イオン／前期「業績等の概要」と「対処すべき課題」について

イオン（株）の平成１４年２月期の有価証券報告書における「業績等の概要」と「対処すべき課題」を掲載します。
■業績等の概要
(1) 業績
当連結会計年度は、当社グループ（当社、連結子会社及び持分法適用会社）は世界に通用する新しい企業集団として生まれ変わるために、平成13年８月21日をもって当社の社名を「ジャスコ株式会社」から「イオン株式会社」に改め、グループの名称を「イオン」としました。
イオンブランドの確立に向け、グループ各社が一体となった「イオンフェスティバル」を開催する一方、企業・業態を超えて展開するプライベートブランドの商品開発やナショナルブランドの商品調達の分野でグループシナジーを発揮したスケールメリットを追求してまいりました。
更に選択と集中の観点から、引き続き不採算事業の整理統合など事業構造の改革を推進してまいりました。以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高２兆7 269億８百万円（前期比106.5％）、経常利益1 147億59百万円（前期比131.3％）となったものの、退職給付会計基準変更時差異680億49百万円の一括費用処理等により、当期純損失は161億39百万円となりました。
事業の種類別セグメントの業績は次のとおりであります。
1.総合小売事業
主力となるGMS事業では、当社はどこにも勝る継続的な安さを追求するエブリデー・ロープライス政策を推進し、業界における低価格化のリーダーシップを発揮してまいりました。
また、収益構造の改革に向けて、競争力が低下した６店舗の閉鎖を行うとともに、大店立地法にいち早く対応し、総合スーパー（GMS）のジャスコ７店舗、メガマート３店舗、マックスバリュ１店舗の計11店舗を出店いたしました。
なお、新規開設店及び店舗リニューアル等に要した設備投資総額は約650億円であり、これらの資金は自己資金等により調達いたしました。
また、「九州ジャスコ㈱」が既存店11店舗の活性化を実施するとともに昨年度開店した３店舗の収益改善等により増収増益を達成いたしました。
スーパーマーケット事業では、グループ各社間での店舗の移管と再編を進め、オペレーションの効率化を促進いたしました。当社の支援のもとで再建を進めてきた「（株）ヤオハン」は順調に業績を回復させ、平成14年２月、更生計画認可から２年という短期間で更生手続を終結いたしました。
これを機に同社は平成14年３月、「マックスバリュ東海（株）」に社名変更し、名実ともにイオンのスーパーマーケット事業の一翼を担うこととなりました。
コンビニエンスストアの「ミニストップ（株）」は111店舗を出店する一方、66店舗を閉店し、店舗の改廃を進めました。また、商品情報を営業活動に役立てる第４次ストアシステムの導入を完了させるとともに一部のFCパッケージ変更により業界でも優位に立てるロイヤルティ率を実現し、今後の出店拡大に向けた体制を整えました。
海外では、「JAYA JUSCO STORES BHD.」が価格競争力の強化やカード会員への特典の充実によるロイヤルカスタマーづくりを進め、好調に推移いたしました。「JUSCO STORES(HONG KONG)CO. LTD.」がベストプライスの拡大など積極的な営業展開で順調に業績を伸ばしております。
以上の結果、総合小売事業の営業収益は２兆2 391億20百万円（前期比106.2％）、営業利益は468億53百万円（前期比128.9％）と増収増益を達成いたしました。
2.専門店事業
米国では同時多発テロ以降、消費環境が厳しくなる中「THE TALBOTS INC.」は経費削減と在庫管理を徹底する一方、新しい商品ラインの導入や積極的な新規出店によって増収増益を達成いたしました。期末店舗数は78店舗増の800店舗となっております。
以上の結果、専門店事業の営業収益は4 389億37百万円（前期比106.6％）、営業利益は308億円（前期比153.4％）と増収増益を達成いたしました。
3.ディベロッパー事業
「イオンモール㈱（旧社名イオン興産（株））」は、本格的商業ディベロッパーとしてショッピングセンター（SC）開発力を更に強化し、当連結会計年度は新居浜(愛媛県)、東浦(愛知県)、大和(神奈川県)に新たなSCを開設いたしました。いずれもそれぞれの地域における最大規模の本格的複合SCとして順調に推移しております。
以上の結果、ディベロッパー事業の営業収益は395億74百万円(前期比119.5％)、営業利益103億20百万円(前期比129.0％)と増収増益を達成いたしました。
4.サービス等事業
金融サービス事業の「イオンクレジットサービス（株）」は、100万人のカード会員の増加(累計では980万人)、イオンフェスティバル等のグループ販売促進活動とのタイアップ、また、加盟店とCDネットワークの強化を通じたカード利用の促進などにより取扱高を順調に拡大いたしました。同社の連結子会社である「AEON THANA SINSAP(THAILAND)PLC.」は平成13年12月11日付で株式公開を果たしました。また、アミューズメント事業の「㈱イオンファンタジー」も平成14年２月13日付でジャスダック市場に株式を公開いたしました。
以上の結果、サービス等事業の営業収益は4 523億81百万円(前期比114.5％)、営業利益は313億30百万円(前期比114.3％)と増収増益を達成いたしました。
この他に、再建に向けた企業支援として、「（株）マイカル」の経営破綻が地域経済や雇用などに与える社会的影響に鑑み、当社は平成13年11月に同社の再建支援を表明いたしました。また、「㈱亀屋みなみチェーン」が、平成13年12月に青森地方裁判所より再生手続廃止の決定を受けたことから、できる限り多くの雇用を守るため「マックスバリュ東北㈱」が同社より13店舗を譲受することといたしました。更に、平成14年２月26日、当社並びに「九州ジャスコ（株）」は、地域のお客さまの利便性と雇用の確保のため、民事再生手続中の「㈱壽屋」の一部店舗の営業を譲受することを決定いたしました。
環境保全・社会貢献活動といたしましては、社名変更を機に、毎月11日を「イオン・デー」とし、「エコロジー(環境)」と「ローカル(地域還元)」をテーマに地域貢献活動を行う日といたしました。その一環として、国土交通省とタイアップし、店舗周辺の一般国道でごみ収集や植樹帯の清掃などを共同で行う「イオン・クリーンロード」をスタートいたしました。また、次代を担う子供たちに環境学習や実践活動の場を提供する「イオンこどもエコクラブ」において、(財)イオン環境財団が実施する「里地・里山保全活動」にも参加していただき、全国で170クラブ、3 062名までの輪を広げることができました。
所在地別セグメントの業績は、日本セグメントが営業収益２兆5 885億１百万円(前期比105.4％)、営業利益838億51百万円(前期比127.1％)、北米セグメントが営業収益2 099億14百万円(前期比114.2％)、営業利益261億93百万円(前期比132.7％)、その他の地域では営業収益1 397億28百万円(前期比136.4％)、営業利益91億81百万円(前期比144.8％)となっております。
なお、上記の金額及びこれ以降に記載している売上高、仕入高等には消費税等は含まれておりません。
■対処すべき課題
1.持ち株会社体制への移行と経営資源の最適化
イオン全体の企業価値を高めるために、持ち株会社体制への移行を柱とした新しいグループ経営体制の構築に向けてスタートを切りました。今後は、新しいグループ経営体制のもと経営資源の最適化を目指し、財務、人事、IT、店舗開発などの各分野においてイオン全体を管理する体制を構築してまいります。
併せて、経営の透明性を高めるとともにイオンの経営理念を一層具現化するため、取締役会の諮問機関として、「環境社会貢献委員会」や「お客様諮問委員会」の設置の準備に入るなど、外部の方々の意見・知恵を経営に活かしてまいります。
同時に、事業別マネジメントの確立に向けて業務執行における責任と権限の明確化を図り、執行スピードを高めてまいります。その一環として、当連結会計年度は当社の小売部門とディベロッパー部門の採算性を明確化するため、それぞれの組織を区分いたしました。今後、小売・ディベロッパーともに専門性をより一層追求し、独立した一つのビジネスユニットとして改革を進めてまいります。
2.財務体質の強化
イオンは、連結財務体質の強化のために有利子負債の削減を進めます。そのために、不採算事業の整理を積極的に行う一方、事業の戦略上の位置付けや採算性を尺度に投資を厳選してまいります。また、在庫の削減により営業キャッシュ・フローの拡大を進めてまいります。
3.ローコスト構造への転換
グローバル競争を前提にしたローコスト構造への転換を進めるため、直取引、自主開発商品、海外ダイレクトソーシング、グループ調達体制の整備などの改革を更に推進し、世界水準の商品原価の実現を目指してまいります。
また、ITを駆使してあらゆる業務プロセスを改革し、オペレーションコストの低減に努めます。更に、設備費についてもイオン全体の需要を集約したうえで、当社が参加しているWWRE(ワールド・ワイド・リテール・エクスチェンジ)のオークションを一層活用し資材の調達コストを削減してまいります。