日本の先進的大型物流施設の市場を切り開いてきた日本GLPが新たなステージに進む。アレス・マネジメント・コーポレーション(アレス)への統合に伴い、物流施設ブランド「Marq(マーク)」を立ち上げた。しかし、帖佐義之社長は「変わるのはブランド名だけ」と強調する。ALFALINKとMarqのこれまでの日本GLPとは何も変わらず、さらに物流最適の施設と大規模開発に向けて、ブランドを軸に物流施設開発と物流業界支援をさらに加速させる同社。その戦略と物流業界への思いを聞いた。
取材日:7月21日(一部8月25日追加取材)、於:日本GLP本社
ブランドは変わる、事業は変わらない
アレスとの統合でさらに強固な基盤へ
―― アレスへの統合に伴い、GLPからMarqへ物流施設のブランドを変更しました。GLP時代と何が変わるのでしょうか。
帖佐 実際のところ、変わるのはブランド名だけです。新社名は決定次第発表しますが、これまで日本GLPがやってきたことは変わらず、MarqとALFALINKの2つのブランドで従来通り日本の物流効率化に資する高品質な物流施設開発に注力していきます。
―― アレスとの関係は。
帖佐 2025年3月にアレスの傘下として日本GLPの事業は移行したわけですが、アレスはもともとクレジット、不動産、プライベートエクイティ、インフラなどを扱う世界有数のオルタナティブ投資運用会社で、日本にも法人があります。同社は米国や欧州にも物流不動産の会社を持っており、グローバルでの統一ブランドとしてMarqを立ち上げることになりました。Marqの傘の下で、確立されたブランドであるALFALINKも今後は継続していきます。
GLPも元々はグローバル・ロジスティック・プロパティーズという名称でスタートし、GLPという愛称で呼ばれるようになり、確かに愛着はあります。しかし、日本GLPの物流施設事業の成長曲線は非常に高いことから、アレスからも「従来通りの事業方針・体制で進めていくことがお客様にとってもアレスにとってもベストである」との考えから、日本での事業運営は一任されています。今後、会社としての方針やサービス内容・顧客への接し方が変わるわけでもなく、お客様やパートナーの皆様と接する社員も経営陣も誰も変わりません。
―― テナントさんの中には「今後どうなるのだろうか」という不安の声があったと思いますが。
帖佐 当初、担当者が各テナントさんにあいさつで伺った折、親会社が変わることで心配や懸念の声があったとは聞いています。しかし、「何も変わらない」と説明を続ける中で、現在はご理解いただけています。
―― 方針も運営も従来通りとして、アレスとの関係でプラス面の要素としては。
帖佐 アレスの持っている強みというのは、これまで我々がアクセスできなかった機関投資家との関係であったり、デットとエクイティなどを組み合わせた多様な投資、資金調達手法を持っていることです。これにより、不動産開発の選択肢が広がり、土地の取得や完成物件の取得に加え、より柔軟な投資手法を活用した事業展開が可能になります。これまで、やりたくても我々だけではできなかった事業を手掛けることが可能になりました。
―― 事業のメニューが増えるということですか。
帖佐 そういうことです。我々には二つの側面があって、一つはデベロッパーとしての泥臭いオペレーティブな側面。これは従来と変わりません。一方、ブラックストーン(米国にある世界最大級のオルタナティブ投資運用会社)などを始めとする資産運用会社が行っている投資の側面があります。アレスとの関係で、これらと互角にやっていける強さを獲得できたと思っています。
―― 大規模開発、例えばALFALINK等の開発がより積極的に行える事業環境を整えたということですね。
帖佐 アレスという新しい力を得て、私たちはさらにパワーアップしました。これまで以上に強固な企業基盤のもとで、大規模開発や新たな投資にも挑戦できるようになったと考えています。
CLOの誕生は転換点
物流はコストから競争力へ
―― 強力な企業基盤を整えている御社ですが、昨今の物流業界でも、2024年問題から2030年問題、CLOの設置等が話題になり、大きな変革期を迎えていると思います。現在の物流業界の状況についてどのように捉えていますか。
帖佐 2024年問題も2030年問題も根は一緒です。物流の現場からすると、これまでずっと抱えていた問題が継続しており、それに対応していかなければなりません。物流業界の人手不足、トラックドライバー不足等は以前から続いていた課題です。そうした中、物流の効率化に向けて自動化・ロボット化やAIといった様々な解決策や施策が実行されつつある状況だと思います。しかし、物流への期待度、要求度は年々高まっており、さらに物流は複雑化しサービスメニューも細分化し続けています。物流事業者はそれに対して、必死に努力を重ねている状況だと思います。
―― 物流統括管理者(Chief Logistics Officer)の誕生については。
帖佐 CLOは非常に良い取り組みだと思います。なぜなら、企業が真面目に物流の重要性を考える良い機会になるものだからです。振り返れば、今から20年前ごろには荷主側は物流費を減らすことが企業の物流担当者の大きな役割でした。1円でも安く、物流コストを削減することが、彼らのスタンスだったと思います。ところが、企業にとって物流は大きな武器になるということが、物流品質の向上により、その企業の製品の販売成果にも影響することが、コンビニやEC、小売業等の特に物流に感度の高い企業から理解され始めました。物流を単なるコストではなく、企業の競争力を左右する戦略分野へと変わってきています。だからこそ、取締役クラスのCLOを設置する意義は非常に大きいと考えています。
―― 物流が重要なインフラだということが、物流業界だけでなく、生活者にも理解され始めました。
帖佐 大きかったのは東日本大震災だと思います。モノが届くということが当たり前ではなくなった瞬間でした。そのあとのコロナ禍も物流が大切なインフラだということが認識されました。ALFALINKの開発時も、地域の方々に、災害時だけでなく、生活インフラとして使ってもらおうという意識を強く持てましたし、物流が我々の生活に欠かせない社会インフラであることを繰り返し発信するようになりました。
―― インフラと言えば、サプライチェーンの中での物流の重要性もよく指摘されますが、最近ではホルムズ海峡の封鎖問題もありますね。
帖佐 今のところ石油が止まっているわけではなく、大きなディストラクションが起きているとは思いませんが、長引くと価格転嫁で物価高が進み、コスト高でインフレ傾向が進むということを心配しています。国が成長していく中でのインフレは問題ないのですが、今はコスト高でのインフレという危機感はあります。
―― 物価高騰の中、賃上げを打ち出している物流企業も増えてきました。
帖佐 失われた30年から脱却して、良いインフレに期待したいですね。物流業界の人手不足やトラックドライバーの不足も、結局は給与面に起因している割合が高いと思います。一昔前のトラックドライバーは高給だったイメージがありましたが、他の業界と比べて相対的に低下しました。やはり労働に応じて適正な給与面での改善が必要ですし、そのための原資は適正な物流費を獲得することが物流業界の課題となっています。
「まさか」の物流共創を生み出す
コミュニティーとコンシェルジュの力
―― 物流施設開発については、従来と変わりない方針とのことですが、今後の御社の展開についてお聞かせください。
帖佐 マルチテナント型、BTS型、冷凍冷蔵施設、ALFALINKと基本的に開発する物流施設のメニューは変わりません。ただ、ハードとしての物流施設が果たす役割がソフト面のサービスにより、大きく変わってきていると思います。それが私どもの提供する様々なソフトサービスです。これは床をお貸しするという本来の業務面でも大いに役立っています。
―― デベロッパーが提供するソフトサービスということですか。
帖佐 どういうことかと言うと、ALFALINKをはじめ、当社の物流施設では、入居している物流事業者や荷主が参加するカスタマー協議会という会議体を設けています。コミュニティーを組織し、ライバル企業であっても関係を深めていただくことで、入居者間の共創を促していく取り組みです。これはもっともっと広がっていくものだと思います。
例えば、荷物が足りない、逆に床が足りないといった、保管している荷物の量にまつわる課題や、人手不足やドライバー不足といった課題を、入居企業の持っているニーズや課題を可視化し、我々がマッチングすることで解決する糸口を見つけられることがずいぶんあります。同じ物流施設の入居企業間で融通して解決できる場合もあれば、我々が荷物の融通先や荷主を紹介したり、パートナー企業を紹介することで解決できる場合もあります。
―― Marqコンシェルジュのことですね。
帖佐 近年、ALFALINK内での入居者間のコミュニティーと、長年提供しているコンシェルジュの伴走がうまく融合しています。テナントさんもとても喜んでくれていますし、我々にとっても大きなメリットになっています。コミュニティーとMarqコンシェルジュにより、お互いの情報共有・交換の場となり、それが新たな事業獲得の場となり、また我々の物流施設の賃貸や定着率の高さにもつながっています。例を挙げればきりがないくらい、数多くの事例が誕生しています。
―― ALFALINK相模原で実際に佐川急便さんと西濃運輸さんの協力関係が実現しましたね。
帖佐 佐川急便さんと西濃運輸さんが連携して実現した「飛脚カンガルー便」(宅配では送ることができない3辺合計260サイズ、50kgを超える荷物を中心に、佐川急便が集荷し、西濃運輸が配達するサービス)なんて「まさか」という感じでしょうが、両社がALFALINK相模原のテナントとしてコミュニティーに参加し情報交換した結果、現場の利害が一致し実現したものです。我々の役割は、コミュニティーを通じてちょっとした気付きと、少し背中を押した程度ですが、それぞれがWinWinの関係を実現しています。これがコンシェルジュにも生かされているのです。物流事業者でも荷主でもない我々だからこそ、発想できたものと思います。
進化し続けるALFALINK
冷凍冷蔵需要が新たな成長エンジン
―― 具体的な今後の物流施設開発についてお聞きします。巨大な開発であるALFALINK東京昭島の1棟目が6月30日に着工しました。ALFALINKはまだまだ増えそうですね。
帖佐 相模原、流山、茨木、尼崎に次いで東京昭島が5件目のALFALINKプロジェクトになります。ALFALINKは、テナントはじめ、自治体などの関係者も反響が非常に良いので、機会があればどんどんやっていきたいなと思っています。また、ALFALINKもさらなるアップデートを図り特色を打ち出していこうと思っています。例えば、食品の冷凍冷蔵需要が活発なことから、冷凍冷蔵を専用とするALFALINKの展開も考えられます。
また、現在は大都市圏だけですが、地方にも展開できるものと考えています。さらに、ALFALINKの世界観は、ハード面だけでなく、バーチャル空間でもできると思います。ビジネス共創やコラボレーション等はALFAKINK入居者だけではなく、外の顧客にもそのサービスを受けられるような形ですね。
―― ALFALINKの今後が楽しみです。しかし、ALFALINK東京昭島の規模には驚きました。よく東京近辺であれだけの土地を確保できましたね。
帖佐 物流適地は大都市圏では残っていないと言われますが、そんなことはありません。土地所有が様々な用途で使われているから難しいということです。ALFALINK東京昭島の土地は元々昭和飛行機が所有していたゴルフ場で、これまでに入手した土地では最も広大な面積です。物流施設とITインフラの両方で利用できるので、これは絶対獲得すべきだと考えていました。
―― 土地利用の変更で入手する手法は流山でも同様でしたね。
帖佐 これは我々の得意とする分野です。流山は農地転用の形です。時間はかかりますが、その分作りこみができるメリットがあります。時間がかかるだけにその間に顧客のニーズや情報も集まります。着工時にはきちんとしたプランが既に出来上がっています。しかし、これは地域自治体の協力なしではありえません。流山市の井崎市長の描いていたまちづくりと我々がうまくシンクロできたと思っています。流山市はとても協力的で、良い関係が構築できたと思っています。
―― 来年8月には、神奈川県川崎市で、冷凍・冷蔵マルチテナント型物流施設「Marq川崎2」の竣工が予定されています。また、この8月25日には、川崎市、JFEホールディングス、日本GLPによる「次世代冷凍冷蔵機能による扇島地区における高度物流拠点の形成に係る連携」協定締結が発表されました。冷凍冷蔵物流施設についてはいかがでしょうか。
帖佐 人々の生活スタイルが変わってきており、冷凍食品や総菜の売れ行きが急増しています。そのため、冷凍冷蔵の物流施設需要が大きく伸びており、さらに保管中心の冷凍冷蔵倉庫から、加工を含めての物流施設に変化しています。ニーズに応えられる施設が現在、圧倒的に足りていないということです。
―― マルチテナントの冷凍冷蔵施設は従来では考えられませんでしたね。
帖佐 そうですね。2017年の冷凍冷蔵専門チームの創設以来、何度も試行錯誤を重ね、失敗もありましたが、開発してみると即座に満床になりました。決して新しいものを作ろうという感覚ではなく、物流事業者や荷主との幾度ものコミュニケーションを通じて、彼らが必要なもの、求めているものは何かを追求した中で生まれたものだと感じています。
―― 倉庫の自動化も進んでいます。
帖佐 自動化は今後もどんどん進展していくと思います。デベロッパー側で用意しなければならないものも年々変わってきていると思います。一旦、自動化に進むと後戻りできませんからね。自動化に伴い、電気容量の増加も目立って大きくなっています。ただ、完全自動化までは時間がかかると思います。日本の物流はクオリティが高く、より細かいサービスを提供してきただけに、まだまだ機械に取って代わられることのない部分がありますからね。
―― 最後になりますが、LNEWS読者に向けてのメッセージをいただければと思います。
帖佐 我々がここまで事業を拡大してこられたのも物流業界の方々、荷主の方々、建設業界の方々の力強いサポート、ご理解があったればこそで、我々もそれに少しでもお応えできるように努力してきました。今後、社名が変わり、ブランドが変わった後でも、一切変わることなく、私たちはこれからも「物流業界の応援団」であり続けます。社名やブランドが変わっても、その姿勢は変わりません。物流業界の皆様に寄り添い、ともに成長していきたいと考えています。
―― ありがとうございました。日本GLPの第2幕となる今後に期待しております。
(取材・執筆 山内公雄 稲福祐子)
■プロフィール
氏名:帖佐義之(ちょうさ よしゆき)
生年月日:1969年8月19日生まれ
出身地:東京都
最終学歴:慶應義塾大学法学部卒業
略歴
1992年三井不動産入社。オフィスリーシング、マンション・戸建開発に携わり、その後、三井不動産投資顧問にて、海外機関投資家に対する資産運用業務および不動産投資に関するアドバイザリー業務を行う。2003年プロロジスに入社。2009年のGLプロパティーズ設立以来、物流施設のリーシング、取得・売却、資産運用業務など日本国内におけるオペレーション全般を指揮。2012年同社の代表取締役社長就任。2018年「日本GLP」に社名変更。2025年、アレス・マネジメント・コーポレーション・パートナー兼日本不動産部門責任者
■日本GLP 公式サイト
https://www.glpjp.com/
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