日本GLP(Marq)は、リスクが高いと言われてきた全館冷凍冷蔵のマルチテナント型物流施設を完成させ満床竣工を実現、業界をリードしている。なぜ冷凍冷蔵分野に注力するのか。どんな思いで、テナント企業の事業成長に伴走しているのか。シリーズ第2回は、冷凍冷蔵の専門チームをつくり社内外を巻き込んできた営業開発部の駒俊志プリンシパルと草原洵也ヴァイスプレジデントに話を聞くとともに、「Marq 神戸住吉浜」で水間急配の冷凍冷蔵への新規参入をサポートした米田直人ヴァイスプレジデントの伴走ぶりを紹介する。(全4回)
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物流最前線/物流業界の応援団であり続ける 日本GLP、新ブランドMarq始動 2026年09月01日 |
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| シリーズ GLPはMarqへ | ||
| (1)顧客の事業成長に伴走するMarqコンシェルジュ | (2)進化を続けるMarqの冷凍冷蔵 | |
| (3)顧客の成功から逆算する施設開発 | ||
■設計もコスト計算も初めは手探り
2025年3月、兵庫県神戸市で国内最大級の全館冷凍冷蔵、可変温度帯仕様のマルチテナント型物流施設「Marq 神戸住吉浜」(5階建て、約4.6万m2)が満床で竣工した。
神奈川県川崎市で「Marq 川崎 2」(5階建て、約20.5万m2)が2027年8月に竣工を予定するなど、収容能力は急拡大しており、日本GLPの冷凍冷蔵施設の開発実績は2026年8月現在、36棟、延べ43.6万m2に上る。
近年の日本GLPは、ALFALINKのような大規模多機能型物流施設にとどまらず、「冷凍冷蔵にも強い」というインパクトを与えてきた。
日本GLPが事業領域の拡大を目指し、社内で冷凍冷蔵の専門チームを立ち上げたのは2017年のこと。当時、社内で食品業界を開拓していた駒氏が、新規事業として冷凍冷蔵施設開発にアサインされたことが発端だった。
ところが意外にも、2017年から最初の3年間は学ぶばかりだったという。
駒氏によると、冷蔵倉庫を求める企業や一部の物流企業には好意的に反応してもらえたが、興味を持ってもらえても、「消費地に近くないと」「店舗配置の中心点で」「バースは最大限多く必要」など顧客の求める条件は常温倉庫以上に厳しく、ただちに土地を見つけて希望に応えることは難しかった。
また、倉庫会社が自前で自社用倉庫を建設する方法が定番の冷凍倉庫については、デベロッパーが冷凍冷蔵設備を備えた倉庫を建設し賃貸で貸そうとする発想は、当時なかなか浸透しなかった。
さらに草原氏は、「そもそも社内に冷凍冷蔵施設の設計ノウハウが、まだ全然なかった」と回顧する。
特に重要なのが断熱技術で、例えば、築造してウレタンを吹き付ける方法と、後から断熱パネルで仕切る方法とでは一長一短あり、どちらが適しているか、安く仕上がるかなど、そのつど判断が求められる。
冷凍冷蔵の難しさについて草原氏は、「防熱会社や設備会社を駒と何社も訪ねて、この設計は成立するか、どうすればコストを抑えられるかなど教えてもらった。あの時の経験が営業部自ら専門性を身に付けることにつながり、Marqの強みになっている」と語る。
駒氏も「冷凍冷蔵の専門知識を持った営業部隊がいるデベロッパーは、他にないのでは」と自信を見せ、「あの頃は勉強の連続。工事費のコストに関しても営業部隊が確認、そこは金融機関出身の草原が細かく確認し、助けられた」と笑う。
努力が実り、常温用マルチテナント型物流施設の1階に冷凍冷蔵設備を導入する「後付け型」の事例や、BTS型での開発事例が増えるにつれて、需要を確信。知見も蓄積し、大規模な計画へと発展していった。
■切迫需要をマルチ型で吸収
冷凍冷蔵施設は現在、需要は増加しているのに収容能力の絶対量が不足している。
その理由として草原氏は、コロナ禍を挙げる。外出控えから内食・中食が定着し、一般家庭で冷凍食品の購入が爆発的に急増。それに伴いECも急拡大した。荷主企業や物流事業者など「需要側」から見れば、既存の冷凍冷蔵倉庫はいっぱいで、すぐに借りられる所が簡単に見つからない。
また駒氏は「供給側」の立場から、高額な建設費、建築資材の高騰などハードルの高さを指摘する。既存の冷凍冷蔵倉庫の老朽化も課題で、建て替えたくても今ある荷物を工事期間中に預けられる倉庫がないため進んでいない。
全国を見ると、築40年が建て替えを意識する目安とされるが、40年超の冷蔵倉庫が3割以上を占め、東京、神奈川、千葉ほか大阪や兵庫も老朽化が顕著になっている。
そこでMarqが一石を投じたのが、あらかじめ全館に冷凍冷蔵設備を備え、常温倉庫と同じように賃貸できるマルチテナント型の提案だ。
一般的に、冷凍冷蔵倉庫は冷凍機械や断熱材などの設備投資が高額になるため、入居者は10年など長期間の契約を求められることが多い。テナント側で投資・設置した場合、退去時に原状回復を求められ、その費用もかさむ。
こうした事情に対しMarqは、「入居者の初期投資を抑制」「退去時の原状回復工事は不要」「2~3年程度の短期間契約も可能」という答えを出した。
加えて、10℃から-25℃まで設定可能、小規模区画にも対応といった「柔軟性」。脱フロンに向けた自然冷媒の採用や太陽光発電の設置など「環境配慮」。これらもMarqが提案する冷凍冷蔵施設のコンセプトとして掲げた。
その使い勝手の良さが需要と合致。冷凍食品やECニーズ拡大の受け皿になると同時に、狙った通り、竣工前から「老朽化した倉庫を建て替える間だけ借りたい。もう何年も荷物の逃がし先を探していた」と入居が決まるケースが出てきた。
駒氏は言う。「業界の標準仕様となる物件を目指し、培った専門性を生かして柔軟に対応できる設計を両立させたことで、マルチテナント型は一気に普及したと思う」。
■荷物ゼロでも入居決断の理由
そんな中、「Marq 神戸住吉浜」では、特異なケースが生まれた。冷凍冷蔵事業の経験がないにもかかわらず入居を決断し、新規事業を開始した水間急配だ。
水間急配は、大阪市に本社を置く、小売店向けの店舗配送などをメインとする運送会社。横田洋一社長の「2024年問題やドライバーの高齢化による人員確保と輸送力低下が課題。このままでは売上が減少する。何か売上の安定化につながる新規事業に挑戦したい」という悩みが、米田氏のコンシェルジュ魂に響いた。
米田氏と対話するうち横田社長は、当初は考えもしなかった加工食品配送のための冷凍冷蔵倉庫運営という突破口を見つけた。それに応えて米田氏は次々に手を打つ。
特に効果があったのは、水間急配とMarqで共催した竣工内覧会だ。Marqのメルマガを通じ集客したところ、物件の珍しさもあって来場者は約80社・200人と大盛況。
「荷物の預け先を探している」「すぐに引き受けてもらえるのか」と見学に来た企業を米田氏が「それなら水間急配へ」と次々引き合わせるうち、すぐに5社(約5000m2)の案件を受託、満床稼働を達成した。参入決断から約半年のスピード展開だったという。
当時のことを水間急配の横田社長は「自前の倉庫で冷凍冷蔵事業に参入するなんてハードルが高くて土台無理な話だが、米田さんと話すうちに、賃貸でなら新たに事業運営できるなと思えた」とコメント。「最初は預かる荷物のあてもなかったが、内覧会来場者を中心にコンシェルジュから多数の案件紹介があり、実際に20社から問い合わせを得たことで、満床稼働を実現することができた。Marqは当社の事業成長に欠かすことのできないパートナーだ」と感謝している。
Marqコンシェルジュは日々、「繁忙期でトラックが足りない」「あふれた荷物を短期間、預かってくれる所はないか」といった問い合わせを受ける。逆に「閑散期で倉庫が空いている」「仕事が欲しい」といった相談も受ける。こうした企業どうしをつないできた豊富な経験と知識、フットワークの軽さが、冷凍冷蔵分野でも生きている。
“ド営業タイプ”と評される米田氏は、「顧客にとっては入居がスタート。『Marqと付き合っていて良かった』と思ってもらいたくて、入居後も営業代行のような気持ちで伴走を続けている。ハード面で他社から倉庫の図面をまねされることがあっても、ここまでソフト面で支援するのはMarqだけ」と胸を張った。
■冷凍冷蔵施設は社会インフラ
冷凍食品の利用は、一般家庭はもちろんのこと外食チェーン、学校、病院、高齢者介護施設など幅広く浸透した。品質の劣化や食中毒を防ぎ、食品ロス削減を可能にするためにも、欠かせないものとなっている。
2017年に専門チームを立ち上げてから10年弱。冷凍冷蔵事業に賭けた思いを、駒氏はこう語る。「冷凍冷蔵施設は食を支えるインフラ。Marqは高い専門性をもって陰ながら社会を支えていると自負している。今後は、流通型、保管型、後付け型どんなタイプを望まれても柔軟に対応できるよう、また湾岸エリアでも内陸エリアでも立地の特性を見ながら、全方位型の戦略で開発に臨みたい」。
草原氏もまた、思いは強い。「常温以上に冷凍冷蔵施設の労働環境は過酷で、採用も厳しい。コールドチェーンを支える仕事に携わる人たちが尊敬され、若い人材が入ってくるよう、業界を盛り上げていきたい」。
人手不足が深刻化する中、労働環境を改善するには、今後ますます冷凍冷蔵施設の「自動化」や「省人化」が課題となる。
ただし、断熱壁で綿密に仕切るほど温度管理はしやすい半面、もし将来、自動倉庫を導入したりAGVやAMRを走らせたりしたいと入居企業の希望が変化した時には、断熱壁がその障壁となってしまう可能性がある。
ほかにも、複数の温度帯を組み合わせたいケースなど、画一的な設計は通用せず、駒氏と草原氏は「日々、ブラッシュアップが必要」と口をそろえる。日々進化を追求するMarqの冷凍冷蔵施設の最新型が「Marq 川崎 2」だ。「Marq 神戸住吉浜」に入居するテナントの声を参考に、常温と冷凍、冷蔵の3温度帯の区画を備え、新規テナントの入居にもつながった。
Marqの成功に追随するかのように、いま多様なデベロッパーが冷凍冷蔵施設の開発に参入し始めている。
しかし駒氏は「Marqは根底に顧客と共に成長したいという考えを持っている。他社が似た施設をつくったとしても、コンシェルジュを通じて顧客の利益を生み出す結果までは出せないだろう」と動じない。
さらに草原氏は「実績ができたのは『人』がいるから」。米田氏も「入居後もしっかり伴走する。実績も十分ある」。
3人は「冷凍冷蔵物流・食品業界の応援団でありたい」と話している。
(取材・執筆 稲福祐子 山内公雄)

左から
米田直人 日本GLP営業開発部ヴァイスプレジデント
駒 俊志 日本GLP営業開発部プリンシパル
草原洵也 日本GLP営業開発部ヴァイスプレジデント
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