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野村総研/2010年の流通は「スパイラル型再編」へ

2006年09月15日/未分類

(株)野村総合研究所は、2006年2~3月、日本小売業協会と共同で、小売・卸・メーカーを対象に「わが国の流通ビジネス将来展望に関するアンケート調査」を実施した(回答数147)。

その結果、全体の86.8%が同業種内での企業間連携、いわゆる「水平統合」の必要性を認識し、小売業がメーカー、もしくは卸売業と連携する、いわゆる「垂直統合」の必要性を89.3%が認識していることがわかった。

NRIでは、2010年に向け、流通業の各事業者が水平統合と垂直統合を交互に繰り返す「スパイラル型の業界再編」が起こる可能性が高いと見ている。

日本の流通業は、高度経済成長に合わせて飛躍的な成長を遂げたが、バブル以降の景気低迷を受けて客単価や来客数が減少、さらに、店舗の供給過剰などによって単位面積あたりの売り上げも低下している。

店舗数拡大や値下げによる従来の成長モデルに限界が見えているなか、各事業者は、合従連衡による水平統合によって規模拡大して存在価値を保つことに活路を見出している。

今回の調査で、「水平統合が必要」と認識している企業を対象に、その進展要件について聞いたところ、「自社の戦略、経営の意思決定」が全体の70.6%と、圧倒的多数を占め、次いで「ITの高度化」(34.9%)が挙がった。

NRIでは、水平統合の動きに続き、規模を拡大した小売業と卸売業がサプライチェーンの効率化を進め、垂直統合の動きが起こると考えている。大型化した小売・卸同士は従来の商慣習(リベートや返品制度、物流センターフィーなど)による非効率性が高くなり、経営効率を高めるにあたり無視できない要因となるため。

今回の調査では、流通業界に存在する従来の商慣習改善のために必要な取り組みとして、回答者が多い順に、「業界全体としての適正化の取り組み推進」(64.3%)、「取引先との取り組み推進」(60.7%)、「情報インフラの整備」(51.4%)が挙がった。

回答を業種別に見ると、小売や卸では「自社の販売力強化」が3位に挙がっており(小売51.9%、卸55.6%)、規模拡大によって購買力を強化し、発言力を高めることも重要と考えていることがうかがえ、商習慣を改善しようというこれらの動きが、垂直統合を加速させるとみられる。

このように、日本においても、欧米で先行している水平統合と垂直統合を繰り返す「スパイラル型再編」が、急速に進展する状況になっている。

今回の調査結果に見られた水平統合・垂直統合の必要性に対する認識の高さが、日本でのスパイラル型再編の加速化を裏付けていると言える。

したがって、流通事業者は、水平統合後の寡占化市場までにらみ、自社の取るべきポジションを想定しておくことが重要で、スパイラル型再編によって、サプライチェーンにおいて主導権を握る事業者、いわゆる「チャネル・キャプテン」となりうるのは、(1)購買力を背景にした大手小売業、(2)ネットワーク力を背景にした卸・商社・ボランタリーチェーン(小売店が独立性を保ちながら、共同で仕入れや配送などを行うための任意組織)、(3)資金力を背景にした総合商社・ファンドなどが考えられる。

チャネル・キャプテンを目指すのか、チャネル・キャプテンとの提携なのか、その場合のチャネル・キャプテンは誰なのかを見極め、早い段階から関係構築の準備を始めることが必要で、水平統合・垂直統合に不可欠なITプラットフォームの連携に対応できるよう、GDS(Global Data Synchronization:商品情報共有化の仕組み)の導入などIT環境を整備しておくことも重要としている。

今回の調査結果を含む、2010年代の流通業のあり方に関するNRIの提言が、単行本「2010年の流通」として、東洋経済新報社より9月28日に発行される予定。

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