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ヨーロッパ最新物流情報視察/METRO Future Storeに見るRFID&IT

2004年07月04日/未分類

ヨーロッパ最新物流情報視察リポート/執筆:鈴木 準氏(サン物流開発 代表取締役)

主催:日本小売業協会、(有)サン物流開発、イズミヤ総研3社共催
参加者:30名
日程:6月2日~12日
訪問国:ドイツ、フランス、ベルギー、イギリス
訪問企業:Kateo Natie、マークス&スペンサー、GIST、Tibbet&Britten、Exel、OTTO、ウォルマート、TESCO、METRO、ホンダオルマート、IBM、Boots

日本小売業協会主催によるヨーロッパ最新物流情報視察が行われ、そのうちメトロのFuture StoreでのRFIDと関連ITについて紹介する。

1999年、アメリカのMITとUCC、ウォルマートと大手メーカーによる”Auto ID Center”の設立によってRFIDフィーバーは燎原の火の如く世界中に燃え広がったが、視察ではRFIDの現状と未来を見るために参加した方々には申し訳ないが、「聞くと見るとは大違い」だった。

メトロは、世界28カ国でスーパーマーケット、ハイパーマーケット、会員制卸売業、デパートなどを六つの業態を経営し、2003年の年商は530億ユーロ、約7兆円もの規模になっている。

ラインベルグのメトロ・エキストラ・フュチャーストアには、新しい発見を期待していた。私達は、普通の店には無い、大きな会議室に通され、そこには、6人のメトロのスタッフが待っていた。会議室には、スマートシェルフと云うRFIDのスキャナーのついたデモストレーション用の陳列棚が用意され、陳列棚の横には店内の広告用のモニター、中央壁面にはプレゼンテーション用の50インチの液晶のモニターがあった。

メトロのRFIDに関する協賛企業は電子機器、ソフトハウス、コンピュータメーカ、消費財メーカーなど45社、インテル、IBM、SAPなどが参加している。この店舗の開設は2003年4月28日と、すでに1年2ヶ月を経過しており、実験場となったこの店には、ジャーナリスト150人とVIP、学者・コンサルタント、120のグループ、わが国からは上智大学の荒木教授が率いる流通研究社のグループも訪問していた。さらには、ドイツのスーパーモデル、クラウディア・シファーも訪れていた。

実験場でもあるFuture Store(未来店)は店舗面積4000㎡、アイテム数4千、従業員数は登録230人、年商は1400万ユーロ、約20億円である。最初にRFIDのPR用のビデオを見せられた。日本での情報源はこのビデオCDである。

物流分野の観点からみると、
①商品のダンボールケースにはRFIDのICチップ(タグ)がつけられている。
②前半13桁はEAN(JAN)と同じ、国、メーカー、アイテム、チェックデジット、次に9桁のシリアルナンバー、最後の8桁が賞味期限である。
③商品はメーカーまたは自社物流センターを経由して、トレーラーで運ばれて来る。
④トレーラーから下ろされたパレットはフォークリフトでバックルームに運ばれる。
⑤バックルームの入り口にはゲート型のICタグのスキャナーがある。
⑥フォークリフトがゲートを通過する際に、パレットの商品のICタグが読み取られ検収される。
⑦バックルームから店内に通じる通路にもICタグのスキャナーのゲートがあり、同様にデーターを取り込む。
といった使われ方となっていた。

しかし、私は疑問を感じた。流通業のRFIDの利用は物流センターから店のバックルームまでの物流と店舗の後方から売り場までの在庫管理、及びPOSシステムと金銭授受のチェックアウトの3種があるが、メトロの物流におけるRFIDの利用法は、ほぼウォルマートとおなじである。

両社ともITFでRFIDと同じ効果が上げられるのに、ITFを飛ばして、RFIDに移ろうとする理由がわからないからだ。

RFIDならもっと早くから合理化の成果を上げられたはずだ。ICタグは、1個30セント(ユーロ)から80セント(40円~110円:メトロの情報)なので、平均単価2~3百円の商品では採算が取れないだろう。その上、取り付けの人件費がかかる。

ウォルマートは在庫管理と作業改善により年間84億ドル(約1兆円:03.11.10、Trackback誌)の効果が上がるといっている。これは売上高の3%である。商品が1ケース40米ドルの場合、効果は1ケース1.2ドル、ウォルマートのサプライチェーンが億単位でICチップを購入して1個5セント、十分採算が取れるだろう。しかし、EDLPを標榜するウォルマートでは、コカコーラが1本25¢、ICチップが5¢とすると、20%であり、RFIDでEDHP(エブリーデイ・ハイプライス)になってしまう。ITFもJANもタダである。

もう一つ疑問がある。ウォルマートの在庫管理。3%のコストダウン効果は、売り上げの機会損失を含めて3%のロスであり、ケース単位の物流で、こんな多額のロスを出していては、日本では卸売業も小売業も倒産してしまう。ウォルマートの在庫管理はどうなっているのだろうか。この疑問はメトロにも適用される。

ラインベルグの店ではバックルームと店内の間にRFIDのスキャナーがある。このスキャナーについてはメトロのスタッフも機能していないことを認めていた。バックルームから店内に入る商品は多品種・少量であり、1パレットに混載すると読み取り率が悪く、ノーリードの商品がわからないからである。

センターから店については確認できなかったが、日経BP社のホームページによると「メトロのビデオCDを見るように」如何にも動いているように報告されている。日本で蔓延しているメトロの情報はこのビデオCDが発信源であったわけだ。

RFIDも日々改善されると思うが、まだ未成熟で、水、金属、タグの重なったとき、箱が重ねたパレットの読み取りを行う場合、1パレット1アイテムの場合でも、パレット上のケースの1個1個は読み取れない。まして、複数アイテムの場合はどれがノーリード化確認できないのが現実である。

店舗における在庫管理の実験の参加企業とアイテムはP&Gが8アイテム,Gilletteは4アイテム、Kraftが8アイテムと3社で20アイテムである。なお、POSやチェックアウトに連動していなかった。

RFID実験用の商品を陳列する棚はSmart Shelfと呼ばれ、会議室にデモ用が置かれていたが、この棚にはICチップのスキャナーが取り付けてあり、棚から商品を取ったり、補充したりすると、コンピュータの在庫が増減する仕組みになっていた。デモでは見事に機能を発揮していたが、売り場ではジレットの製品は2アイテムしかなく、会議室の実験で十分であった。

メトロではRFIDの実験を2004年10月からベンダー10社、270店舗に拡大するそうだが、これはDVDなど高額品の万引き防止とその在庫管理に使うのが主目的だと思う。平均単価200~300円(日本のスーパーのグロサリー)の商品でこういった使い方では、RFID導入のメリットはないと思う。欧米のRFID利用の目的は、売り上げの1.7%あると云われるシュリンケージ(万引き)などによる商品の減耗防止であると考えられる。

メトロがfuture storeで主張したかったのは、お客様が楽に、楽しく、早く買い物が出来る顧客支援としてのIT利用だと思う。むしろRFIDは脇役ではなかろうか。

メトロの店舗で目を引いたのは、1台20万円、60台のPSA(Personal Shopping Assistant)と呼ばれるセルフチェックカートと電子プライスカード、インテリジェントスケール(Intelligent Scale)、電子広告(Electronic Advertising Display)とセルフチェックアウトである。

PSAはアメリカではボストンのスーパー・ストップ&ショップでも実用化されているが、買い物客はカートに積まれたモバイルターミナルにメトロのハウスカードを差し込み、買いたい物をとり、その商品EANコードを買う数だけスキャンして、買い物が終わったら、レジに行き、ハウスカードをレジ係りに渡し、カードまたは現金で決済する仕組みだ。

本来なら、モバイルの終了ボタンを押し、カードを抜けば決済完了になるはずで、利用率は来店客の54%だが、利用客の評判は良く、リピーターになるそうだ。ただ、このシステムでも万引きは可能だ。

サウスカロライナ州にあるビグリー・ウイグリー・カロライナは7月から4店で指紋による支払いサービスを始める。チェックカウンターの上にあるスキャナーに指を入れるだけで支払いが済ませられるシステムで、現金、小切手、クレジットカードも必要なくなる。  

これは、ペイ・バイ・タッチと呼ぶ方式でお客の指紋のデジタルタル画像が銀行口座、クレジットと照合できるもので非常に進歩した自動支払いシステムである。スキャナーは指紋を読み取り、本人であることを確認する。小売業のハイテク化はアメリカも引けを取らない。

メトロの商品の陳列棚には液晶の棚札がついている。プライスカードを作る手間がなく事務所で瞬時に価格を変えることができる。この店には3800個あり、1個6ユーロ、バッテリーは6年持つそうだ。ただし、液晶棚札は日本でも普及している。

ヨーロッパでは、青果は量り売りで、ここではインテリジェント・スケールが導入されており、秤にIDのバーコードのプリンターがセットされ、デジタルカメラもついており、客が商品を秤に載せるとデジカメが商品を判別する。

似たような色と形の商品の場合は複数の商品がモニターに表示され、客がその中から買う商品を選択する。買いたいだけ秤に掛け、Enterキーを押せば、バーコードつきのラベルがプリントアウトされ、商品を袋に入れ、ラベルを貼り、レジに行く。電子広告機は店内の要所、要所にあり、特売や関連商品の紹介をしていた。

店内でのRFIDの利用はCDやDVDであり、買いたいCDを試聴器の前に持って行くと、自動的に演奏される。ただし、R指定は視聴できない。メトロではRFIDは在庫管理に使い、万引き防止には使っていない。万引き防止には従来の磁気式タグを使っていた。

メトロの未来店はITによる小売の技術革新の総合展示場であり、RFIDはその一部である。RFIDは高額品の在庫管理等の情報収集と万引き防止には有効と思うが、食品、日用品のチェックアウトやPOSには使えないと思う。

情報は洪水のように氾濫しているが、同じように間違った情報も氾濫している。重要な情報は自分の目で、自分の耳で確かめなければならないことを確認したツアーだった。

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