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公取委/「郵政民営化に伴う郵便事業と競争政策上の問題点」公表、信書便の緩和提言

2006年04月24日/未分類

公正取引委員会は、日本郵政公社が、特例的に、国際物流事業への進出が認められた国際エクスプレス事業などの郵便ネットワークを利用した事業に限って検討を行い、「郵政民営化関連法律の施行に伴う郵便事業と競争政策上の問題点について」(案)を作成・公表し、競争政策の観点から、信書便事業における新規参入障壁を実質的に競争業者が参入できる水準まで引き下げるとともに、郵便ネットワークを宅配便事業者や国際エクスプレス事業者に開放することが望ましいとしている。

「郵政民営化関連法律の施行に伴う郵便事業と競争政策上の問題点について」(案)は下記アドレスを参照。
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/06.april/06042101-2.pdf

また、意見募集を5月22日までに行っている。

「郵政民営化関連法律の施行に伴う郵便事業と競争政策上の問題点」(概要)

郵政民営化に伴い、競争関係にある他の事業者と同じ規制の適用等が段階的に行われることは、事業者間のイコールフッティング確保の観点から、大きな前進である。また、日本郵政公社及び民営化会社は、民営化の進展度合いに応じて業務分野の拡大が認められるスキームとなっていることから、競合関係となる事業者との間でイコールフッティングを確保することが非常に重要な問題となる。

日本郵政公社は、平成18年4月以降国際物流事業への進出が認められる予定となっており、その第一歩として、日本郵政公社は、同年4月17日に全日本空輸(株)等との合弁会社の貨物機運航会社への出資について総務大臣の認可を受けている。

このため、報告書では、当面の業務拡大が予定されている国際エクスプレス事業などの郵便ネットワークを利用した事業に限って検討を行った。

1.郵政民営化後の競争の枠組み
郵政民営化に伴う郵便法改正により、小包郵便及び速達郵便は、郵便法上の「郵便事業」から除外され、日本郵政公社に課せられているユニバーサルサービス提供義務の対象ではなくなり、民間事業者と同様に貨物自動車運送事業法及び貨物利用運送事業法(以下「貨物運送法令」という。)の適用を受けることになる。

また、日本郵政公社は、総務大臣の認可を受けることによって国際物流への進出が可能となり、総務大臣は、日本郵政公社による当該認可の申請があった場合、当該認可に当たって郵政民営化委員会の意見を聴かなければならないこととされている。本プロセスは、同業他社の利益を不当に害することのないよう確保するという観点から規定されている。

一方、一般信書便事業は、参入要件が厳しいこと等から、日本郵政公社の独占領域となっている。

2.郵便ネットワークの実態と範囲の経済
日本郵政公社の郵便ネットワークは、信書が約7割を占める通常郵便を主体とし(収益の約8割、通数の約9割を占める。)、小包郵便物及び国際郵便の事業にも共同で利用されている。

①独占領域の事業と②競争分野の事業を1社で行う場合には、それぞれの事業分野を別々の事業主体が独立して実施した場合と比べ、事業に要する土地、建物、集配車両等の取得費や維持運用費を共用できるため、共通費用を節約することができる。こうしたコスト節約のメリットは「範囲の経済」と呼ばれる。

共通費用の割り振りについては、大きく分けて、①スタンドアローンコスト方式(ひとつの事業のみを単独で行う際に必要とする費用)、②増分費用方式(1つの事業を行っていることを前提に2つ目の事業を行う際に追加的に発生する費用)、③ABC(Activitybased Costing/活動基準原価計算)方式(共通費用を、その費用の発生源となっている事業活動を特定して、それぞれの事業に配賦する方式)の3とおりの考え方が存在する。

3.独占領域を有する事業者の反競争的行為を防止するための制度設計
(1)信書便事業における参入障壁の実質的に参入可能な水準への引き下げ
日本郵政公社は、現在、独占領域を有していることから得られる範囲の経済を専有している。宅配便事業者や国際エクスプレス事業者は、日本郵政公社のように、信書便が相当部分を占める通常郵便のネットワークを構築し、範囲の経済を活用して対抗することはできない。

このため、競争政策の観点からは、一般信書便事業への参入要件として求めているあまねく公平なサービス提供義務を撤廃することによって、同事業分野での新規参入を促すとともに、独占領域の範囲の経済を専有している状態を解消することによって、競争分野におけるイコールフッティングの確保が図られるようにすることが最も望ましい。

一方、ユニバーサルサービスの維持と新規参入による競争促進の両立を可能とするため、ユニバーサルサービス基金や、国からの補助金及び税金免除といった仕組みが求められる。こうした仕組みは、英国、フランス、ドイツなどで既に導入されている。

(2)郵便ネットワークの開放
競争政策の観点からは、信書便事業における新規参入障壁を実質的に競争業者が参入できる水準まで引き下げるとともに、郵便ネットワークを宅配便事業者や国際エクスプレス事業者に開放することが望ましい。

郵便ネットワークの開放が行われれば、現在、日本郵政公社が専有している範囲の経済をこれらの競争業者も等しく享受できるようになる。さらに、信書便事業の参入障壁の実質的引き下げが行われる場合には、郵便ネットワークを信書便事業者が活用できるようにすることによって、自社のみで集配ネットワーク等の構築が困難な事業者の参入を円滑化し、信書便事業分野における競争活性化にも寄与することが可能となる。

ドイツ及び英国においては、既にこうした措置が講じられている。

郵便ネットワークを競争業者に開放する際には、競争事業者が必要とする部分を利用できるようにするため、収集や運送、配達といった業務区分ごとに、日本郵政公社の利用負担額と等しい接続料金を設定する仕組みを整備することが必要である。

4.独占禁止法上の問題点等の検討
実質的に新規参入を可能とする制度設計や郵便ネットワークの開放が行われた場合であっても、少なくとも当分の間は日本郵政公社が全国的な郵便ネットワークを持つドミナント事業者であり続けることが想定される。

このため、不公正な取引方法によって、市場での公正な競争が阻害されるおそれがある場合や、競争業者を市場から排除し、又は他の事業者を支配することによって、競争を実質的に制限する場合には、独占禁止法に違反することとなる。

信書便事業の参入規制の実質的な緩和又は郵便ネットワークの開放のいずれの措置も講じない場合には、独占領域を有することによる範囲の経済の専有が解消されず、競争業者とのイコールフッティングを欠くことになる。

実際に、ドイツにおいてはドイツにおける郵便事業体であるドイツポストが、競争分野において、市場支配的事業者による略奪的価格設定を設定し、競争業者を排除したことによって、EC競争法違反とされた。

また、フランスにおいては、フランスにおける郵便事業体であるラ・ポストが、物流事業を行う関係事業者に対して、郵便ネットワークを安価に利用させていたことについて、EC競争法違反に問われている。

さらに、カナダにおいても、同様の事案について現在係争中である。

このため、独占領域において専有している範囲の経済を用いて、競争分野において反競争的行為が行われないよう、特に独占禁止法上の私的独占及び不当廉売等の観点から監視を行っていくことが必要である。

(1)原価割れ販売基準の検討
通常の事業については、複数の事業を営むことによる範囲の経済を活用することによって競争上優位に立つことも正当なビジネスモデルであり、各事業者の創意工夫の範囲内である。

これに対して、独占領域を有する事業者が、独占領域において専有している範囲の経済を活用して、競争分野で事業活動を行う行為については、競争業者が同じビジネスモデルを採ることによって対抗することができないことからイコールフッティングを欠くことになる。

また、範囲の経済が大きな場合には、競争業者がいかに効率的な事業を行ったとしても対抗することはできず、市場からの退出を余儀なくされ、実質的な競争制限に至ることが懸念される。

したがって、独占禁止法上の原価割れの判断基準については、個別事案ごとに検討を行うことが必要であるが、一般的な考え方としては、独占領域を有する事業者が、専有している範囲の経済を用いて競争分野において行う事業については、スタンドアローンコスト方式で原価の判断を行うことが適切である。

こうした考え方に基づけば、仮に、日本郵政公社が子会社から国際物流業務を受託する場合、受託業務については基本的にスタンドアローンコスト方式に基づいて受託料金の算定を行うことが望ましい。

公正取引委員会としても、信書便事業の参入規制の実質的な緩和及び郵便ネットワークの開放といった措置によって、日本郵政公社が独占領域を有することによる反競争的行為を抑止するための制度的対応が行われない場合には、今後、こうした法運用の具体化に向けて、専門家の意見も聞きながらスタンドアローンコスト算定方法の明確化を行っていくものとする。

(2)我が国におけるステート・エイド規制について
国家の補助により、特定の事業者のみが競争上優位となり、公正な競争が歪められることは、競争政策上好ましくない。

例えば、ある事業者が、ステート・エイドを受けている事業分野とは別の事業分野において、ステート・エイドにより得た資金等を使って、著しい原価割れ販売により競争業者の事業活動を困難にする行為、競争業者を市場から排除する行為や新規参入を阻害する行為は、不当廉売や私的独占に該当し得るものである。

経済構造改革が着実に進められ、公的機関の民営化や公益事業分野の自由化が拡大されていく中で、これまで「官業による民業の圧迫」として問題とされながら、明確なルールが存在しなかったために適切な問題解決が必ずしも行われてこなかった分野が今後益々増大することを踏まえ、公正取引委員会としては、関係行政機関が特定の政策的必要性から行う行政措置等について、当該措置等が競争政策上の問題を生じさせないよう、引き続き、関係行政機関との調整を行っていくものとする。

さらに、国家補助等、通常の市場条件では得られない便益を利用して行う廉売等の行為に対する独占禁止法の運用を具体化するため、必要に応じ専門家の意見も聞きながら、公的資産の承継や公的特権によって得られる補助等を受けている場合の原価算定基準の明確化を行っていくものとする。

また、競争歪曲的な公的補助排除の実効性を確保するための制度の在り方についても、今後同種の問題が与える社会的な影響や行政コスト等を勘案しながら検討を行っていくことが必要である。

(3)日本郵政公社の公的特権とイコールフッティングの確保
郵政民営化に伴う制度変更により、国内貨物集配の分野、国際書状・貨物集配(非信書)の分野における郵便事業会社と民間事業者の競争は、同じ規制の下で行われることとなる。

しかしながら、現状では、①郵便物の集配のために利用される車両に関する駐車禁止や車両通行止め規制などの道路交通法上の交通規制の適用免除、②郵便事業の利用者が転居先への郵便物の転送を希望した場合には、転居した際に郵便局に転居先を連絡する郵便法の仕組み、③郵便物の輸出入については、簡易な手続が認められている関税法の仕組み、といった公的特権が存在するこうした公的特権が、郵政民営化後に、民間事業者と同様に貨物運送法令の適用を受けることとなるゆうパックや冊子小包郵便事業はもとより、今後進出が予定されている国際物流事業において、日本郵政公社に優位に働く場合には、イコールフッティングの観点から問題があるため、競争業者とのイコールフッティングが確保されるような措置を講ずることが求められる。

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