CLO特集/対談【後編】CLO選任後のアクション、物流事業者の対応は―

2026年06月03日/物流最前線

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CLO特集 対談企画「CLO時代、選任から仕組み化へのヒント」。前編では、「CLOとは何か」「物流部長との境界線」「人選」について議論し、自社の物流・サプライチェーン改革の現在地や方向性をふまえ、誰が何を担うのか整理しました。【後編】では、「人物像」「選任後のアクション」「物流事業者に求められること」について、さらに森氏、菊田氏が持論を展開します。

CLOに求められるのは-
知識より「人間力」

――  CLOに求められる資質や人物像とは、どのようなものでしょうか。

菊田  多くの企業が誤解しているのは、「知識・知見があればCLOになれる」と考えている点です。

  そこは私も強く感じています。

菊田 もちろん多様な知見は必要です。デジタル、財務、サプライチェーン、ビジネスモデル、法制度――幅広い理解が求められます。しかし、私はそれ以上に「人間力」が重要だと思っています。例えば、倫理観、責任感、利他の精神。部下や取引先、他部門から「あの人が言うなら協力しよう」と信頼してもらえる人間性こそが重要ではないかと。

私見では、その時問われるのはリベラルアーツ、幅広い教養力ではないかと思います。海外の経営者と話すと、歴史、文化、芸術、哲学などへの理解が非常に深い。一方、日本は専門知識には強いのですが、それ以外の教養部分に弱いケースが多い。

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CLOには人間性や教養が必要、と菊田氏

  私も同感です。社外との連携や国際的な対話を進めるには、人間的な厚みが必要です。また、CLOは社内外をつなぐ役割。だからこそ、「また一緒に仕事したい」と思われるような人間的魅力が必要になる。

一方で、「そんな人材は社内にいない」という声も非常に多い。当然です。今、日本に完成されたCLO人材が大量にいるわけではありません。だから、これから育てていくしかない。重要なのは、一人で全部できる必要はないということ。むしろ、チームで取り組むことが大切です。

――  社内でチームを作るとしたら、どのような体制が望ましいですか。

  物流だけではなく、生産、営業、経理、IT、人事など、多様な部門からメンバーを集める。その中でCLOが方向性を示し、全体をまとめていく。また、私は若い人を入れるべきだと思っています。特にデジタル分野では、若い世代の感覚は圧倒的です。AIやデータ活用への発想も全く違うので、年齢、性別、国籍も含めたダイバーシティが重要になります。

菊田  その通りですね。これからは「問いを立てられる人」がカギを握る時代になります。知識はAIがいくらでも集めてくれる。だからこそ、「何を問うか」が価値になる。従来型の経験主義だけではなく、新しい視点を持った若手や異分野人材を入れることが重要です。

  逆に言えば、任命する側はCLO候補となる人材を見つけると同時に、その人が動きやすいよう、予算や組織改革、あるいは権限を与えるなどの環境を整えてあげることも大事ですね。

選任されたら何をする?
まずは「可視化」から

――  物流統括管理者またはCLOになったら、何から始めるべきでしょうか。

  三大義務からスタートし、中長期計画を策定するにはやはり、自社の状況を調べる必要がある。まずは「可視化」しましょう。自社のサプライチェーン全体がどうなっているかを把握しなければ、改革は始まりません。調達から販売まで、どこに無駄があり、どこにリスクがあるのか。それをデータとして見えるようにする。

菊田  デジタル可視化した上で、モニタリングが必要ですね。月次以上のレベルで状況を追い、改善を回し続ける必要がある。「見えないものは改善できない」からです。

  特に重要なのは、「調達物流」を含めて把握し、統一的にみられる仕組みを作るのが大前提だと思います。

菊田 東日本大震災の時、トヨタでさえ深いサプライヤー階層を把握できていなかったことで、ある部品の供給が途絶え、工場がストップしてしまった。その反省から10次サプライヤーまで全部調達を見える化した、という話があります。

  サプライチェーンの概念も、変わってきたと思うんです。今は安全保障、リスク管理が重要です。自然災害や紛争、人権問題など「有事」によるサプライチェーン寸断リスクが常態化している。だから、単なるコスト削減ではなく、「止まらないサプライチェーン」を構築することが重要です。

菊田  BCPであり、代替ルートやプランBが必要ですね。特に今は石油関連と重要鉱物のサプライチェーンをどうするのか、世界的に大問題になっています。また、SDGsの目標達成期限である2030年に向けて、社会課題への対応・深化も不可欠です。脱炭素、人権対応、地域社会との共生――。

  世界の大手企業は、すでに2050年より前倒しでカーボンニュートラルを進めています。日本企業も、それに合わせなければグローバル競争で生き残れなくなる。つまり、CLOは単なる物流改革ではなく、企業の未来戦略そのものを担う存在となりますね。

改革へのラストチャンス
物流事業者は「提案力」を

――  今回の法改正を契機に今後、業界はどう変わっていくか、期待を聞かせてください。

  私は、今回が物流改革の最後の大きなチャンスだと思っています。法律まで変えて、ここまで社会全体で動こうとしている。だからこそ、物流部門で働く人たちの社会的ステータス向上につなげたい。

海外では、CLO経験者が経営トップになるケースも珍しくありません。物流は、企業経営そのものを左右する重要機能だからです。日本でも、「物流で働きたい」「CLOを目指したい」と思える社会にしていかなければならない。

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今回が「物流改革のラストチャンス」と森氏

菊田  本当に「憧れの職業」にしたいですよね。そもそも欧米のサプライチェーンマネジメントの原点は、日本のトヨタ生産方式を中心とするジャスト・イン・タイムの仕組みに学んだこと。彼らはそれを経営手法として普遍化・標準化した。対して日本ではこれまで、企業の個別対応に委ねてきました。

  そうです。産業界と大学との関係で言えば、日本にはノーベル賞の経済学者がいない。米国はそこにも投資していて、その差も大きい。私はその関係性を変える可能性を持つのがフィジカルインターネット(PI)だと思っています。

菊田  なるほど。フィジカルインターネットを社会実装するためにも、CLOは非常に重要ですね。JPICでは、今後CLO協議会でどんな活動を展開していくのですか。

  JPICでは、CLOや物流統括管理者の交流会など今年度の計画を立てているところです。また、物流事業者側のリーダーを、ロジスティクスプロデューサー(LPD)として定義し、パートナーシップに近い関係性構築を目指しています。そういった仲間作りや情報交換の場を、年4回くらい設けたいと企画を進めています。

――  物流事業者側に求められることは。

  これから物流事業者側にも「提案力」が必要となると思います。よく聞かれるのは、「中堅のトラック会社に提案なんてできない」という言葉。そんなことはありません。実際の現場で問題点や改善点は必ずあるはず。会社の大小に関わらず、お客さんと一緒に考えて、提案していくというのは、やはり大事なんですよ。

菊田  おっしゃる通りです。荷主がCLO、あるいは物流統括管理者を設置することは、物流側にもチャンス。物流現場でしか分からないことはたくさんあり、それを物流のプロとして荷主に伝える際の、窓口が明確になるからです。

  これからコスト管理もさらに厳しくなる。1割のコスト削減なら精神論でなんとか頑張れるかもしれませんが、3割、4割となると、もう仕組みを変えるしかない。

物流は社会のインフラです。そして今、物流改革は社会改革そのものになりつつある。

だからこそ、企業は法対応だけで終わらせてはいけない。「物流統括管理者を置いたから終わり」ではなく、「自社はどんなCLOを目指すのか」を考える。その積み重ねが、日本の物流と産業競争力を変えていくのだと思います。

(聞き手・執筆 吉坂照美)

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■プロフィール
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森隆行(もり・たかゆき)
フィジカルインターネットセンター理事長、流通科学大学名誉教授。1952年徳島県生まれ。大阪市立大学商学部卒業。1975年に大阪商船三井船舶に入社し、大阪支店輸出二課長、広報課長、営業調査室室長代理を務める。AMT freight GmbH(Deutschland)社長、商船三井営業調査室主任研究員、東京海洋大学海洋工学部海事システム工学科講師(兼務)、青山学院大学経済学部非常勤講師(兼務)、流通科学大学商学部教授を経て現在に至る。タイ王国タマサート大学客員教授、神戸大学大学院海事科学研究科国際海事研究センター客員教授、タイ王国マエファルーン大学特別講師なども務める。著書に『新訂 外航海運概論(改訂版)』(成山堂書店)、『物流の視点からみたASEAN市場』(カナリアコミュニケーションズ)、『現代物流の基礎 第3版』(同文舘出版)、『市民の港 大阪港一五〇年の歩み』『水先案内人』(晃洋書房)、『神戸港昭和の記憶』(神戸新聞総合出版)、『環境と港湾』(海文堂出版)、『CLOの仕事』(同文館出版)、『フィジカルインターネット入門』(海文堂出版)などがある。

菊田一郎(きくた・いちろう)
エルテックラボ 代表/物流ジャーナリスト。1982年名古屋大学経済学部卒業。物流専門出版社に37年勤務し月刊誌編集長、代表取締役社長、関連団体理事等を兼務歴任。2020年6月に独立し現職。物流、サプライチェーン・ロジスティクス分野のデジタル化・自動化、SDGs/ESG対応等のテーマにフォーカスした著述、取材、講演、アドバイザリー業務等を展開中。2017年6月より大田花き社外取締役、2020年6月より日本海事新聞社顧問(20年6月~23年5月)、同年後期より流通経済大学非常勤講師。21年1月よりハコベル顧問。26年4月よりメディアビズ アドバイザー。著書に『先進事例に学ぶ ロジスティクスが会社を変える』(白桃書房、共著)、『ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」』(中央職業能力開発協会、11年・17年改訂版、共著)など。

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