物流最前線/東京建物、本質を磨き「稼げる倉庫」へ進化するT-LOGI開発戦略

2026年07月01日/物流最前線

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明治時代に旧安田財閥の創始者である安田善次郎によって設立された東京建物。マンションやオフィスビル等での印象が強いが、2018年に物流施設開発に参入し「T-LOGI」ブランド50プロジェクト超を全国に展開している。「顧客と対話、検討を重ね、倉庫としての最適化を目指す」と川添常務執行役員が語るように、物流施設としての基本をより充実させることを開発の原点としている。これまでの実績と開発方針、今後の展開を伺った。 取材日:5月21日、於:東京建物本社

物流施設開発参入から8年
既に50プロジェクト超を開発

――  東京建物さんというと、ビルやマンション開発が中心というイメージが強いのですが。

川添  おっしゃる通り、都市開発やビル、「Brillia」等のマンション事業が一般的にはよく知られていると思います。もともと、都市を中心とした再開発ビルの賃貸業や分譲住宅を主に手掛けてきました。創業1896年から約130年間の歴史の中で、物流施設は2020年に竣工した第1号案件「T-LOGI久喜」から。現在では、オフィスビル、住宅、商業施設、ホテル、レジャー施設、駐車場、そして物流施設開発を手掛ける総合不動産会社となっています。

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東京建物 川添常務執行役員

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「T-LOGI久喜」が物流施設開発のスタート

――  2018年、物流施設開発に参入した理由は。

川添  当時、EC需要が急速に伸びており、先端物流施設開発のニーズの高まりや、顧客からの多品種小ロットに対応する物流施設のニーズもありました。第1号案件としては2020年の「T-LOGI久喜」がスタートですが、実際には数年前から物流施設開発の準備・検討は鋭意行っていました。

――  1棟目施工まで時間を要した要因は。

川添  物流施設は大味なように見えて、実に繊細なアセットです。「T-LOGI久喜」を手掛けてよくわかりました。柱の間隔はどれくらいか、ラックを入れるスペースはどのくらいとればよいか等、あらゆる想定が必要で、それらを顧客の要望に沿うように作り上げていかなければなりません。ビルやマンションとはまた違った難しさがあり、マルチテナント型であっても、顧客の要望に最大限応える施設づくりを徹底しようとしたためです。

――  これまでの物流施設開発はどのくらいの規模になりますか。

川添  東北から九州まで全国で、50プロジェクト超を展開してきました。海外でもタイに2物件、米国に1物件あります。参入のタイミングとして、コロナ禍の直前で、ここで一気にEC需要が加速的に急増し、物流が重要な社会インフラとして認識されたことも大きかったと思います。

――  体制強化へ2026年1月に大幅な組織変更を行われたとか。

川添  物流事業・ホテル事業・商業事業・ゴルフ場等のリゾート開発の4つを柱としたコマーシャル不動産事業本部が発足しました。土地を取得して開発、リーシングし、投資家に売却するというビジネスモデル、我々はこれを「資産回転型事業」と呼んでいますが、物流施設開発はコマーシャル不動産事業本部ロジスティクス事業部として、用地取得、事業推進、リーシング、管理、売却のチームが、一つの部門として活動しているのが特徴です。

――  売上げ的にはどうでしょうか。

川添  資産回転型事業全体の業績として、昨年の利益では、物流・ホテル・商業施設・オフィスビルの4アセットの投資家向け物件売却の合算値で326億円、今年は約600億円程度の利益と見積もっています。

「T-LOGI」に込めた想い
「半BTS型」でニーズ獲得

――  「T-LOGI」の特徴について具体的に伺いたいのですが、まずこの名称の由来は。

川添  T-LOGIのTはTRANSPORT(運ぶ)、TRUST(信頼)、TOKYO TATEMONO(東京建物)の頭文字を表しています。社内外から広く意見をいただき、物流部門だけではなく、社員全員からの公募も受付け、経営層とも相談して決めた名称です。

――  東京建物が物流施設に参入すると発表した当初、顧客の反応はいかがでしたか。

川添  「えっ、物流施設ですか?」といった驚きの声が大半でした(笑)。社員の間でも驚きをもって迎えられたようです。それまでは、オフィスや住宅が中心でしたから、当然の反応でしょうね。

――  物流施設開発のコンセプトは。

川添  「T-LOGI 4つの約束」として、顧客と対話を重ねること、利便性の高い立地を厳選、最適な施設を提供、次世代の環境を見据える、の4つを発表しています。

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T-LOGI ブランド開発コンセプト

1番目の「対話を重ねる」については、顧客がどのような施設を求めているのかを理解することが大前提です。何に困っているのか、どういうニーズがあるのか、これは対話でしか解決できません。

例えば立地に関しては、安ければいいではなく、顧客のビジネスとしてどこが最適なエリアなのかを協議・提案します。施設に関しては、先ほども申しましたが、繊細なアセットという観点から、徹底的に顧客の要望を掘り下げていきます。次世代の環境対策としては、太陽光発電や省電力設備等を積極的に採用し、環境配慮型物流施設(ZEB物流)の実現を目指しています。

――  土地取得での相対と入札の割合は。

川添  年によって違いますが、これまで培ってきた歴史から、相対での土地取得が過半数です。どうしても立地の良い場所をとなれば、入札に参加することも、もちろんあります。

――  マルチテナント型で最適な施設を顧客の要望に基づくと、限りなくBTS型に近づきますね。

川添  実際、話を進めるうちにBTS型になる場合もありますが、マルチテナント型の利点をなくさないように、できる限り顧客の要望を実現しようとしています。そうするとある意味、最大公約数的なマルチテナント型となります。私たちはこれを「半BTS型」と呼んでいますが、業界の中でもこの割合は、かなり多いと思っています。

――  建築費の高騰や人手不足など、現在の開発環境には課題も多いのでは。開発状況はいかがですか。

末棟  これまで50の開発プロジェクトが進行し、今年2月に竣工した「T-LOGI白岡」で竣工が20物件目となります。現在建築中のプロジェクトが8プロジェクト、今年度、来年度着工が15物件あります。2020年の第1号案件の竣工から、かなり早めのペースで進行しています。建築費の高騰や中東情勢の影響などがあり、楽に着工できる案件はないのですが、着工予定物件については早めにゼネコンさんの選定を進めているので、比較的順調に推移しています。

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末棟ロジスティクス事業部長

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全国での開発概要マップ

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T-LOGI白岡外観

――  エリア的には、九州で積極的に展開されていますね。

末棟  そうですね。九州では既に竣工している物件が2物件、それ以外に5物件推進中の物件があり、その内の1物件が熊本で着工しています。

――  熊本エリアでは、TSMCの進出や半導体関連企業の集積に伴い、製造装置・部品の保管や広域配送に対応する物流施設の建設が相次いでいます。

川添  熊本は土地の許認可が非常に難しいのですが、土地の確保はご縁があってスムーズに進みました。全国的にも土地の取得は多くのご縁に支えられ、比較的順調です。

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熊本戸島ロジスティクスセンター外観パース

九州の門司では危険物倉庫に力をいれており、冷凍冷蔵倉庫といった現在トレンドの物件についても、臨機応変に土地の取得から開発まで行っています。

――  冷凍冷蔵倉庫や危険物倉庫の取り組み状況は。

末棟  冷凍冷蔵倉庫については、当社も積極的に開発を進めており、現在着工済み含めて13物件の開発を計画しています。延床面積が3000坪(約9900m2)から5000坪(1万6500m2)程度で、テナント様に1棟借りをしていただく施設と、大規模なランプ物件の1階だけを冷凍冷蔵倉庫とし比較的小割で借りていただくことを前提とした施設の、大きく2タイプの冷凍冷蔵倉庫を開発しています。

――  かなりのスピード感ですね、BTS型ですか?

末棟  大半はマルチテナント型で企画していましたが、実際にリーシングを始めると、多くの問い合わせがあり、1棟借りをしていただく施設については、先ほど申しました半BTS型といったテナントニーズに合わせたBTS型に近い物件となることも多いですね。いずれのタイプも着工前にテナントさんが決まることもあり、確かな手応えを感じています。

――  危険物倉庫についてはいかがですか。

末棟  2~3年前から危険物倉庫の問い合わせを数多く受けています。昨今のコンプライアンス強化の影響もあり、危険物倉庫の需要が高まっているのを感じていますので、そのニーズにも応えていく予定です。

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(仮称)北九州新門司物流施設PJ 外観イメージパース

固定観念にとらわれず
原点に立ち「稼げる倉庫」へ

――  今後、物流施設はどう変化していくとみていますか。

川添  物流施設というのは非常に面白いというのか、やりがいがありますね。というのも、物流施設は利益を生むベースとなるからです。我々は、物流施設はそこをベースに顧客に営業し、荷役を含めた事業を行い、利益を出していく業態だと認識しています。そこで重要なのは、顧客がきちんと「稼げる倉庫」に仕上げなくてはならないということです。

――  従来、倉庫は「コストセンター」と認識されてきましたが、稼げる施設だと。

川添  そうです。我々はもう一度、原点に立ち返って効率的な立地、雇用できる立地、働きやすい施設、効率的に使えるハードの部分を徹底的に突き詰めていくつもりです。

現在、自動化等のソフトの部分が注目されています。もちろん大切な要素でありますが、あえてもう一度、ハードの部分を検証していきたいと考えています。「とどける人の力になる。」をブランドコンセプトに掲げ、テナントや荷主、3PL企業、運送会社全ての事業機会に貢献することに全力を注いでいきます。

――  近年ではAIやITの活用、アメニティ設備の充実などを打ち出す物流施設も多く、どうしても目を奪われますね。

川添  我々も従業員向けラウンジの整備などを取り組んでおり、もちろんそれらを否定するつもりはありません。大切な要素ではありますが、「倉庫って何?」の部分にもう一度焦点を絞り、顧客にとって最適な物流施設を提供することが、我々の役割だと思っています。

――  産学連携で早稲田大学と「選ばれる物流施設」について研究をされていますね。それも顧客最適化へのアプローチの一環でしょうか。

末棟  はい。具体的な成果はまだ実現していませんが、継続的に取り組んでいくつもりです。我々とはまた違う観点で、「顧客が使いやすいということはどういうことか」、研究成果も取り入れ、実装していこうと思っています。我々は業界参入としては後発ですが、だからこそ「倉庫はこうあるべき」という固定観念が希薄で、そこが強みになるのではないかと考えています。

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早稲田大学との共同研究PJの発表会の様子

川添  そうですね。末棟の言うように、既成概念にとらわれないのはある種の強みであり、新しいことにチャレンジするのが、東京建物のDNAです。「進取の精神」で、顧客の潜在的なニーズまで引き出して施設づくりに生かすことができればと思っています。

――  原点復帰と進取の精神で、物流施設開発に挑むわけですね。ところで2024年問題から2030年問題を見据え、物流が抱える課題は依然多いと思いますが、デベロッパーとしてはどのようにお考えですか。

川添  10年、20年と考えた場合、人口が減っていくのは確かなので、業界を含めて考えていかなければならないと思います。マテハン機器の導入や自動化、ロボット化とさまざまな検討が進んでいますが、荷主さんと話すと、「共同配送を行いたい」という要望が多いですね。

自動化に多額のコストをかけるより、1社で戦わず、共同で配送すれば原資を損ねることなく、効率的な配送を実現できます。現在のトラックの積載率を高め、倉庫内の効率を改善するだけでも、大きな効果が生まれると思います。

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末棟部長、川添常務

――  最後になりますが、LNEWS読者に向けてのメッセージと、ご自身のストレス解消法についてお聞きします。

川添  原点に戻って、届ける人の力になれる物流施設開発に尽きると思います。物流は、なければ1日たりとも生活が成り立たない重要なインフラ。そのことに感謝するとともに、少しでもお役に立てていることに誇りを持ち、物流施設開発に臨んでいくつもりです。ストレス解消法はピアノをコロナ禍のころから始めています。大人の手習いですね。

末棟  これまでのお話しでご理解いただけたと思いますが、我々はテナントさんの声を丁寧に聞いて、泥臭く開発に取り組む企業です。物流施設開発が9年目に入った今年、プロジェクトも50を超え、あらためて進取の精神を発揮し、業界のスタンダードになる、皆が驚くような新しいことをやりたいと思っています。ストレスはゴルフ練習後の一人立ち飲みで解消します。

――  原点に戻り、進取の精神で取り組まれるとのこと、期待しています。ありがとうございました。

取材・執筆 吉坂照美 山内公雄

■プロフィール
川添 有一 (かわぞえ・ゆういち)常務執行役員コマーシャル不動産事業本部副本部長
1991年に慶應義塾大学法学部を卒業後、同年4月に東京建物へ入社。開発部門や大阪支店などで幅広い経験を積み、住宅情報開発部や住宅事業部ではグループリーダーとして住宅事業の用地開発や事業推進を担った。2019年に商業事業第二部のグループリーダーに就任し、物流施設事業を担当。2021年にはロジスティクス事業部長に就任し、物流施設事業の拡大と事業戦略立案を主導した。2023年に執行役員に就任し、2026年1月からは常務執行役員としてロジスティクス事業部担当兼コマーシャル不動産事業本部副本部長を務め、物流施設事業を統括している。

末棟 裕介(すえむね・ゆうすけ) ロジスティクス事業部長
1997年に慶應義塾大学理工学部を卒業後、2007年に東京建物へ入社。鑑定部を経て、投資運用会社への出向やビル事業企画部での業務に従事した。その後、東京建物不動産販売で不動産投資・ホテルやシェアハウス等の開発分野で経験を積む。2021年にロジスティクス事業部の事業グループリーダーに就任し、物流施設の開発・リーシング・管理・売却業務を担当。2026年1月からはロジスティクス事業部長として物流不動産事業の推進を担っている。

東京建物/宮城県「T-LOGI仙台」内覧会7月7・8・9日開催

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