物流施設の位置と考慮すべきコスト
前回(第39回)では、消費地内の複数の店舗に配送する場合において、物流施設の最適な数の考え方を示した。物流施設の数が明らかになると、次に都心(消費地の中心)からどの程度の距離に物流施設を置くかが課題となる。1)
今回(第40回)は、「都心からの物流施設までの距離」という課題を考えることにする。
コストにもとづく物流施設の位置の算出
物流施設の最適な位置(都心からの距離)については、一般的に物流施設の建設と運営にかかるすべてのコスト(総コスト)が最小になる距離が良いと考えられている。
たとえば、過去の研究例では、物流施設の位置が都心から遠くなるほど増加するコスト(リンクコスト:配送費用)と、都心から遠くなるほど減少するコスト(ノードコスト:建設費用、在庫保有費用、入出庫費用)について、それぞれコストの変化を曲線で示している。このとき、総コスト(=リンクコスト+ノードコスト)は物流施設の都心からの距離に対してU字型の曲線になり、総コストが最も小さくなる位置を求めることができる(図1)。1)
なお、メーカーや卸小売業などを対象に実際のデータを用いた分析によると、リンクコストとノードコストが交差しない例もある。2)
今回(第40回)の補論では、物流施設の都心からの距離と総コスト(=リンクコスト+ノードコスト)の関係を考えることにする。
物流施設の位置についての考え方
物流施設から消費地内の複数の店舗に商品を配送するとき、物流施設の最適な位置について都心(消費地の中心)からの距離をもとに考える。物流施設の位置は、業種、業態、品目、社会状況などで大きく変わるが、ここでは、以下のように考える。
1) 消費地立地型の物流施設の最適な位置について、都心からの距離をもとに考える。
2) 物流施設の最適な位置を検討するにあたり、コストのみに着目する。
3) コストについては、リンクコスト(物流施設から配送先までの配送コスト)と、ノードコスト(物流施設の建設費用、在庫保管費用、入出庫費用)を考える。
4) 総コストは、リンクコストとノードコストの合計とする。
5) 物流施設の位置は、総コストが最も小さくなる都心からの距離で表すとする。
ここでは簡便のために、物流施設の位置とコストの関係をあくまでも概念的に示している。
リンクコストの特徴
物流施設の位置(都心からの距離)により、リンクコストとノードコストは変化する。
物流施設が都心に近いほど、複数の配送先への走行距離や走行時間が短くなるため、リンクコストは小さくなる。逆に、都心から遠いほど、配送先への走行距離や走行時間が長くなるため、リンクコストは大きくなる。
リンクコストは、一般に走行距離に比例して高くなるが、走行時間が長くなるとともに休憩時間などのコストも追加される。この関係をグラフで表すと、都心からの距離の増加にともない、リンクコストは単調に増加する曲線になる。
これは、都心に近い住居を借りれば都心にある勤務先への通勤時間が短くなり、都心から離れるほど通勤時間が長くなることと同じである。
ノードコストの特徴
物流施設の位置が都心に近いほど、地価や建設費が高くなり運営費(人件費、光熱費など)も高くなるため、ノードコストは大きくなる。逆に、都心から離れるほどノードコストは小さくなる。
このときノードコストは、都心からの距離が長くなるとともに減少するがゼロになることはないので、この関係をグラフで表すと、単調に減少する曲線となり、ある値に近づいていく。
これは、住居を借りるとき、都心に近いほど賃貸料が高くなり、都心から離れるほど低くなることと同じである。
都心からの最適な距離の求め方
物流施設の最適な位置(都心からの距離)は、上記の4)と5)より、総コスト(=リンクコスト+ノードコスト)が最も小さくなる位置である(図2参照)。
物流施設が都心に向かう例(都心化)
一般的に、物流施設が都心から離れると、リンクコストは増加しノードコストは減少する。
リンクコストの増加量がノードコストの減少量よりも大きい場合には、物流施設の最適な位置は都心に近づく。これを物流施設の都心化ということもできる。
たとえば、配送頻度が高くなる場合や交通渋滞が激しい場合は、都心から離れるほどリンクコストは大きく増加する。
一方で、建設費や設備費について都心からの距離の影響が小さい場合は、都心から離れてもノードコストはあまり減少しない(図3参照)。
物流施設が郊外に向かう例(郊外化)
前述のとおり、物流施設が都心から離れると、リンクコストは増加しノードコストは減少する。
リンクコストの増加量がノードコストの減少量よりも小さい場合には、物流施設の最適な位置は郊外に向かう。これを物流施設の郊外化ということもできる。
たとえば、都心から離れるほど建設費や設備費が安くなる場合には、都心からの距離に応じてノードコストは大きく減少する。
一方で、配送頻度が低い場合や交通渋滞が解消している場合は、都心からの距離が遠くてもリンクコストはあまり増加しない(図4参照)。
参考文献
1) 苦瀬博仁・長谷川雅行・矢野裕児監修:ロジスティクス管理3級、第4版、中央職業能力開発協会編、社会保険研究所、2024年10月
2) 苦瀬博仁・久保幹雄・二階堂亮・管智彦:配送コストと施設コストにもとづく物流施設の最適数と最適位置のモデル分析、日本物流学会論文集5号pp12-20、日本物流学会、平成8(1996)年12月
連載 物流の読解術 第39回:物流施設の最適な数 -物流施設の配置計画を考える(3)-





