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日本経団連/貿易諸制度の抜本的改革を要求

2006年11月22日/未分類

(社)日本経済団体連合会は11月21日、貿易に関する組織・制度のあり方に絞り、これまでの延長上ではない抜本的な改革の方向性について改めて要望した。

関係省庁において、産業・企業によるサプライチェーンの流れを把握し、省庁間の垣根を取り払い、連携を強め、情報の共有化、一元化を図ったうえで、次に述べる制度や手続き、システムについて今日の状況に合ったものに改める必要があるとして、下記の具体的な提案を提示した。(物流分野のみ抜粋)

(1) 効率化とセキュリティの両立を目的とした制度・システム設計
効率化とセキュリティの両立の観点から、WCOで合意されたAEO・ACI政策に準拠したコンプライアンス制度を構築すべきである。国際的に進められている制度・システム改革の方向は、ITの活用による完全電子化とコンプライアンス制度に基づく手続きの簡素化であり、これを国際的な協力と官民のパートナーシップを通じて早急に実現すべきである。

1.WCOのACIガイドラインに準拠した完全電子化の実現
貿易手続きに際しては、WCOにおいて合意されたACIに関するガイドラインに準拠した完全電子化を実現すべきである。

2008年稼動予定となっている次世代シングルウィンドウ・システムについては、諸手続き(通関手続き、港湾関連手続き、防疫・検疫手続き、乗員上陸許可手続き等)を省庁横断的に徹底して見直す業務改革が断行されたうえで構築されるべきであり、真のワンストップサービスが実現されるよう強く求めたい。

その上で、わが国のシングルウィンドウ・システムをオープンなシステム環境で実現させ、アセアン域内で進められているシングルウィンドウ・システムなどとGtoGで連携を図り、グローバルでオープンな貿易IT基盤とすることも視野に入れるべきである。

例えば、船積み前に各国税関同士で貨物情報を電子的に交換することにより、テロ対策上のセキュリティと物流のリードタイム短縮を同時に実現できる。これによって、わが国のITインフラが世界のITインフラの一翼を担い、セキュリティと効率的な国際物流の実現に貢献することが可能になる。

(3) 港湾行政における広域連携のあり方と手続きの改善
通商戦略上、重要な港湾・空港などの物流インフラは、中長期的な見地から戦略的に絶えず整備を進め運用を改めていく必要がある。ハード面のみならず、ソフト面も含めてインフラがグローバル展開企業のサプライチェーンに即したものでなければ、わが国自体が巨大マーケットであるにもかかわらず、その国際的な優位性を失ってしまう。

とりわけ港湾については、戦後、その運営・管理を地方自治体に委ねていたため、一体的な港湾の運用が行われてきたとは言い難い。そこで、港湾の国際競争力強化の観点から、地方自治体ごとに分断されている港湾の運営について、広域的な連携を強化し、一体的な運営を図っていく体制に見直すことが急がれる。とりわけ、主要港湾については、港湾の運営体制を広域かつ一体的にポートオーソリティ化する方向で検討を行うべきである。

国際物流と国内物流とが低コストでシームレスに連携できるようになる必要がある。例えば、コンテナヤードへ鉄道の引き込みや内航船によるフィーダーの直づけによる海上コンテナ輸送とインランド・デポの設置・利用により、港湾の機能集中を緩和することも検討に値しよう。

また、海外では、釜山港など国策として高度な物流拠点(港湾ロジスティクスハブ)を形成し、税制上の減免措置を図るなどソフト面の支援策が充実している事例もある。わが国としても戦略的にコンテナターミナルの後背地に港湾ロジスティクスハブを戦略的に形成することも検討すべきである。

現在、港湾管理者ごとに届出書式が統一されておらず、たとえ各港湾管理者がシステムを有していてもそれが港湾独自のシステムとなっていることから、申請者は、個別港湾ごとに異なる対応をとらざるを得ない。その結果、いまだに紙による申請を行わざるを得ず、業務の効率化を妨げている。したがって、国のリーダーシップにより、早急に届出書式を統一し、ペーパーレス化を図るべきである。その上で、次世代シングルウィンドウでは港湾管理者への申請も組み込み、真のワンストップサービスに結びつけるべきである。

(4) 各省庁の連携強化、横断的な政策調整・意思決定の実現

これまで述べてきたように、貿易の円滑化とセキュリティ強化の両立を目的として、国際的な標準を見直す世界的な動きに対して、省庁縦割りのわが国の制度・システムは企業の利便性を著しく阻害しており、組織・体制の抜本的な改革が急がれる。

具体的には、現在、省庁間にまたがっている貿易・物流に関する機能を括り出し、貿易・物流を含めた通商戦略・経済安全保障問題を関係省の一段上に立って一元的・一体的に検討する組織として、内閣に調整本部を設置すべきである。その上で、例えば、通商戦略の司令塔として担当大臣を任命し、政策を総合的に企画・立案し必要な調整を行う方向で改めるべきである。戦略性、一貫性のある貿易政策・意思決定、制度運用を行い、企業のグローバル・サプライチェーンの全体最適化を支援すべきである。

米国では同時多発テロを契機として、セキュリティ強化と貿易の効率化・円滑化を同時に達成できるよう、国土安全保障省(DHS)が創設され、一元的かつ包括的に取り組みが行われている。また、韓国では、「電子貿易促進法」に基づき国務総理の下に「国家電子貿易委員会」が設置され、スピーディな意思決定が実現している。わが国としても、これらを参考に、国としてグランドデザインを描き、セキュリティの確保と効率的な国際物流を両立させる将来的な体制整備に向けた検討に着手すべきである。

また、官民一体となって経済のグローバル化への対応を図る観点から、調整本部の運営には、民間有識者をメンバーに加え、民間企業のニーズを把握し具体的に対応する体制を整備すべきであろう。
以上

1. FAL条約(Convention on Facilitation of International Maritime Traffic)
国連の機関である国際海事機構(IMO:International Maritime Organization)のもと、50余りある協定の一つ。国ごと、当局ごとに異なる情報を異なるフォーマットで要求され海上輸送が複雑化する傾向にあることから、手続の簡素化の統一的な推進を目的として、1965年採択。2005年9月日本も批准、60日後の11月1日発効した(米国、シンガポール 1967年,中国1995年,香港1997年,韓国2001年)。

2. 特定輸出申告制度
セキュリティ対策の強化と国際物流の高度化に対応した物流促進の両立を図るため、コンプライアンス(法令遵守)の優れた者について、貨物を保税地域に入れることなく輸出申告を行い、輸出許可を受けられる制度。2006年3月導入。

3. 簡易申告制度
あらかじめ税関長の承認を受けている輸入者が継続的に輸入している貨物について、法令遵守の確保を条件に輸入申告と納税申告を分離し、貨物の引取りを行い、貨物を引き取った後納税申告を行うことを可能とする制度。

4. 米国24時間前マニフェスト事前提出ルール
2003年2月より外国港において対米輸出貨物を積み込む24時間前迄に、貨物情報を米国税関に事前申告することを義務付ける制度。

5. WCO(世界税関機構)(World Customs Organization)
各国の関税制度の調和・統一を推進し、国際貿易の発展に貢献することを目的として1952年に設立された国際機関。現在169カ国・地域が参加。

6. AEO(Authorized Economic Operators)
セキュリティ管理優良として貨物の安全性についての信頼性が認定された企業。現在、EUにおいて事前申告提出を義務付けるための税関規則改正を検討中。オーソライズド・オペレーターには、より短い到着前、出発前の事前申告のタイムフレーム、提出書類の削減等のメリットが享受される。

7. ACI(Advanced Cargo Information)
税関に対する貨物情報の事前報告。

8. ポートオーソリティ(Port Authority)
欧米における港湾の管理組織の一形態であり、公共企業体方式によって運営されるものをいう。ロンドン及びニューヨークのポートオーソリティがその代表的なものであり、独立採算を基本とし、単に港湾ばかりでなく、空港、バスターミナルなども包含して管理運営している。

9. インランド・デポ(Inland Depot)
港湾や空港から離れた内陸部にあって、通関手続きが可能な保税蔵置場のある施設。内陸部のメーカーなどが製品を輸出する際に、港湾部の保税地域で通関手続きをする手間を省くためのもので、インランド・デポに設置された税関の出張所で通関手続きができる。インランド・デポを利用することにより、通関手続きが迅速にでき内陸部から空港や港湾までの陸送運賃や消費税が免除されたりするなどのメリットがある。

10. 国土安全保障省(U.S. Department of Homeland Security)
2003年に新設されたアメリカ合衆国の連邦行政官庁であり、テロ対策に関わる既存の8省庁22の政府機関・部門を統合し作られた。

11. 電子貿易促進法
韓国における電子貿易の促進に関する法律で、2005年12月に成立し、2006年6月施行。eトレードプラットフォームを通じ、すべての貿易手続きがシームレスにネットワーク化を実現し、シングルウィンドウ化・ワンストップサービス化を目指している。

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