アレス・マネジメント・コーポレーションへの経営統合により日本GLPの物流施設ブランドが「Marq」へ一新された。今後、会社名やブランド名変更に伴い、施設の開発方針やサービスも変わるのだろうか。この問いに対し日本GLPの帖佐義之社長は、「業務に対する本質的な姿勢は何ら変わらない」と説明する。これを受け初回は、日本GLPが他のデベロッパーにない強みとする、顧客伴走型のサービスである「Marqコンシェルジュ(旧GLPコンシェルジュ)」に焦点を当て、担当の営業開発部 飯田一樹ヴァイスプレジデント、営業開発部兼共創事業部 野中大介ヴァイスプレジデント、そしてその支援を味方に付け、関東での事業を拡大させたオオサカデリバリーの事例を紹介する。(全4回)
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物流最前線/物流業界の応援団であり続ける 日本GLP、新ブランドMarq始動 2026年09月01日 |
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| シリーズ GLPはMarqへ | ||
| (1)顧客の事業成長に伴走するMarqコンシェルジュ | (2)進化を続けるMarqの冷凍冷蔵 | |
| (3)顧客の成功から逆算する施設開発 | ||
■物流施設だけで物流課題は解決しない
良い物流施設を借りれば、課題は解決する。物流はそんな単純な話ではない。
新たな拠点を構えれば、トラックの確保、人材採用、設備投資資金の確保など、次々に課題が出てくる。施設を「借りる」ことは、入居企業にとってゴールではなく、むしろ事業を動かすスタート地点だ。
「好立地、高機能の物流施設を貸したとしても、それだけで顧客の課題は解決しない」という考えから、日本GLPが展開しているのが「Marqコンシェルジュ」だ。物流施設の紹介にとどまらず、荷主の紹介から、人材の採用、自動化設備や補助金申請支援までテナントが抱える課題を拾い上げ、必要な企業やサービスにつなぎながら、テナントの事業の成長に伴走する。
営業開発部でMarqコンシェルジュの企画推進を担当する飯田氏は、「テナント企業から受ける相談は、床荷重など倉庫スペックの話ばかりではない」と説明する。
物流専業のデベロッパーとして、何を提供できるのか改めて考えたことが、Marqコンシェルジュのサービスの発端になっているという。
例えば、50坪、100坪程度の小規模なスペースを短期間だけ借りたい、1~2か月だけ利用したいといった相談は、一般的な物流施設の賃貸スキームでは対応しにくい。そうした場合には、Marqの施設のテナント企業を中心に、パートナー企業を紹介する。
重要なのは、表面的な要望ではなく、テナントの事業のボトルネックになっている潜在的な課題をくみとることだ。テナントとのコミュニケーションの中で本質的な目的を明確にし、選択肢を提示する。単純に機器や設備を紹介するといった回答ではなく、その解決策を一緒に考えるのがコンシェルジュの業務というわけだ。
場合によっては、施工会社やマテハン・空調設備のメーカーなどを紹介することもあり、パートナーのネットワークは400社にも上る。紹介に際して、手数料などを取ることはないため、安心して相談できるのも大きな魅力だ。
専任の「コンシェルジュ担当」がいるわけではないのも大きな特徴で、営業担当、施設管理担当など、現場で相談を受けた社員全員がコンシェルジュという考え方で動いている。
飯田氏は「フロントにいる全員が、顧客の事業成長を考える。それがコンシェルジュの考え方」と語る。
■顧客目線が感じた「貸してから始まる」関係
Marqコンシェルジュの考え方を象徴するのが、「Marq 境古河 1」に入居しているオオサカデリバリー(本社:大阪市浪速区)の事例だ。
オオサカデリバリーの木田晴孝社長は、これまでの物流施設の賃貸に対する印象を「従来の大家さんとは、入居後は業務連絡以外の話をすることはなく、それが普通だと思っていた」と振り返る。
施設を借り、契約を結ぶ。あとは入居企業が自ら物流事業を運営していく。それが木田社長にとって物流不動産会社との一般的な関係だった。しかし、Marqとの関係は異なっていたという。
オオサカデリバリーに伴走し続けている野中氏は、大手物流企業で18年間勤務し、支店長も経験した。物流現場を知る立場から、「業界を変えるには物流を支える環境そのものを変える必要がある」という思いで2020年、日本GLPへ転職してきた。
一方の木田社長も、「多層下請け構造など、排他的な物流業界をもっとオープンにしよう」と、同世代の物流関係者らと交流の場をつくり、物流業界の課題について議論していた。
物流業界の変革が必要だと考えていた両者だったが、木田社長と野中氏が出会った当時、オオサカデリバリーは関東にも拠点を持っており、新たな物流施設への移転には慎重だった。最終的に入居を決めた理由について、木田社長は施設のスペックではなく「人」を挙げる。「倉庫スペックでは、正直、他社との差はあまり感じなかった。ただ、話をしているうちに、Marqの担当者は物流現場のことをよく分かっていて、現場の課題の解決に向けて、同じ目線で話してくれたのが良かった」と語る。
入居後もその印象が変わることはなく、荷量が増えて専有部内の保管スペースが不足した際には、空きスペースの一次的な融通などMarq側が実務的な解決策を検討。これを木田社長は「従来の不動産会社とは思えないスピード感と泥臭さ」と表現する。
さらに、Marqとの関係を象徴する言葉として木田社長が表現したのは「借りてからスタートするという感覚」だ。「今までの不動産会社のイメージは貸して終了のところ、Marqは貸してからスタートする。その感覚がひしひしと伝わってきた」と、Marqコンシェルジュの寄り添う姿勢に、満足気な表情を見せた。
■稼働前に800坪から2600坪へ
オオサカデリバリーとMarqの関係は、オオサカデリバリーが茨城県古河市に構えていた倉庫を「Marq 境古河 1」(2025年5月竣工)へ移転させ、同時に増床させるという大きな展開につながる。
移転を決めた当初、オオサカデリバリーが想定していた利用面積は800坪(約2600m2)。2026年5月の稼働を予定していた。
ところが、Marq側からの紹介などを通じて新たな案件が相次いだ結果、早々に800坪は満床になり、新たなスペースが必要になった。
木田社長は当時を「800坪を運用するはずが、Marqコンシェルジュからの顧客紹介などで1800坪でも収まりきらないほどになり、当初の2階への入居予定から、3・4階のさらに広いスペースへの入居へと切り替えた」と振り返る。
急激な荷量増加に対しMarq側は、通常であれば時間を要する増床の社内稟議を、わずか1週間ほどで進めた。その間並行して、専有部のレイアウトやマテハン機器の斡旋など、オオサカデリバリーの本格稼働に向けたサポートに伴走している。
野中氏は「『Marq 境古河 1』に最初に入居いただいたことで、大きな相乗効果が生まれている」と説明する。オオサカデリバリーと事業上のかかわりが深い企業の入居が決まったほか、入居企業間で庫内オペレーションの一部を共有することでの効率化やコスト削減を実現できる点が評価され、入居を決めた企業もいたという。企業同士の連携による付加価値が生まれ、施設全体の活性化にも寄与している。
飯田氏は、こうしたケースを「コンシェルジュのかかわり方として象徴的」と捉え、「度合いの濃淡はあれど、倉庫を貸して終わりではなく、その後のサポートまでやる。その後のビジネス展開にいかにフィットしていくかが重要」と信念を語った。
物流施設への入居をゴールにするのではなく、入居企業の成長に合わせて施設側も動く。800坪で始まった計画が、稼働前から2600坪(約8600m2)規模へ膨らんだ事例は、Marqコンシェルジュが目指す「貸してから始まる」関係を象徴している。
■「コンシェルジュに相談すれば解決する」世界へ
最近増えているのが、「緊急に荷物を預けたい」という相談だという。賃料や人件費、トラック輸送費などが上昇する中、3PL企業も従来のように余剰スペースを抱えておくことが難しくなっている。一方、荷主企業側では、物流機能を外部にアウトソーシングしたいというニーズが高まっている。
こうした相談に対し、Marqコンシェルジュは単に空いている物流施設や事業者を紹介するだけではなく、物流事業者や荷主企業が置かれている状況や今後の事業展開まで踏まえ、どのような選択肢が適しているのかを一緒に考える。
自動化の悩みも同じだ。設備を導入すること自体を目的とするのではなく、「何を解決したいのか」「どの作業を効率化したいのか」まで掘り下げる。電力容量やレイアウトといった施設側の条件を確認したうえで、必要に応じてマテハンメーカーなどのパートナーにつなぎ、最適な方法を共に探っていく。
飯田氏は、「実務の中で見えてきた課題、それを解決するソリューションを一緒につくろう、というスタンスがコンシェルジュ」と説明する。
その背景には、物流施設の価値を「建物」だけで捉えないという考え方がある。
飯田氏は、「物流コスト全体において、保管費の割合はそう高くない。他の領域まで踏み込むことで、顧客の利益へとつなげる」と話す。施設そのもののスペックだけでなく、入居企業の事業成長を支援することで、施設が生み出す価値を高めようとしている。
一方、木田社長が物流業界に対して感じてきたのは、「少し変えれば改善できるのに」という部分の多さだ。
例えば、現場では派遣スタッフに十分な作業説明をしないまま業務を任せ、ミスや非効率を招くケースもあるという。木田社長は、そうした当たり前の改善さえ進んでいない状況に長らく疑問を感じてきた。
だからこそMarqにはシンパシーを感じ、「不動産会社としても入居企業をもうけさせたほうがいいに決まっている。当たり前のことだが、Marqはその当たり前のために、テナントの利益に一緒に向き合ってくれる」と語る。
入居企業の利益や成長を自分たちの課題として捉え、同じ方向を向いて考える。物流施設を「貸して終わり」にせず、物流企業が抱える課題に向き合い、共に解決策を見つけながら事業成長を支える。それが、Marqコンシェルジュが描く「倉庫+α」の価値であり、物流不動産の新たな役割なのだ。
(取材・執筆 鳥羽啓太 稲福祐子)

左から
飯田一樹 日本GLP営業開発部ヴァイスプレジデント
木田晴孝 オオサカデリバリー社長
野中大介 日本GLP営業開発部 兼 共創事業部ヴァイスプレジデント ソリューション&アライアンス推進
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