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財務省/ITと国際物流に関する懇談会報告書-国際物流システムの変化への対応-(抜粋)

2001年07月19日/未分類

財務省はITと国際物流に関する懇談会による「-国際物流システムの変化への対応-」の報告書をまとめた。下記は報告書の今後の取り組みについてのみ抜粋した。
第五章 今後の我が国の行政当局の取組みについて
1.全体最適な国際物流の実現に向けたグランドデサインの策定
(IT化を進める上でのグランドデザインの必要性)
 国境を超えた貿易取引には、輸出入・港湾関係の様々な手続きが必要であり多くの行政当局が関与することとなる。既に述べたように、各行政当局においてシステム化が進んでおり、平成14年度を目途に関係当局全てのシステムについてNACCSを中心とした連携等が計画され、ワンストップ化が実現されることとなる。しかしながら、IT化のメリットを十二分に発現させるには、各行政当局のシステムを単に連携させるだけでは十分ではない。電子政府の実現とは、行政当局の数だけ「電子政府」が作られるのではなく、システム上一つのウィンドウを通じて全ての「電子政府」が有機的に連携され一つの電子政府が形成されることを意味するのである。
 理想的な国際物流の実現のためには、輸出入・港湾諸手続きに関し行政システムだけでなく民間システムも含めて全体最適なシステムを構築することが望ましいが、第二章で述べたような民間の状況を踏まえれば、そうしたシステムの構築に直ちに取組むことは現段階では官民の合意は得られていないのではないかとの意見がある。現実的には、まず行政当局において民間のニーズを踏まえて輸出入・港湾手続きに関するグランドデザインを設計・共有した上で、官民がどのような形で全体最適となるようなシステムの在り方やそれに関連した業務プロセスの見直しについて検討を進めていく必要があろう。
 これまで、こうした政府全体としてのグランドデザイン設計の必要性は指摘されてきたものの、政府内において具体的な取り組みはなされてきていない。これに関し、現在NACCSが我が国の貿易・港湾関係システムにおいて中核的な役割を果たしていることを踏まえ、税関当局に対しより積極的な役割を求める意見が多く出された。
(迅速な国際物流の実現に向けた具体的プロセスの改善)
 また、政府においてグランドデザインが描かれたとしても、その具体的メリットである手続きの迅速化・効率化を実現するには、国際物流における各プロセスにおいて迅速化等を妨げている課題を明確化し、官民双方においてその解決に向けた取組みを行う必要があろう。そうした課題の多くはIT化により解決されるわけではなく、むしろ根本的なハード・ソフトのインフラの問題も多いと考えられるが、課題を具体的に把握しIT化がどの程度その解決に寄与できるかを明らかにすることはIT化推進の観点からも有用と思われる。
 その際、総合物流施策大綱において掲げられているような具体的努力目標(船舶の入港から貨物の搬出まで2日間程度)の達成に向けて各プロセスで具体的改善を検討するようなアプローチやITを活用した官民のパイロットプロジェクトの実施を検討してはどうかといった提案がなされた。また、グランドデザインは将来の在り方を見据え策定されることから、その実現に向けた取組みに関する中長期的アクションプランを立てるべきとの意見もあった。
2.IT化・EDI化に向けた具体的取組みについて
(全体最適な行政当局システムの設計に向けた取組み)
 上述したように、各行政当局のシステムが関係者にとって全体最適となるように設計するには、関係当局間の有効な調整メカニズムが不可欠であり、例えば本年3月のe-JAPAN重点計画でその整備が決定された関係府省間の検討体制を活用すること等により、具体的な検討体制の整備が早急になされることが期待される。また、そうした場におけるネットワークを通じた情報の共有・活用についての具体的な検討や提出書類の見直し・標準化等や申請手続きフォーマットの集約化作業に関しては、行政サイドのニーズに加え、申請する民間側の利便性を十分考慮してなされるとともに、将来の官民のシステム設計を睨んだものとすることが必要である。その際、船舶の入港から貨物の搬出までに要する時間の短縮を見据えて、関係当局における業務の在り方の見直しについても併せて行うことが重要である。
(高度なワンストップ化に向けたNACCSの活用)
 行政システムの高度なワンストップ化(シングル・ウィンドウ化)を検討する場合、現在、貿易・港湾関係手続きに関し中心的役割を果たし、現在計画されている各行政システムの連携においても中心に位置するNACCSの活用が、新たなシステムを構築するよりもコスト面から見ても、現実的で適切との意見が多かった。NACCSを中心として考える場合には、NACCSについて、今後行われる関係府省間の検討の進捗を踏まえ、今後のシステム更改時等に、各システムを繋ぐインターフェース・システムの整備など全体最適なシステムの中核となり得るような見直しを行う等所要の整備を進めることが必要との意見が出された。その際、NACCSの仕様については、G7での標準化作業も踏まえつつ、民間システムとの円滑な連携がなされるような標準化への対応が更に進むことが期待される。また、官民のシステムを繋ぐインターフェース・システムについては、各種情報の集積・共有・振分けがなされるためには、諸外国にあるようなTrusted Third Party*として守秘義務等の問題に適切に対応する必要があろう。そうしたシステム開発にかかるコスト等については、システムを利用する関係者間で適切な分担がなされることが必要との指摘があった。
(システムへの参加・利用奨励策について)
 貿易・港湾関係システムが期待されるメリットを発揮するには、出来る限り多くの参加者が必要な情報をシステムに対しタイムリーにインプットしていくことが不可欠である。第二章で触れたように、我が国の貿易・港湾関係業界は伝統的に業務が細分化され中小企業も多いため、システムへのニーズが異なるほか、投資余力や対応能力の問題から、システムへの関係者の参加・利用が十分でなく、何らかの奨励策の検討が必要であるとの意見があった。
 これに関し、例えばNACCSの料金体系について、新規参加者への一定期間の割引や、物流の上流にいる者の情報のインプットを増やすため上流に軽く下流に重い料金といった意見が出された。また、NACCSの要求するセキュリティ対策について、中小企業の投資負担軽減のための仕組みを工夫すべきとの意見もあった。更に、システム化の推進の観点から、一部の国で実施されているような書類申告に対する割増料金を検討すべきとの意見も出された。
(その他のIT化推進のための施策)
 現在検討されている、輸出入申告等についてのインターネットの活用や貿易、航空・港湾関係民間システムとNACCSとの連携等などの施策については、技術的課題を克服しつつ、積極的な推進を行うべきとの意見が多く出された。これに関連し、それぞれのシステムの開発・運用担当者レベルにおいて、システムの仕様等について十分な情報交換・共有がなされるべきとの指摘があった。また、NACCSと各システムの役割整理の観点やシステム開発等に要するコストを効率的なものにするとの観点に立って、NACCSでカバーする業務をより明確にすべきとの指摘があった。その際、民間の関係システムにおいてもNACCSとの連携の具体的メリットを利用者に示すことが重要であるとの意見もあった。
 G7方式の導入については強い期待が表明され、その導入を機会にシステムやメッセージの標準化をUN/EDIFACTと整合的な形で一気に推進すべきとの意見も出された。更に、IT化による事務効率化を図るためには、書類による申請手続きが併存している状況を解消する必要があることから、現在書類による申請手続き等が残されているものについて早急に電子的提出が可能となるよう、各当局において取組みがなされるべきとの多数の意見が出された。
(危機管理対策の充実)
 このような貿易・港湾関係手続きシステムの高度化に当っては、災害等が生じた場合の危機管理の問題について関係者全体で取組むことがより重要となるとの指摘がなされた。危機管理においては、各行政当局がシステム等に問題が生じた場合の対応につき事前に十分な情報開示を行い関係者全体でそれが共有されていることが重要であり、また国・地方を含む各行政当局の対応は当局ごとにバラバラなものではなく全体として整合的なものとなるよう、行政当局間において十分な協議がなされる必要がある。更に、様々なシステムが連携し高度なシステム化がなされた場合、一つのシステムのダウンが全体に影響しないような対策や一部の手続きが書類により行わざるを得なくなった場合の対応についても、事前に関係者間で協議され周知徹底しておく必要がある。
3.手続き迅速化を進める中での適正通関の確保について
(リスクマネジメントの強化)
 限られた人員の下で、迅速かつ適正な通関を確保するためには、IT化によりもたらされる事前情報をより有効に活用することが重要であり、そのため輸出入に携わる民間事業者はIT化により随時入手される取引情報を活用し予備審査制度等の利用を促進することが望ましい。入港から貨物の搬出までの手続きの迅速化のため、本船入港前の手続きの実施を認めるべきとの意見に関しては、予備審査制度等の活用により実質的には米国等の制度と同様な効果が得られるものと考えられるが、今後更に手続き等について改善がなされることが期待される。また、IT化により入手される情報を活用し有効な取締りを実施する観点から、情報提供に関する官民の協力関係を強化することが必要と考えられる。また、通関実績や事後調査等を通じて収集した輸出入者の履歴等のデータベースである通関情報総合判定システムの拡充等により、より高度のリスクマネジメント・システムを税関において構築する必要があるとの指摘がなされた。
(輸出入者のコンプライアンスの向上)
 輸出入者においてはIT化による手続きの迅速化や事務効率化のメリットを享受する一方、手続きが簡素化される中で自らがコンプライアンスに対するより大きな責任を持つべきであるとの指摘がなされ、税関当局においても事後調査など事後的な監査を強化しコンプライアンスの向上のため指導を推進すべきであるとの意見があった。これに関連し、今後輸出入者のコンプライアンスに応じた更なる柔軟な手続きの導入を検討する場合は、不正を徹底排除する当局の姿勢を示す観点からも、各種罰則の強化や調査・検査・処分の徹底につき検討する必要があるとの意見が出された。
(社会悪物品等に対する取締まりの強化)
 麻薬など社会悪物品や盗難車両等に関する昨今の国内情勢を踏まえれば、水際でより有効な取締りを行う必要があるとの指摘がなされ、特に組織犯罪者は制度の盲点をつくことが予想されるため、簡易申告制度の対象貨物についても、情報に基づいて徹底的な検査を行うべきとの意見が出された。
4.その他の国際物流を巡る課題について
(空港・港湾におけるハード・ソフトのインフラについて)
 総合物流施策大綱で示された、海上貨物について入港から貨物の搬出まで48時間以内との努力目標等の達成に向け、港湾・空港におけるハード・ソフトのインフラの問題が大きな課題であるとの意見が多く、入港から搬出までの各プロセスにおいて具体的問題点を抽出し、それに官民共同で取組むべきであるとのアプローチが提案された。また、システム化の推進等により通関手続きの迅速化は実現されていることから、その前段階及び後段階の迅速化にむしろ重点的に取組むべきであるとの指摘がなされた。具体的には、ハブ港としての機能を高める観点から公共投資バランスの在り方につき検討する必要があるとの意見や、柔軟な行政管轄の在り方についても検討する必要があるとの指摘があった。また、航空貨物に関するソフトのインフラに関連し、最近、新東京国際空港で運用が始まった統合貨物管理システムは事業者内システムを通じてNACCSとの連携により手続きの迅速化が実現しているとの指摘があった。
 更に、港湾の24時間フルオープン化に向けた最近の動きを歓迎しつつ、官民双方において早期の実現に向け、体制の整備など具体的取組みの検討を促進すべきとの指摘があった。
(民間における取引慣行等について)
 我が国における最適な国際物流システムの実現のためには、行政当局の取組みだけでなく、民間における取引慣行等の変化が極めて重要であり、特に民間企業におけるシステム化・EDI化について標準化の努力が必要との指摘がなされている。この観点から、行政当局のシステムの高度化に当っては、民間企業における標準化の動きを促進する必要があるとの意見が出された。
おわりに
 本懇談会においては、IT革命と企業活動のグローバル化に伴う国際物流の変化を踏まえ、IT化を中心に我が国が抱える国際物流の問題について幅広く議論を行ってきた。本報告書で繰返し指摘したように、国際物流については多数の関係当局・民間事業者が関わる問題であり、この問題に取組むには我が国全体としての国際物流に関するグランドデザインを描き、それと整合的な形で官民の関係者が一丸となって取組むことが不可欠である。
 本懇談会としては、本報告書が、その取り上げた課題について、税関当局のみならず、他の関係当局、民間関係者が問題意識を共有し、関係者間において協調して取組みを進めていく際のキックオフ的な役割を果たすこととなることを期待したい。

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