物流業界では2024年問題を背景に人手不足が深刻化し、現場の省人化と業務効率化に向けてAIを活用した自動管理システムの導入が広がり始めている。2026年4月の改正物流効率化法の施行により、荷主の時間管理や上層部への現場データ共有も喫緊の課題だ。
こうした中で、パナソニック時代から約60年にわたりセキュリティカメラ事業を手掛けてきたi-PROは、現場へのヒアリングを重ねて物流業界向けのAIカメラソリューションを開発。これまで培ってきた画像認識AIを生かしたナンバープレート認識技術を核に、トラックの入出庫管理の効率化を支援するサービスを展開している。
DXが進み、急速にデータ化の需要が高まる物流業界で、i-PROのAIカメラが物流の何を変えるのか、その核心に迫った。
取材:7月3日、於:i-PRO本社
防犯から入出庫判定へ
半年で磨き上げて実用化
―― これまで「i-PRO」はセキュリティカメラを主戦力としてきたイメージですが、物流業界に向けてAIカメラの開発導入に至った経緯をお聞かせください。
増子 もともとセキュリティカメラメーカーとしてやってきたなかで、単純に撮るだけではなく、AIソリューションとして映像を活用する場面を広げていこうという動きはありました。最初にいわゆるAIカメラの用途として、ナンバー認識のアプリケーション自体はあったのですが、それをさらに現場課題に向けて進化させようという機運がありました。
そんな中で、製品を開発している部署の者が、以前から物流の2024年問題に着目していたんです。ドライバーの労働時間規制や荷主の時間管理が重要になる中で、「うちのセキュリティカメラをうまく活用すれば、この課題を解決できるんじゃないか」と考えたのが、このパッケージを開発するきっかけになっています。
しかしこの時点ではどの現場もセキュリティカメラは防犯用途の導入がほとんどで、「ただ撮る」という段階から抜け出せていませんでした。ここから、撮影した映像に対するAIの活用や、逆に撮る前段階での活用方法など、物流の2024年問題に向けてAI研究を進めていったのが、開発の経緯ですね。
―― セキュリティカメラの顧客には生産や物流の現場も多いかと思われますが、AIカメラの開発に際して現場の協力などをいただいたことはあったのでしょうか。
増子 「AIカメラが物流課題に役立つかもしれない」という構想の段階で、流通・メーカー問わずに日本全国100か所以上の物流拠点を回りました。
パナソニック時代からの販売店さん経由などで、セキュリティカメラを導入いただいている現場へ、リプレースのご提案という形でついていって、入退場管理の実態などについてヒアリングや調査をさせていただきました。
その結果、現場でないと見えてこない課題が数多く見つかりました。
それらを一つずつ見つけた上で、物流会社向けのニーズを思案し、自社の技術と照らし合わせながら開発に至っています。物流業界に特化するために理解を深めながら、現場を知ることから始めていますから、今では現場に沿った提案やサービスを提供できる体制を構築できていると思います。
受付からバース運用まで自動化
主要なバース予約システムとも柔軟に連携
―― 導入にあたっての利点、改善される点についてお聞かせください。
増子 一番分かりやすくお伝えすると、アナログで行っていた管理・入力の業務を、カメラの導入だけで、全て自動化されるのが強みです。
既存の現場では、入場受付や荷役開始、作業時間の管理を手入力のExcelでまとめているところも少なくありません。それが、カメラを設置するだけで、カメラがナンバーを読み取って、そのナンバー情報に紐づけされた運送会社さん、ドライバーさんの情報を元に全て自動化でデータ化して、人の手でまとめる必要がなくなります。
―― 用途、需要さまざまあるとは思いますが、外部との連携はいかがですか。
増子 例えば、Hacobuの「MOVO Berth」やハコベルの「トラック簿」などの予約連携システムとの連携も可能です。
お客様のニーズに合わせて、予約システムとの連携や、それが不要であればi-PROのカメラシステムだけ、といったさまざまな運用形態をご提案できます。要望に応じて対応ができるのは、大きな特徴ですね。
また、カメラが読み取ったナンバー情報をテキストデータとしてお渡しするとか、画像データとしてお渡しするというのは、標準搭載しています。
―― 物流施設の規模や運用形態に応じて、どのように最適なカメラやシステムを提案しているのでしょうか。
増子 カメラ設置だけで導入できる点が強みですから、まず基本的には入退場門に特化したような、遠くまで撮れるようなカメラを提案しています。
入場時間、退場時間だけでなく、厳密に作業時間を取って荷待ち時間まで出したいという要望であれば、作業場のバースに付けるような小さいカメラを設置する場合もありますし、バースの数が100~200といった例であれば、待機場から作業所に向かう途中にカメラを設置して「ここを通ったら作業開始」とすることで、本来100台のカメラが必要なところを1台で導入したりする場合もあります。
カメラのラインナップはだいたい150機種以上ありますので、その中で最適なカメラを提案しています。相談をいただいた上で、最適なソリューションを提案していく形をとっています。
設置に際しては、商談の上、弊社側の設置シミュレーションで台数や金額をお伝えして、検討いただける段階で、現地調査をして、カメラ台数やカメラの設置位置を決定していきます。業界柄、現場での調査を求める傾向がありますから、その点は大切にしています。
改正物流効率化法が転機に
現場から経営へデータ共有
―― 改正物流効率化法の施行以降、現場データの可視化や管理体制の強化が求められるようになりました。こうした環境変化の中で、どのような企業・物流現場での活用を想定されていますか。
増子 2024年問題への対応をきっかけに、まずは法改正への対応が必要な特定荷主での活用が期待されます。一方で、努力義務の対象となる企業を含め、人手によるアナログ管理を続けている物流施設はまだ多くありますから、そうした現場では業務効率化に加え、不正駐車などへの対策としても自動化が有効だと考えています。
―― 改正物流効率化法の施行で、AIカメラを活用したソリューションへの関心も高まっていると思いますが、最近の顧客ニーズや引き合いにはどのような変化がありますか。
増子 以前は現場で担当者が手作業でデータを集計していても、それを改善するための投資はあまり進んでいませんでした。ただ最近は、本部や物流管理部門、CLO(物流統括管理者)が主導して、現場データを可視化し、業務改善につなげようという動きが活発になっています。
現場から直接お問い合わせをいただくこともあれば、本部が課題を把握した上で弊社に相談し、それを現場へ展開するケースも増えています。法改正を契機に、業界全体でデータ活用や業務改善に対する意識が高まっていると感じています。
低コストで導入しやすく
物流DXの入口として訴求
―― 実際の商談では、どのような点が評価されて導入につながるケースが多いのでしょうか。競合との差別化ポイントも含めてお聞かせください。
増子 こういったAIカメラの場合、情報を処理するために大掛かりなサーバーの確保や、クラウドへの接続が必要なケースが見られます。しかしサーバーを置く場合はスペースの確保、あるいは地中に埋めて設置する工事費が初期費用として発生します。クラウドの場合は月々の利用料、録画の場合はデータの保存としてさらに追加料金がかかる場合もありますね。
これに対しi-PROのAIカメラは、カメラそのものにAIが組み込まれているので、サーバー埋設やクラウドのランニングコストがかかりません。コストの点では大きなメリットと言えます。
また、カメラメーカーとして60年間以上の実績に基づく画像鮮明化技術、100か所以上の物流現場を見たノウハウに伴うカメラやソフトの開発技術もあるので、物流の現場に合わせた様々な機能や運用の提案が可能な点も大きな強みだと感じています。
―― 実際の導入事例を踏まえた優位性などはあるのでしょうか。
増子 導入事例では、日清オイリオにてご採用いただいており、物流予約システムとの連携も含めて高い評価をいただいています。現在は導入企業も着実に増えており、物流・製造業界の多様なお客様への展開を進め、親和性の高い業界の方にも広く認知を拡大していきたいと考えています。
弊社からは、入退場管理を行う「タイムトラッキング」と、物流予約システムと連携する「バースコネクト」の2つのサービスを提供しています。いずれもSaaS型サービスであるため、機能追加や認識精度の向上は無償でアップデートしていますし、リモートでのメンテナンスにも対応しています。使い続けるほど利便性が高まる点が特徴です。
また、ほかの導入例で言うと、新規でまずお話をいただいてから、横展開で進めるパターンもあります。全国に拠点を持つ企業では、一度に全拠点へ導入するのではなく、まずは1拠点で試していただくケース。導入効果を確認した上で「これなら十分使える」と判断いただき、他拠点へ順次展開していく、といった形です。
これまでの実績から、多くのお客様にセキュリティカメラを導入いただいているのは弊社の強みなのですが、i-PROとしてAIカメラのソリューションを業務改善に活用されている方は実はまだそれほど多くありません。抱えている課題を「カメラの設置だけで解決できる」ことが知られていないので、まず企業としては認知を広げていきたいですね。
―― 最後に、LNEWSの読者へ向けてお願いします。
増子 今回は物流向けのご紹介でしたが、AIカメラの活用範囲はそれだけではありません。人の目で行っている作業をAIで代替できるケースもありますので、現場で困っていることがあれば、「こういうことはできないか」と気軽にご相談いただければと思います。
取材・執筆 鳥羽啓太 石本融藝
■i-PRO組織沿革
1957年 松下電器産業 中央研究所において業務用監視カメラを開発
1961年 松下通信工業(2003年にPSS※1に事業再編)において業務用監視カメラ事業開始
※1 PSS:松下電器産業パナソニックシステムソリューションズ社(社内分社)
2001年 九州松下電器(2003年にPCC※2に社名変更)においてIPネットワークカメラ事業開始
※2 PCC:パナソニックコミュニケーションズ
2005年 PSSより、i-PROシリーズの監視カメラシステムをリリース
2010年 PSSとPCC統合によるパナソニックシステムネットワークス(=PSN)発足に際し、監視カメラ事業を再編してセキュリティシステム事業部を発足
2011年 パナソニックの北米警察向け車載録画システム事業と、三洋電機の監視カメラシステム事業をPSNのセキュリティシステム事業部へ統合
2015年 アメリカのVMS(ビデオマネジメントシステム)ベンダーのVideo Insight社を買収
2017年 PSNのセキュリティシステム事業部を会社分割によりパナソニックに承継
2019年 セキュリティシステム事業部を母体とし、ポラリスキャピタルグループの出資を受けた新会社、パナソニックi-PROセンシングソリューションズを設立
2021年 i-PROイミア株式会社(i-PRO EMEA B.V.)をアムステルダムに設立
2022年 「i-PRO株式会社」に社名変更
■製品リンク(公式サイト)
物流業界の人手不足・安全対策をネットワークカメラで強力サポート | i-PRO Products
三菱地所、ダイフクなど13社/高速道路直結型ステーションハブ推進協議会が始動








