事長のJPIC(フィジカルインターネットセンター)が提示されたCLOの役割を、世界に通用する定義として高く評価しています。それが示すCLOの役割は、改正物流法が定める「物流統括管理者」の役割とは明らかに異なる。なのに両者が混同されている現状に危機感を抱いています。

  私も同感です。いま物流業界では「CLO」という言葉だけが先行していますが、本来はもっと経営そのものに近い概念として理解する必要があります。

菊田  それぞれの役割を図で整理してみたのですが、JPICでは、CLOは単なる物流責任者ではなく、サプライチェーン全体を見渡し、さらに社会課題まで視野に入れている。つまり、CSCO(Chief Supply Chain Officer)的な役割まで含んだ幅広い役割を定義しておられますが、私はまさにわが意を得たり、と大賛成しています。

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出典:エルテックラボ

菊田  一番のポイントは、CLOの役割はオペレーション効率化だけでなく、社内外と連携するサプライチェーンの全体最適にわたっていること。JPICの定義には当然入っていますが、国が定める物流統括管理者の業務内容に後者は入っておらず、これではCLOとは言えないと、私は2年前から言い続けてきました。

法律では物流統括管理者の役割を、戦略(サプライチェーン)レイヤーにおける「調達先や納品先との連携・調整」まで広げたものの、「社会課題」レイヤーの役割は記載はされませんでした。物流統括管理者の主任務はあくまでも、現場の三大義務(1.積載効率の向上、2.荷待ち時間の短縮、3.荷役等時間の短縮)であり、その範疇はCLOやCSCOより狭い。

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「物流統括管理者=CLO」ではない、と菊田氏

どちらが良い・悪いの問題ではなく、物流供給力の確保という喫緊課題の解決に集中するのが物効法の使命だから、それはそれでいいんです。ただ両者を混同してはいけない。サプライチェーンや社会課題の重要観点を軽視することになるからです。

  その通りです。CLOというのは、単に企業内の物流改善を行う人ではありません。経営そのものにコミットする存在です。だからこそ、企業の利益だけではなく、社会的責任も含めて考えなければならない。

今回の法改正に対しては、「法律でここまでやるのは踏み込み過ぎではないか」という声もありました。しかし、日本企業は、ここまでやらなければなかなか変われない。私は、今回の制度改革は、日本の物流を根本から変える大きな転換点になる可能性があると思っています。

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法改正は大きな転換点になる、と森氏

――  一方、現場では「物流統括管理者=CLO」と認識している企業も少なくないようです。

菊田  上記の通りで、物流統括管理者とCLOの役割は、重なる部分はありますが、イコールではありません。物流統括管理者は、あくまでも物効法に基づき、中長期計画の策定、報告、現場オペレーションの改善などを担う存在です。一方で、CLOはサプライチェーン戦略や社会課題まで含めて企業変革を担う存在です。

――  つまり、物流統括管理者の役割はCLOの一部ということですか。

菊田  そうです。それを区別した上で、「じゃあ物流統括管理者を選任しよう」「うちは頑張ってCLOを目指そう」と企業がそれぞれ判断すればいいのです。

政府の「物流統括管理者(CLO)」という記載が誤解を呼んでいるかも知れません。法的に義務化されているのはあくまでも「物流統括管理者」の選任です。CLOの設置は「期待」されているものの、判断は各企業に委ねられている。

誤解のないよう補足しますと、法が定める物流統括管理者とCLOの役割は違うことを、国も本年2月の文書ではっきり認めています(下図参照)。

  JPICが掲げるCLO像は「理想的だがハードルが高い」という意見もずいぶんあります。ただ、私たちは物流統括管理者には“より広い役割”が期待されているということをずっと説明しています。つまり、法対応だけで終わるのではなく、それを起点に企業改革へ進んでほしいということです。

菊田  本当にそうですね。目指すべき「ムーンショット」として理想を掲げることに、私も大賛成です。

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物流統括管理者の法令上の責務と期待される責任(「物流統括管理者(CLO)のあるべき姿に関するワークショップ」提言より引用)

従来の物流部長との違い
「全体」最適の視点が必要

――  物流統括管理者やCLOは、役員クラスからの選任が求められています。従来の物流部長との違いについてはどう考えますか。

  いろいろなメーカーさんと話していて感じるのですが、多くの企業の物流部長は、販売物流しか見ていない。つまり、「川下」だけなんです。調達物流について聞くと、「それは購買部門の仕事です」となる。しかし、それでは本当の意味でサプライチェーン全体を見ているとは言えません。

中堅以上の日本企業の多くは「SCMをやっています」と言いますが、実際にはサプライチェーン全体を統括している人は、これまでほぼ存在しなかったと思います。だからこそ、これからのCLOには、調達から販売まで全体を見る視点が必要になります。

菊田  本当にその通りです。私は40年以上、物流分野の取材を続けてきましたが、大半の荷主企業が「調達物流は見ていない」という状況でした。しかし、調達側を見える化すると、販売物流との重複や非効率が大量に見つかることがある。販売物流だけを改善していても企業全体の物流は最適化できないということです。

  サプライチェーン全体を可視化することで、物流だけではなく企業経営そのものが効率化します。しかも今後は、単なる効率化だけでは済みません。地政学リスク、自然災害、人権問題、エネルギー問題など、企業を取り巻くリスクは急速に複雑化しています。

菊田  そうですね。調達先、販売先、そして社会とも連携する、まさにサプライチェーン最適化に進むというのが、目指すべき方向でしょう。

  最近、ヨーロッパの研究仲間と話した時に、「3年後の日本を見てくれ」と言いました。今回の法改正が動き出して3年、3200社にCLOが誕生し、大手企業がサプライチェーンを効率化したら日本経済そのものが、ものすごく活性化するよと。大風呂敷を広げました(笑)

菊田  さすがの確信ですね! 私もその実現を心から期待しています。

「当たり前」を変える使命
企業は誰を選ぶべきか――

―― 企業にとって、物流統括管理者またはCLOに「誰を選任するのか」は、重要なテーマですね。

  実際、企業から最も多く聞かれるのが「結局、誰を選べばいいのか」という相談です。ケースバイケースですが、私は必ずしも物流部長が最適とは考えていません。もちろん優秀な物流責任者もいます。しかし、長年その業界にいると、商習慣や既存前提を「当たり前」として受け入れてしまう。

改革というのは、その“当たり前”を疑うことから始まります。だから、営業、生産、経営企画など、異なる分野から来た人のほうが大胆な改革を進められるケースもあります。実際、先進企業では物流未経験者がCLO的役割を担い、大きな改革を実現している例があります。重要なのは物流知識そのものよりも、「全体最適で考えられるか」「部門横断で動けるか」です。

菊田  CLOは、生産部門、営業部門、購買部門など、さまざまな部門を横断して動かさなければいけません。だから、社内で影響力を持っている人であることは重要です。ただし、それだけでは足りません。

私は、CLOに必要なのは最終的には「使命感」だと思っています。物流改革とは現状否定ですから、必ず抵抗が起きます。実際、リードタイム延長に挑んだ某先進企業の物流リーダーは激しい批判を受け、精神的にギリギリまで追い込まれたそうです。それでも「自分が変えなければならない」という思いを貫く、胆力を持つ人でなければ、改革は続けられません。

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CLOについて語り合う菊田氏(左)と森氏

【後編】CLOに必要な「人間力」、物流事業者に求められる「提案力」へ続く。CLOに求められる人物像や、改革の方向性をさらに深堀りします。

物流連/インド市場テーマに講演会、海外物流戦略WTに58名参加

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