物流施設の施設数と考慮すべきコスト
前回(第38回)では、物流施設の立地場所が輸送コスト(=入庫輸送コスト+出庫輸送コスト)で決まると仮定して、物流施設の立地について生産地立地型と消費地立地型で比較して考えてみた。
今回(第39回)は、「消費地立地型を想定し、消費地内の複数の店舗に配送する物流施設を何か所設けるべきか」という課題を考えることにする。
コストにもとづく物流施設の数の算出
物流施設の最適な数については、一般的に物流施設の建設と運営にかかるすべてのコスト(総コスト)が最小になる施設数が良いと考えられている。
たとえば、過去の研究例では、物流施設の数が増えるほど減少するコスト(リンクコスト:配送費用)と、数が増えるほど増加するコスト(ノードコスト:建設費用、在庫保有費用、入出庫費用)について、それぞれコストの変化を曲線で示している。このとき、総コスト(=リンクコスト+ノードコスト)は物流施設の数に対してU字型の曲線になり、総コストが最も小さくなる施設数を求めることができる(図1)。1)
なお、メーカーや卸小売業などを対象に実際のデータを用いた分析によると、リンクコストとノードコストが交差しない例や、業種や業態によって物流施設が1つの例もある。2)
今回(第39回)の補論では、物流施設の数と総コスト(=リンクコスト+ノードコスト)の関係を考えることにする。
物流施設の数についての考え方
消費地内の複数の店舗に商品を配送するとき、物流施設をいくつ設けるべきかを考える。物流施設の数は、業種、業態、品目、社会状況などで大きく変わるが、ここでは、以下のように考える。
1) 消費地立地型の物流施設について、複数の物流施設が必要であると考える。
2) 物流施設の最適な数を検討するにあたり、コストのみに着目する。
3) コストについては、リンクコスト(物流施設から配送先までの配送コスト)と、ノードコスト(物流施設の建設費用、在庫保管費用、入出庫費用)を考える。
4) 総コストは、リンクコストとノードコストの合計とする。
5) 物流施設数は、総コストが最も小さくなる数を選ぶものとする。
ここでは簡便のために、物流施設の数とコストの関係をあくまでも概念的に示している。
リンクコストの特徴
物流施設の数により、リンクコストとノードコストは変化する。
物流施設の数が多いほど、一つの物流施設が担当する配送区域が小さくなるので、配送時の走行距離や走行時間が短くなり、リンクコストは小さくなる。逆に、物流施設の数が少ないほど配送先への走行距離や走行時間は長くなるため、リンクコストは大きくなる。
リンクコストは、物流施設数が増えるとともに減少するがゼロになることはないので、この関係をグラフで表すと、単調に減少し、ある正の値に限りなく近づいていく曲線になる。
これは、家族4人がそれぞれの勤務先や通学先の近くに家を借りれば、4人が1つの住居から通勤通学するよりも、家族全体の移動時間の合計が短くなることと同じである。
ノードコストの特徴
物流施設の数が多いほど、初期費用(用地費、建設費、賃貸料、設備費など)と運営費用(設備稼働費、人件費、光熱費など)が高くなるため、ノードコストは大きくなる。逆に、物流施設の数が少ないほど、初期費用や運営費用は低くなるため、ノードコストは小さくなる。
このときノードコストは、物流施設数が増えるとともに増加するので、この関係をグラフで表すと、単調に増加する曲線になる。
これは、家族4人が一人ずつ個別に合計4つの住居を借りれば、4人が1つの住居で暮らすよりも、家族全体の住居費の合計が高くなることと同じである。
最適な物流施設数の求め方
最適な物流施設数は、上記の4)と5)より、総コスト(=リンクコスト+ノードコスト)が最も小さくなるときの施設数となる(図2参照)。
物流施設数が少なくなる例(集約化)
一般に物流施設数が多くなると、リンクコストが減少しノードコストが増加する。
ノードコストの増加量がリンクコストの減少量よりも大きい場合には、最適な物流施設数は少なくなる。これを物流施設の集約化ということもできる。
たとえば、物流施設数の増加にともない建設費や設備費が大きく増加するならば、全体のノードコストは大きく増加する。
一方、配送頻度が低い場合や交通渋滞が解消している場合は、物流施設数が少なくてもリンクコストはあまり高くならない。このため、物流施設数が増加しても全体のリンクコストは大きく変化しない(図3参照)。
物流施設数が多くなる例(分散化)
前述のとおり、物流施設数が多くなると、リンクコストが減少しノードコストが増加する。
リンクコストの減少量がノードコストの増加量よりも大きい場合には、最適な物流施設数は多くなる。これを物流施設の分散化ということもできる。
たとえば、配送頻度が高い場合や交通渋滞が激しい場合は、物流施設数が多くなると全体のリンクコストは大きく減少する。
一方、物流施設数が増加しても建設費や設備費があまり増加しないならば、全体のノードコストは大きく変化しない(図4参照)。
参考文献
1) 苦瀬博仁・長谷川雅行・矢野裕児監修:ロジスティクス管理3級、第4版、中央職業能力開発協会編、社会保険研究所、2024年10月
2) 苦瀬博仁・久保幹雄・二階堂亮・管智彦:配送コストと施設コストにもとづく物流施設の最適数と最適位置のモデル分析、日本物流学会論文集5号pp12-20、日本物流学会、平成8(1996)年12月
連載 物流の読解術 第38回:サプライチェーンにおける物流施設の立地場所 -物流施設の配置計画を考える(2)-





