壁装材や床材、カーテンなどのファブリックを中心に取り扱うインテリア企業、サンゲツ(本社:愛知県名古屋市)は、「デリバリーも品質のうち」という創業当時からの経営方針により、ロジスティクス部門を重要な部署として位置付けてきた。2016年4月から既に執行役員がロジスティクス部門に在籍し、物流を一元管理する体制を構築しており、ことし4月1日付けで内藤孝二執行役員がロジスティクス部門ゼネラルマネジャーに就任した。取り組み方針や課題、今後の抱負を聞いた。取材:4月21日
<全国8拠点にショールームを展開 写真は品川ショールーム(東京都)>

―― これまでのご経歴と、ご自身の強みや大切にしている考え方を教えてください。
内藤 新卒でサンゲツへ入社し34年目になります。6年間の関西エリアでの営業を経て、21年間にわたり床材の調達と商品開発を担当したのち、2019年から6年間床材事業部長を務め、2026年4月に現職に就任しました。
私の強みは、仕事もプライベートも納得いくまで掘り下げる探求心・好奇心です。
大切にしている考え方は、「利は元にあり」という教えです。これは商売の格言ですが、創業家の日比 賢昭元社長から繰り返し説かれた言葉で、お客さま(販売先)と同じように仕入先(協力事業者・パートナー)を大切にしなさいという意味です。この「事業の持続性構築」につながる考え方をロジスティクスという新フィールドでも踏襲してまいります。
―― 会社からのミッションと、ご自身の役割を教えてください。
内藤 ロジスティクス部門は、1日約6万点の商品と約4万点のサンプルを出荷する当社のビジネスモデルの根幹機能であり、物流を通じた会社・業界・社会への貢献は大きなミッションと捉えています。
私自身は執行役員として全社的な課題に一つひとつ向き合い成長をけん引する役割に加え、ロジスティクス部門のゼネラルマネージャーおよびCLO(物流統括管理者)に資する立場として、サンゲツグループのサプライチェーン全体を経営視点で統括する役割を担っています。コスト・在庫・サービス品質・環境負荷・リスクを最適化し、企業としての提供価値と持続可能性を共に高めることが私の責務と認識しています。
―― 現在の物流・サプライチェーンにおける課題をどのように捉えていますか。
内藤 当社の扱う壁紙や床材などのインテリア商材は、重量物であることに加え異形物が多く、積載効率の向上や荷役作業の機械化が難しいという特性があります。さらに物流業界全体での深刻な人手不足や高齢化が進行する中、これまでの配送網や在庫拠点を維持していくこと自体が大きな課題と捉えています。
事業を継続し、お客さまへ商品を安定的に供給し続けるためには、荷主企業の立場としても変革・改革を加速させていく必要があります。
―― 物流効率化法などの制度対応を含め、今後の業界変化をどのように見ていますか。
内藤 法制度の改正も契機となり、今後、荷主企業に求められる社会的責任はますます大きくなることが予想されます。その責任を果たすためには、単なる物流コストの削減に留まらず、業界構造やビジネスモデルそのものの変革が必要です。その実現のために、ロジスティクス部門が経営と連動し、会社や業界に果たす役割は非常に大きいと考えています。
―― 物流における主な課題(荷待ち・荷役・リードタイムなど)をどのように認識していますか。
内藤 当社が関わる内装工事は、建設業界の多層的な構造から工期短縮の影響を受けやすく、調達から配送に至るまでのリードタイムの維持・向上は不可欠です。その中で、荷待ち・荷役時間の削減は、喫緊の課題と捉えています。また、当社は約1万2000点もの多様な商品を扱っており、全国のロジスティクスセンターでの庫内作業の効率化も課題です。
これらを解決するため、まずは実態把握のための可視化(DX化)を進め、現場の定量的なデータに基づいた改善サイクルを回すことに注力しています。
―― これまでの主な取り組みと、その成果や今後の課題を教えてください。
内藤 調達物流では、一部商品において独自発案の回転式パレット「Vパレ」を用いたユニットロードシステムを導入しました。これにより、従来ドライバーの手で行っていたバラ積み・バラ降ろし(計約240分)を、フォークリフトでのパレット積み降ろし(計約30分)へと劇的に短縮し、ドライバーの労働環境改善に直結しています。同時に、システム導入を行うことで現況の可視化および課題点の抽出を行っています。
<ユニットロードシステムを導入 経産省「物流効率化に向けた先進的な実証事業」補助事業者に採択>

販売物流では、一部地域において輸配送管理システム(TMS)を導入し最適な配送ルートの自動化を図るほか、自社個別配送「サービスクルー便」の拡充を進めています。今後は、これらの仕組みを全国の拠点へ展開することを目指します。
―― どのような組織体制を進めていくお考えですか。
内藤 ロジスティクス部門内に、課題解決に向けた企画・推進を担う「企画開発室」と、全国の各ロジスティクスセンターを含めた統括管理を担う「ロジスティクスセンター統括室」を設け、業務の役割を明確化しました。これにより、部門としてのPDCAサイクルの循環を迅速化・最適化する体制としています。多様な人材が生き生きと働けるよう、専門人材の育成にも注力し、「現場力」と「経営視点」を併せ持つ強い組織づくりを進めていきます。
―― 社内の他部門や現場との連携はどう図っていきますか。
内藤 従来のロジスティクス部門は、営業部門や商品開発部門が主体となる戦略を、後方から支え、いかに確実に実行するかという役割が中心でした。しかし今後は、ロジスティクス部門からバリューチェーン全体を見据えた積極的な発信や提案を行うことで他部門と連携を深め、全社最適の視点で事業価値の最大化を目指します。
―― 中長期的に目指す物流の姿へ、可視化やDXによる社内外の連携強化をどのように進めていきますか。
内藤 まずはシステム・AIを用いてロジスティクスの「可視化」を進め、拠点ごとの在庫量や作業時間などの課題を定量化します。その定量化された情報を共通言語として活用し、社内の他部門はもちろん、仕入先やサプライチェーン上のステークホルダーとの連携を進めます。そのほか、全社的に社員主体のDXを推進している中でロジスティクス部門では、配送順の確認や写真報告を可能にする内製アプリを活用しています。配送情報のデジタル化により、情報共有の迅速化やルート最適化を実現しました。
―― 物流会社やシステムベンダー、倉庫事業者に今後求めたい技術や仕組みなどを教えてください。
内藤 ピンポイントの技術・仕組みだけではなく、サプライチェーン全体を見通した上で、データの連動性が高く有効な技術や仕組みの構築が必須です。単なる「部分最適」の追求に留まらず、業界全体の効率化やデータ連携といった「全体最適」を前提とした具体的解決策の提案を期待しています。
―― 他社の物流統括管理者またはCLOへ、メッセージをお願いします。
内藤 これまで、日本の高度な物流サービスは現場の皆さまの多大な努力と労働集約的な構造によって支えられてきました。しかし、この構造を今後も維持していくことには限界があります。
当社も、現場の課題抽出に向けた可視化、そして「Vパレ」の導入といった自動化・省力化へと大きく舵を切っています。社会インフラである物流を次世代へ引き継ぎ、物流業界が未来の世代にとって働きがいのある魅力的な業界となるよう、知恵を出し合い、一緒に業界全体を盛り上げていきましょう。
取材・執筆 吉坂照美
■プロフィール
サンゲツ 執行役員 ロジスティクス部門ゼネラルマネージャー
内藤 孝二(ないとう・こうじ)
入社後は6年間営業を経験。その後、床材の調達や商品開発に21年間携わり、2019年に床材事業部長に就任。2026年4月より現職を務める。
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