物流最前線/東急不動産、「産業まちづくり」の視点で物流機能も強化加速

2026年08月04日/物流最前線

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不動産企業として70年以上の歴史と実績を持つ東急不動産が物流施設開発に乗り出したのは2016年。開発当初からグリーンエネルギー活用を前面に押し出した施設運営で入居企業の環境経営を後押ししているほか、工場やデータセンター、商業施設などと物流施設を組み合わせた新たな産業基盤整備を通じて、産業振興や地域共創を力強くサポートしていく方針を掲げている。環境配慮型物流施設「LOGI’Q」(ロジック)などを全国に展開する東急不動産の「産業共創事業ユニット」で、物流施設を含めた「産業まちづくり」を担当する佐藤公俊執行役員インダストリー事業本部長に、早い段階から力を入れてきた冷凍冷蔵施設整備の今後の見通しや、新たなビジネスの軸になりつつある産業まちづくり事業などについて聞いた。(取材日:2026年6月30日、於:東急不動産本社)

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佐藤本部長

2016年に物流施設開発始動
冷凍冷蔵倉庫には早期参入

――  物流施設への参入の経緯や開発時のポリシーなどについてお聞かせください。

佐藤  参入したのは2016年度で、初めは少額投資で参画しました。住宅部門から物流施設を受け持つインダストリー事業本部に私が異動してきたのが2018年で、その頃には「LOGI’Q」というブランドを立ち上げて、本格的にやっていこうという段階に入っていました。当時はまだEC化率が低かったですし、20年以内に造られた物流施設が少なく、ECの拡大や施設の建て替え需要も含めて、まだまだ広がりのある業界だということが異動して初めて分かりました。

そこから本格的に用地取得に向けてクライテリア(意思決定を行う際の基準など)を作り、実際に軌道に乗り始めたのは2020年ぐらいからでしょうか。われわれは再生可能エネルギーを最大限活用する物流施設にしよう、ということで、コーポレートカラーでもある緑を基調として「LOGI’Q」のリブランディングも行いました。

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自社の再生可能エネルギー発電事業を活用した電力供給

――  インダストリー事業本部には5つのセクションがありますが、物流施設関連の売り上げは何割ぐらいでしょうか。

佐藤  今は大半が物流施設ですね。われわれが「GREEN CROSS PARK(グリーン クロス パーク)」、通称「GXP」と呼んでいる産業まちづくり事業をこれから手がけていくのですが、仕上がってくるのは2030年以降の予定なので、現段階では利益貢献はしていないですね。データセンターも今年3月に北海道の石狩で1件竣工しており、稼働を迎えます。

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「GREEN CROSS PARK」の将来イメージ

――  冷凍冷蔵倉庫への参入は、他のデベロッパーと比べても早かったですね。

佐藤  当社は大きな商業施設をいくつも運営しているので、荷主とのつながりを持っています。働き方の変化や食品ロスの問題など、さまざまな情報を耳にすると、確実に冷凍食品へのニーズが今後高まっていくというのが分かってきました。昔と比べて冷凍技術も発達しているので、今は「冷食ですよ」って言われないと分からないぐらいおいしいですよね。そういったところから冷凍冷蔵倉庫開発が始まりました。

――  自動化は、冷凍冷蔵倉庫が先に進むのでしょうか。

佐藤  冷凍冷蔵倉庫の中で働く方が明らかに過酷なので、先に自動化が進むのは、やはり冷凍冷蔵倉庫ですね。多くの企業がさまざまな努力をされている中で、人手をどう確保するかという直近の課題と、フィジカルAIのようなものがいつできるのかという長期的な展望の間を、どう埋めていくのかが課題なのかもしれないですね。

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「LOGI’Q広島」の完成予想図

――  関西方面の冷凍冷蔵倉庫は。

佐藤   2028年度に竣工予定の冷凍冷蔵対応施設「LOGI’Q広島」には多くの引き合いが来ています。今は、どちらかいうとドライのほうの引き合いが強いので、中国エリアでは冷凍冷蔵庫の賃貸マーケットの拡大はもう少し先になるのかもしれません。

将来に向け物流施設などを起点とした
産業まちづくり事業を展開へ

――  他のデベロッパーと数多くコラボレーションしているのも特徴的ですね。

佐藤  マンション業界などでは、同業他社とのJV(共同企業体)の案件が非常に多いですね。そういった関係性の中で、他のデベロッパーでも住宅から物流に異動してきている方が多く、「それなら一緒にやろう」というところから始まった部分も大きいですね。当初は人数も少ないですし、事業をスケールしていくための1つの手法としてJVを進めるのが一番のやり方ではないのかなと思って進めました。

ただ、旗艦物件にはきちっと「LOGI’Q」を付けたかったので、そこはメリハリを付けながら、JV先に任せるものと自社メインで進めるものと、バランスを考えながら進め、ノウハウを蓄積してきた結果、事業規模がどんどん大きくなり、収益事業に成長したと思います。

――  現在までにどの程度の物件を手掛けられましたか。

佐藤  2026年3月末時点で開発中を含め事業化できている物流施設が53物件ですね。そのうち、開発中が15物件ぐらいです。予定物件を入れると60数件。地域的に言うと、やはり首都圏と関西圏が多いですね。関西圏は土地の供給が少ないので、なかなかいい用地が見つからないというのが悩みどころです。

産業まちづくり事業は、全国で現在9か所の開発に向けた検討を行っており、佐賀県では「小郡鳥栖南スマートIC」のすぐ近くに約34haの土地の用地買収を進めていまして、そのうち4分の1程度を物流施設、残りに工場等を誘致するといったイメージで、佐賀県や鳥栖市と一緒に「(仮称)サザン鳥栖クロスパーク」の開発を進めています。2030~31年に土地の造成が終わる予定なので、そこから当社が物流施設を建設して、その他の土地には企業を誘致していく計画です。また、「(仮称)サザン鳥栖クロスパーク」では、自動運転トラックの実装に向けた取り組みも進めています。

このように30~50haの大型プロジェクトを複数全国で進めていますので、将来的に自動運転トラック対応の施設としてネットワークが作ることができればいいかな、と思っています。

新たな技術に果敢に挑戦
変化に対応する準備必要

――  自動化への対応も積極的ですね。

佐藤  昨年、自動運転トラックの開発や運行を行っているT2と、完全自動運転の実現を目指すTuringという会社に出資をしました。それから、庫内や工場内の自動化をやっている会社にも出資をしましたので、様々な業種の企業様とコンソーシアムを組んで、自動化をどう実現するか、という検討を進めていきたいと思っています。

自動運転トラックは交通インフラなので、企業の枠を超えて情報を共有しながらやっていく必要があると思います。同業他社とも意見交換していますし、3PL事業者ともいろいろ話をしていますが、トラックドライバー不足の解消が急務になっていると感じます。

自動運転トラックを走らせる時代が来た時は、当社のみでやるのはなかなか難しいと思います。だから皆さんで、例えば、コンソーシアムを組んで、日本のサプライチェーンを守るためにやっていくべきだと思います。

――  他社ではプラットフォームづくりを進めています。

佐藤  東急不動産ホールディングスのグループ会社に他社も加えて、人材を育成、派遣するようなプラットフォームを作りたいと思っています。全て自動化というのはあり得ないので、機械を整備する人もいれば、修理する人も必要です。人口減少で企業単独では確保が難しい中、今後必要とされる人材を継続的に確保できる仕組みを作ろうと検討中です。

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旧上瀬谷通信施設跡地に開発が予定されている「(仮称)上瀬谷PJ」の完成予想図

――  高速道路に直結する物流施設という構想もあるようですね。

佐藤  来年横浜市内で国際園芸博覧会が開かれますが、延べ60万m2超の跡地を当社と三菱地所、シーアールイーとで新しいICに直結する物流施設にする計画があります。今後レベル4自動運転トラックが実現すれば、無人のまま物流倉庫に行くことも可能になります。

――  ローカル5Gはオフィスビルなどで前から取り組まれていましたが、物流施設でも実装が進んでいるのですか。

佐藤  はい。関西の旗艦物件「LOGI’Q南茨木」の一部区画にローカル5Gの環境を作って実証実験をやっています。自動化を進めていく上では必要な通信環境なので、今後もっと普及すると思っていますが、まだ実験段階という感じですね。ロボットが連動しながら正確に動くようになるようになるには、まだ時間がかかるかもしれませんね。

――  技術は日進月歩ですので、今いい設備を入れても、「すぐ古くなる」ということもありますね。3PLや荷主企業でも、いつ入れるかのタイミングが非常に難しいと聞きます。

佐藤  いかにバージョンアップできるかという部分が重要になってくると思います。データセンター関係者と話すことも多いですが、生成AIの発展により劇的な速さで変わっていくと言われているので、その変化に対応できるようにわれわれも準備をしていく必要があるということは、常に考えています。

だから、バージョンアップなり、修正が効くような形で作っていくしかないと思います。データセンターもそうですし、物流もそうだと思いますけど、変えられるところをうまく柔軟に変えられるようにしておくっていうのは重要かもしれないですね。

マルチテナント型が9割以上
立地厳選や直接契約の高さ強み

――  マルチテナントとBTSの割合は。

佐藤  マルチテナント型が9割以上です。契約の形態も従来は比較的長期で賃料固定が一般的だったのが、賃料改定できるような契約形態も増えてきており、今後は柔軟な契約形態が増えていくのかも知れないですね。

立地を厳選しているっていうところもありますし、この10年でテナントさんの意見を取り入れた形でのプランニングもできてきていると思います。9割ぐらいは直接契約をしているので、そのあたりが強みかもしれないですね。

――  大規模な物流団地などの開発は。

佐藤  物流だけの大規模開発は今のところしていないですし、今後の計画もないです。今後は産業を中心とした新しいまちづくりを東急不動産ホールディングス一体となってやっていきたいですね。

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「LOGI’Q白岡III」の外観

――  物流施設へのニーズが高い埼玉県周辺の入居状況はいかがですか。

佐藤  関越道や圏央道へのアクセスに優れる白岡市では、7月に竣工の「LOGI’Q白岡III」にも非常に多くの引き合いがあります。近くには「LOGI’Q蓮田」もあり、ほぼ満床になりました。

白岡では土地改良事業法という法律を使っています。耕作放棄地を農業法人が買って、農地の一部を物流施設用地として民間企業に売却、その資金で農地を再整備するというといった仕組みです。この法律を使って、LOGI’Q白岡IIIを含めた2物件を開発し、今後は、農業での取組みのほうにも出資を検討しており、日本有数の大規模なイチゴ農園ができる予定です。

圏央道沿いでは、空室率が上がった時期もあったのですが、このエリアの物件は順調に引き合いをいただいていますね。「LOGI’Q蓮田」は大きい物件にもかかわらず、ほぼ1社で借りていただいています。

建設費高騰は自然な流れ
高く借りてもらえる施設を

――  現在、建築資材の高騰、土地不足が起きていますね。

佐藤  オフィスや住宅を含めて、この30年ぐらい物価が上がらなかったのが異常だったのであって、建築費が上がっているのは普通のことだと捉え、品質で選ばれるような施設づくりをしていくべきかなと思います。

――  2030年問題への対応で、倉庫にトラックの駐車できるスペースを増やそうという話がありますが、そのあたりの対応は。

佐藤  トラック待機場を増やしてほしいというオーダーは最近多いですね。敷地の中で建物の面積はほぼ決まってしまうので、トラック待機場をどう配置していくかについては非常に難しいわけですが、できるだけ工夫しながら待機場は確保するようにしています。

業務提携をしているT2と自動運転トラックの切り替え拠点を施設内に設置する検討を進めているプロジェクトもあります。

今後もテナントニーズを積み上げ、いい施設づくりを進めていきます。

2030年までに5800億円を投資
そのうち6~7割を物流施設に

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竣工した石狩再エネデータセンター第1号

――  今後、どのぐらいの予算規模で開発を進める計画ですか。

佐藤  2030年までに物流・産業施設分野において、5800億円の投資を行うことを中期経営計画に盛り込んでいます。その中で6~7割程度を物流に振り向け、残りをデータセンターや工場開発に使うイメージです。

データセンターはコストがかかりますが、ニーズがとても高まっています。DXを日本全体で進めていくためにも事業として確立させたいなと思っています。明らかに需要があるのは分かっています。その需要をどう捕まえて組み立てればいいかというのは、まだ模索中ではありますが、需要があるところに投資をしていけば、失敗は絶対にないと思っています。

――  トラックドライバーの拘束時間制限があって、中継拠点のような形で物流施設が必要とされていますが、そのあたりについてはいかがでしょうか。

佐藤  中継地点になり得るだろうということで「LOGI’Q広島」の開発を決めました。広島は平らな土地があまりないので、非常にニーズがあるという気がしましたし、そういった意味で言うと、静岡など東海道エリアも狙っていきたいなと思っています。

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「日本のインフラを支えられるような事業に成長させていきたい」と語る佐藤本部長

――  職務上、ストレスも多いと思いますが。

佐藤  そうですね。お付き合いもあって、ほぼ毎日お酒は飲んでいます。業界の中には飲まれる方も多く、月曜日から金曜日では足りないぐらいです(笑い)

――  LNEWS読者に向けてメッセージをいただけますか。

佐藤  住宅業界から物流業界に異動してきて、最初は目立たない分野だと思っていたのですが、社会課題に直面している事業である分、もっと誇りを持っていいのかな、ということを今は強く感じています。

産業まちづくり事業やデータセンターなど、日本のインフラを支えられるような事業に成長させていきたいと考えています。「ものづくりの日本」と言われた時代に負けないインフラを整えることで、社会に貢献していきたいと強く思っています。

                  取材・執筆 奥田岳人 山内公雄

■プロフィール
東急不動産
執行役員 産業共創事業ユニット インダストリー事業本部長
佐藤公俊(さとう・きみとし)
1970年4月生まれの56歳。
東京都目黒区出身。

1994年 立教大学社会学部観光学科卒業、東急不動産入社
2020年 都市事業ユニット インフラ・インダストリー事業本部 ロジスティクス事業部統括部長
2021年 戦略事業ユニット インフラ・インダストリー事業本部 ロジスティクス事業部統括部長
2024年 執行役員 インフラ・インダストリー事業ユニット インダストリー事業本部長兼営業統括部統括部長
2026年4月より現職

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