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日本郵政公社/ヤマト運輸訴訟に関する郵政公社の考え方(総裁会見)

2004年10月21日/未分類

日本郵政公社はヤマト運輸の訴訟に関する考え方(総裁会見)を公表した。
内容は下記のとおり。

なお、第1回口頭弁論は10月21日午前10時、第2回口頭弁論12月16日午後1時30分に行われる。

1消費者の視点が第一
お客様、消費者の視点、顧客の論理にたった考え方が最も重要
全ての視点は、そもそもは、その市場占有率や料金レベルの維持等、サービスの供給者としての論理ではなく、お客様の視点・利益等、顧客の論理にたって考えなければならない。
郵便法の第一条は「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進することを目的とする。」と規定されており、また日本郵政公社の経営ビジョンである「全国のお客様により良い、より魅力的なユニバーサルサービスを提供する。常にお客様の立場に立って、ご満足いただける真心のサービスを提供する。」の実現に向けて、現在、日本郵政公社は職員が一丸となって真っ向サービスに邁進している。
我々はこのような基本的な考え方に基づき、商品性、サービス面ともにゆうパックを改善するとともに、コンビニエンスストア各社にも、ゆうパックの取扱いをお願いしてきているところであり、このようなお客様の視点・利益等、顧客の論理にたってまず第一に考えることを絶対に忘れてはならない。

ヤマトの主張は、供給者の論理ではないか
ヤマト運輸の主張は、供給者の側からの視点と論理であり、消費者の側からの視点と論理ではないのではないか。今回の訴えは、ヤマト運輸のいわば既得権益を擁護するための訴えではないかとも考えられる。すなわち、ローソンが消費者の視点に立ち、ヤマト運輸とゆうパック双方の取扱いを希望していたのに、ヤマト運輸はそれを拒否した。ヤマト運輸は、消費者の利益よりも供給者側の考えによって提訴に踏み切ったのではないかと考えられる。
また、ヤマト運輸の消費者の利益を無視した立場は、これだけに限らず、「ヤマト運輸の宅急便の料金より安い値段で、ゆうパックのサービスを提供するな」と訴えている点でも明らかである。これは、消費者から、低廉な料金でサービスを享受する機会を奪うものである。

スキーゆうパック、ゴルフゆうパックなどの新サービス開始について
ヤマト運輸はスキーゆうパック、ゴルフゆうパックなど、ことごとく民間の真似をしていると主張しているが、これは、お客様のニーズを見つめ、ご要望を受けた結果であって、お届け通知サービスとか同一宛先割引といった民間にはない独自のサービスも提供し、また、翌日配達のエリアも拡大した。
ヤマト運輸がコンビニ事業者と作り上げたビジネスモデルに踏み込んで来られたとの指摘があるが、もとより、ゆうパック事業でも、郵便局以外の全国のゆうパック取次所や簡易郵便局に委託してサービスを提供してきており、今回、その取次所の一つとしてローソンと契約を締結したものである。ヤマト運輸の自らのビジネスモデルを真似たものという指摘は必ずしも当てはまらないと考える。
サービス競争こそ、消費者の求めているものであり、その方向に向かえばサ
ービスメニューが広がるのは当然である。

2マーケットシェア
ゆうパックのシェアは6%
宅配便や郵便小包などの小型物品の送達市場(年間30億個)において、ヤマト運輸のシェアは33%を超えてトップである(10.1億個)のに対し、平成15年度のゆうパックのシェアは、その前年度の5.7%より少し上昇したといっても6.0%にすぎない(1.8億個)。
独占禁止法違反は、例えば、シェアの大きい会社が更にシェアを拡大するために行う活動について発生する問題であって、ゆうパックのシェア(6%)は、基本的に問題とされるレベルではない。

シェアの移動は0.27%
ヤマト運輸の宅急便全体10.1億個に占めるコンビニ扱いの割合は、3.6%であるが、コンビニ大手7社のうち、ヤマト運輸は5社と契約があり(コンビニ大手7社引受個数のマーケットシェア94%)、そのごく一部を除き排他条件付契約を締結している(=88%)。
ローソンは、現在、年間約800万個の宅急便を引き受けており、仮に、ローソンがすべてゆうパックに移ったとしても、ヤマト運輸のコンビニシェアは、いまだ73%もある。
他方、ゆうパックのシェアは、30億個の小型物品送達市場から見れば、0.27%程度上がるのみであり、6.0%のシェアが6.27%になる程度のものであり、ゆうパックが独占禁止法の対象云々になるものとは考えがたい。

3不当廉売について
(1)ゆうパックの新料金
従来の料金と同水準
そもそも、10月1日のゆうパックの料金改定は、重量制料金体系からサイズ制料金体系に変更したが、全体としての料金水準は、今までと変えていない。
すなわち、安売りに転じたのではなく、従来の料金と同水準である。宅配便業界の慣行が基本的にサイズ制であり、それに対応したものである。
なお、サイズ制への変更により、軽くてかさばるものは、逆に料金値上げになっており、現在、結果として値上げになったお客様から苦言もいただいているところである。

他の宅配業者と同水準
ゆうパックの料金は、従来から、ヤマト運輸の宅急便より若干安い水準にあるが、他の宅配業者とは、値引きなども考慮すると同水準であると考えられる。
各社の平均単価は、次のとおりである。平均単価による比較は、料金水準の把握としては概括的ではあるが、それでも、ゆうパックの料金が格段に安いわけではなく、宅配便市場における市場価格の水準で価格設定されていることが、ご理解いただけると思う。
・ヤマト運輸683円出典:ヤマト運輸の決算説明会資料
・ゆうパック605円出典:平成15年度決算より
・A社532円出典:主要新聞データ(平成16年4月)
・B社519円出典:B社ホームページ
(いずれも消費税を除く金額、平成15年度。ただし、A社のみ平成14年度)
ヤマト運輸の料金レベルは別として、市場において競争的に形成されている価格と同じ水準の価格設定をしても不当廉売になるという論理が果たしてあるのだろうか。

政府の沖縄振興政策
なお、沖縄発着の一部の料金に見られるゆうパックと宅急便との2,200円の料金差は、郵政省時代からの政府の沖縄振興政策を反映したものであり、公社化に伴い、適正な料金に修正していく過程のものである。

サービス重視
郵政公社は、不当廉売はしていないし、これからもするつもりはない。ゆうパックの新料金は、きちんとしたコストに見合う料金水準により、収益と適正利潤をあげることとしている。
不当な価格設定をするつもりはなく、あくまでも、サービスの品質アップ、お客様本位のサービスを重視することとしており、この点は何度も総裁が指示している。

(2)小包郵便の収支
通常と小包の収支分離
「手紙・葉書」と「小包」の収支は、それぞれの作業に要した時間や、運送便に積載した郵便物の容積などに基づいて、従来から明確に分離して計算し、公表しており、手紙・葉書の黒字により小包を廉売しているということはない。

小包も黒字
また、小包の収支は、コスト削減努力や積極的な営業活動の展開により、従来の赤字から、平成15年度では10億円の黒字にすることができた。

(3)優遇措置
コインの裏表
税金などの優遇措置は、郵便事業に課されているユニバーサルサービス義務とともに、ビジネスモデルの構築・選択について制約を受けていること、第三種郵便(新聞・定期刊行物)や第四種郵便(盲人用点字、通信教育等)の軽減料金の義務を負担していることなどの見返りとして政府の政策で定められているものである。
すなわち、郵政公社には、手紙・葉書や小包を、山間・離島も含め全国あまねく、公平に、安く提供する義務が課されており、各種の優遇措置は、コインの裏表としてバランスが取られている。したがって、ヤマト運輸が言うところの「競争条件が平等ではない。」との指摘は当たらない。
また、ヤマト運輸は、自らの判断でいつでも不採算地域から撤退することができるのに対し、郵政公社は、たとえ財政事情が厳しくても不採算地域からの撤退は許されない。しかし、ヤマト運輸は、このような郵政公社との基本的な立場の違いを度外視して、民業圧迫を主張している。

主張の矛盾点
ヤマト運輸は、郵政公社が税制等の優遇措置を受けていること、信書事業を事実上独占していることなどから、同じ土俵で競争できないと主張している。
ヤマト運輸は、クロネコメール便では、郵便局の通常郵便物や冊子小包と真っ向から勝負してきているにもかかわらず、ゆうパックには競争すべきでないとの主張を展開するのは、土俵を取り巻く観客、消費者にとって誠に理解に苦しむ主張である。
また、郵政公社は、法律の枠内で事業活動を行っており、ヤマト運輸のように取引の実情に沿ってお客様との交渉により価格を上下したり、自由に副業を拡大するなどの経営の自由が認められていないし、新聞・雑誌の送達や障害者のためのサービスのための政策的価格設定だけでも約250億円(平成15年度種類別収支より)の赤字が発生している。
また、何よりも大事な使命として、ユニバーサルサービスを提供している。
その対価として、税制の優遇等があるが、ヤマト運輸の主張は、自分にとって都合の良い面だけを取り上げた、偏ったものではないかと考える。

債務超過
そもそも郵政公社発足時には、郵便・貯金・簡易保険を合わせた郵政公社全体で、政府から1.3兆円といった極端に少ない資本金しかいただいていない。
しかも、この三事業は明確に分離され、郵便事業については、郵政公社発足時には△5,800億円の債務超過であった。昨年度の損益はやっと単年度の黒字化にこぎつけ263億円の利益を出したが、郵便事業の資本金は依然△5,500億円を超える債務超過である。中期経営計画よりは良い結果になるとしても、2007年3月末に、債務超過状態をどこまで縮小できるのか努力中であるというのが実状である。
郵政公社全体の資本金として言えば、約7兆円までは自分で資本金を積み増しし、その後は利益の50%は国庫納付することになっている。一般企業の法人税率約40%よりも高い。郵政公社には税金を払っていないことをテコに安値を出そうなどという考え方も余裕も全くない。

三事業の会計分離
なお、ヤマト運輸は「郵便事業の赤字を貯金・簡保の黒字で埋めているのではないか。もっと透明にすべき。」との主張をしているようであるが、これは、全くの誤解である。
三事業の会計は完全に分離され、それは完全に財務諸表の形でディスクローズされており、このことは誰でも承知している明白な事実である。

4不当利益による顧客誘引について
付近の賃貸料を基に設定、資源の有効活用
郵便局の余裕スペースのローソンへの貸付けについて、ローソンとの賃貸料は、付近の賃貸実例を基に設定し、このほか、光熱水料も実費をいただいており、ヤマト運輸が言うところの「市場価格を著しく下回る賃料でローソンに貸し付けている。」との指摘は当たらない。
郵便局の余裕スペースの貸付けは、郵便局の資源を有効に活用しようとするものである。

公設ポストとして適当
ローソン店舗内の郵便ポストについて、コンビニ店舗は、交通の便の良い場所にあり、また、24時間営業で、不特定多数の消費者の利用に便利であるため、公設ポストの設置場所として適当であり、ヤマト運輸が言うところの「ローソンに不当な利益を与えている。」との指摘は当たらない。

5閣議決定について
現行法の業務範囲内
郵政公社が、ゆうパックの料金改定をしたり、その引受をローソンに委託することは、現在、日本郵政公社法に基づき認められ、むしろ努力を求められている「郵便事業の実施」の一環であり、法律や閣議決定「郵政民営化の基本方針」に反するものではない。

当然行うべき助走
郵政公社は、郵便小包の制度的枠内で、消費者側に立って、消費者利便の向上のために、料金体系の見直しやアクセスポイントの拡大を実施するものであり、2007年4月の民営化に向けて、当然行うべき助走である。
もちろん、現行法の法的フレームワークと社会的規範の範囲内での取組である。

6ヤマトの排他条件付契約について
ヤマトの排他条件付契約により、ゆうパック置けずゆうパックは、5.7%まで、年々シェアを落としていた。民間では撤退を余儀なくされるレベルである。現在、何とか市場で生き残るため、必死にがんばっているところである。
その一環として、コンビニ各社に、ヤマト運輸や日本通運などとともに並んで、ゆうパックを置いてほしいと考えた。
某コンビニからも積極的な反応があり、かなり良い線まで話が進んだにもかかわらず、ヤマト運輸は、ヤマト運輸以外の競争事業者と契約できないようにする排他条件付契約を既に締結しており、そのコンビニがゆうパックを置くことは、突如できなくなった。

他のコンビニへの波及阻止ではないか
ローソンは、「コンビニ店舗で複数商品を提供して、お客様の選択肢を拡げる」というコンビニの理念に照らして、やはりお客様に選んでもらいたいということで、排他条件付契約の解除を、ヤマト運輸に申し入れたと聞いている。
しかしながら、ヤマト運輸にどうしても納得してもらえなかったので、契約に従い解除通告をした上で、ヤマト運輸の宅急便とゆうパックの併売実現に努力したが、ヤマト運輸の拒否を受けたとのこと。ヤマト運輸が一方的に、11月中旬からローソンでの宅急便の取扱いをやめることとしたものであると聞いている。
ローソンは、ヤマト運輸の宅急便も取り扱いたいという希望を、今でも変わらず持っており、ヤマト運輸に働きかけていると聞いている。
ヤマト運輸の主張の背景には、ローソンで併売することを認めると、その他のヤマト運輸が契約しているコンビニ、すなわち、他の大手コンビニ5社からも同様の要請が出る可能性があり、これを断り難くなる可能性が大きいので、この際、併売を拒否し、大きく騒ぎたてることにより他の排他条件付契約を守ろうとの考えが強くあるのではないかと考えられる。

排他条件付契約の問題点
このように、現在、ローソンをはじめ多くのコンビニは、ヤマト運輸から宅急便の取扱いについて排他条件付契約を締結させられていると聞いている。また、大手コンビニ7社に占めるヤマト運輸のシェアは94%ある。そもそも、このような排他条件付契約こそが、法的に疑義があるのではないか。
もともと、ヤマト運輸の小倉さんは、常に市場の論理に立って、お客様の利便を図るために、官の規制に対抗してその扉をこじ開けて創造的に事業を発展させてきた。それは賞賛されるべきことである。
その結果として、市場ではヤマト運輸がトップシェアを占める有力な地位を形成することができた。しかし、今度は、そのシェアと高い料金レベルを、排他条件付契約によって守ろうとしているのではなかろうか。ヤマト運輸が、このような方法によって競争事業者のコンビニマーケットへの進出を抑制しようとしているとすれば、民間による「規制」と言えるものであり、市場における自由な競争を妨げているのではないか。今回は、ゆうパックが、消費者と市場重視の立場で、ヤマト運輸の持つ規制にぶつかったわけであり、時代を経て、ヤマト運輸と郵政公社との立場が入れ替わったような気がする。

7他のコンビニの対応
○ペリカン便とゆうパックの併売
なお、コンビニチェーンのデイリーヤマザキとam/pmでは、先住の日本通運にむしろ歓迎されて、ペリカン便とゆうパックの併売となり、作業面で極力協業することにより合理化を図り、お客様への還元を指向している。

8まとめ
○自らの独占的地位の擁護は問題
このように、ヤマト運輸は、対外的パフォーマンスとしては、税等の優遇措置を受けている郵政公社とはフェアな競争ができないから、ローソンから撤退するというような言い方をしているが、ヤマト運輸一社のみを取り扱うという排他条件付契約をもとに、全コンビニでの引受けの9割以上を占めているという自己の優位性を守ろうというのが狙いではないかと考える。
すなわち、ヤマト運輸の提訴の本質は、郵政公社の行動を市場原理の立場から批判するのではなく、ヤマト運輸の市場における既得権益を擁護しようとするところにあると考えられる。

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