公正取引委員会(公取委)は6月25日、2025年度の荷主と物流事業者との取引に関する調査結果に基づき、独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為を行った荷主779名に対して具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付したと発表した。
公取委では、荷主による物流事業者に対する優越的地位の乱用を効果的に規制する観点から、独禁法に基づき「特定荷主が物品の運送または保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」を指定(物流特殊指定)し、その順守状況や荷主と物流事業者との取引状況を把握するため、荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた調査を継続的に行っている。
2025年度は、荷主と物流事業者との物品の運送や保管に関する継続的な取引を対象に、荷主3万名、物流事業者4万名にアンケート調査を実施した。
調査の結果を踏まえ、独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為を行った荷主779名に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付するとともに、現下の労務費、原材料価格、エネルギーコストなどのコスト上昇分の取引価格への反映の必要性について協議をすることなく取引価格を据え置く行為等が疑われる事案に関して、荷主105名に対する立ち入り調査を実施した。
注意喚起文書を送付した荷主の上位の業種は、「建築材料、鉱物・金属材料等卸売業」「食料品製造業」「飲食料品卸売業」「協同組合」で、独禁法上の問題につながるおそれがある行為を行為類型別にみると、「不当な給付内容の変更およびやり直し」「代金の支払遅延」「買いたたき」の順に多かった。
独禁法上の問題につながるおそれのある主な事例は以下のとおり。
【不当な給付内容の変更、やり直し】
「荷主が、自社工場で荷物を引き渡す際に、製造工程の遅れにより、物流事業者との間で取り決めていた時刻までに出荷の準備が間に合わず、数時間の荷待ちをさせたものの、荷待ちによって物流事業者に生じる追加費用の算定方法をあらかじめ定めておらず、また、物流事業者からも追加費用を請求されなかったため、荷待ちにより物流事業者に生じた人件費等の追加費用を支払っていなかった(木材・木製品製造業)」。
「荷主が、繁忙期に自社倉庫で荷物を引き渡す際に、物流事業者との間で取り決めていた時刻までに出荷の準備が間に合わず、荷待ちをさせたものの、荷待ちにより生じる追加費用の算定方法をあらかじめ定めておらず、物流事業者からも追加費用を請求されなかったため、荷待ちにより物流事業者に生じた人件費等の追加費用を支払っていなかった(食料品製造業)」。
【代金の支払遅延】
「荷主が、物流事業者に支払う運賃について、自社の都合により、あらかじめ定めていた支払期日に支払わず、数か月に分けて支払った(金属製品製造業)」。
「荷主が、物流事業者に支払う運賃について、自社の営業所から本社事務センターへの手続が漏れていたことを理由に、あらかじめ定めていた支払期日を過ぎて支払った(建築材料、鉱物・金属材料等卸売業)」。
【買いたたき】
「荷主が、労務費等のコスト上昇局面にあることを認識していたことから、物流事業者から運賃引き上げの要請があれば協議に応じるつもりであったが、要請が無かったため、協議の場を設けることなく運賃を据え置いていた(プラスチック製品製造業)」。
「荷主が、前年度に物流事業者の要請に応じて運賃の引き上げを行い、その後も労務費等のコスト上昇局面にあることを認識しながら、直近の1年間に物流事業者からの運賃の引き上げ要請が無かったため、協議の場を設けることなく運賃を据え置いていた(建築材料、鉱物・金属材料等卸売業)」。
【不当な経済上の利益の提供要請】
「荷主が、物流事業者に対し、運賃に荷積み作業の対価が含まれていることを明示していないものの、運賃には荷積み作業の対価も含まれていると考え、実際に物流事業者が行った荷積み作業に対する費用を支払っていなかった(金属製品製造業)」。
「荷主が、物流事業者に対し、海外から調達した商品の自社の事業拠点までの運送業務を委託しているところ、運送業務に附帯する輸入通関業務について、税関への関税・消費税の納付を物流事業者に立て替えさせていた(繊維工業)」。
【代金の減額】
「荷主が、物流事業者に対し、安全協力費用という名目で毎月の運賃から一定率を減額して支払った(総合工事業)」。
「荷主が、物流事業者に対し、委託した運送業務に特段の問題がなかったのに、あらかじめ合意した運賃から数%割り引いた金額の請求書を発行させ、減額した金額のみを支払った(生産用機械器具製造業)」。
【割引困難な手形の交付】
「荷主が、物流事業者に対し、物流事業者が使用する車両について、自社が取り扱うリースを利用させた(機械器具卸売業)」。
「荷主が、運賃の支払いに当たり、物流事業者が希望していないにもかかわらず、自社の子会社が提供するファクタリングサービスを利用するよう求めた(窯業・土石製品製造業)」。
公取委/着荷主による荷役の無償提供要請など禁じる改正告示案に意見募集
