栗原誠 物流投資事業部長
オリックスグループの不動産部門として、2006年に多くの物流施設の開発計画を発表したオリックス・リアルエステート(株)(4月17日付でオリックス不動産(株)に社名変更予定)。既存物流施設への投資事業、自社で土地を取得し、開発した施設を賃貸する開発事業の両面で、急速に投資額を増やしつつある。物流投資事業部長の栗原誠氏に、同社のセールスポイントと今後の戦略を聞いた。
― 現在の投資状況、取り組みの特色は
物流不動産関連の投資額は開発中のものも含め1,200億円に達した。このうちの8割が開発型で、ポートフォリオ的には最新の物流施設が8割を占めている。フットワークエクスプレスの拠点40か所もあるが、SPCが扱っている物件なので、これらを除く保有床面積は開発中のものを含め20万坪超に達する。
― 物流不動産に進出するきっかけは
4年ほど前になるが、最初に手掛けたのは大手日用品メーカーに賃貸した八王子センターの案件。20年の定期借地契約で、9,300坪の施設を建設した。当時は外資系開発会社が成田で物件を検討している段階で、日系開発会社はまだでておらず、物流施設を投資対象としたファンドも当時はなかった。
― 認知されていないマーケットに進出した理由は
最初の八王子センターの案件を手掛けていて「物流が面白い」と着目した。ただ当時は、社内でも、物流不動産マーケットに対する認知度が十分でなかったため、本格的な進出までには多少時間を要したが。
― 投資規模は今後どの程度を考えているのか
現在は1,200億円だが、今後も、よい物件があれば積極的に投資していきたい。
― オリックス・リアルエステート全体での物流分野の位置づけは
もともとはマンション開発でスタートし、2007年は4,000戸以上を供給する見込みとなっている。このほか、オフィスなどの商業施設、介護施設、ゴルフ場・ホテル関係と多岐にわたっている。これらの中で、注力していこうという分野が物流投資事業だ。
― 物流が面白いと考えた理由は
最初の案件である八王子センターのケースでは、定期借地契約で、上物はオリックスが保有するのだが、定期借家契約を結んだ。つまり、20年後は上物を取り壊し、更地で戻さなければならない。20年間にキャッシュフローを回収し、それなりの利益を上げるという取り組み。そうすると、非常に厳しい賃貸契約を結ばねばならず、当初は証券化を検討したが、定期借家契約のため土地代を組み込むことができない。
結局、証券会社に支払うフィーを考えれば利益が出ない、と判断した。当時の状況を考えれば、不動産投資としては非常に難しい案件だった。しかし、キャッシュフローが安定している。物流不動産投資は地味だが、投資の観点からは「おもしろい」と感じた。いわゆる「手離れがいい」分野で、オリックスに適していると考えた。
― 手離れがいいとは
住宅、介護施設、商業施設などの不動産投資分野に比べ、メンテナンスコストを低く抑えられる。これがキャッシュフローを安定させる上で、大きな要素になる。後は仕組みをどう作るか、ということだった。このように、当初は金融的な取り組みからスタートした。金融的な取り組みとしては、八王子の物件以外に、新木場パークロジスティクスセンターがある。しかし、こうした取り組みは20年間という限られた期間の中でのものであり、条件としては制限されたものだといえる。
― 金融的な取り組みから、不動産事業にシフトしたタイミングは
2005年3月に竣工した戸田パークロジスティクスセンターから。6,000坪の跡地を購入し、1万2,000坪の倉庫を建設、埼玉県の企業に一括で借りてもらっている。この物件が、オリックスにとって本格的に物流不動産投資事業に取り組む契機となった。
― 投資物件ごとの特色は
戸田の物件以降、千葉県習志野市に開発中の住商グローバル・ロジスティクス茜浜センターは、住友商事とのジョイント・ベンチャーで取り組んでいる。この施設はフェーズ1、2と2段階の開発で、フェーズ1は既に完成、2も4月には稼動する。延床面積は9万2,000㎡で、近い時期に完成する物件の中では最大規模。住商グローバルに一括で賃貸し、荷主はジュピター・ショップチャンネル様。
完成したものとしては、ほかに兵庫県西宮市のリクサス阪神物流センター、埼玉県越谷市の越谷ロジスティクスセンターがある。この施設もやはり、一括で(株)拓洋様に借りてもらっている。越谷は2棟目の地鎮祭を終えたところ。これら以外の取り組みとしては、フットワークエクスプレスの拠点を対象とした流動化事業や、(株)ユニチャーム様保有の既存倉庫を買い取り新規テナントに賃貸した既存倉庫投資事業などの事例がある。
― 2006年の開発実績は
堺ロジスティックセンターの完成予想図
2006年は開発を中心に、これまでと比べて相当大規模なものを手掛けた。中でも最大のものが大阪府堺市の堺ロジスティクスセンター。新日本製鐵堺製鉄所の跡地の中で新日鉄、関西電力が共同保有していた2万坪の土地があり、これを一括購入した。この施設が完成すれば、延床面積15万7,200㎡の大規模なセンターとなるが、既に有力なテナント企業が出てきている。
埼玉県草加市の草加ロジスティクスセンターは、東京外かく環状道路の内側、三郷西インターチェンジから車で7分程度の好立地で、まとまった土地が出にくいところ。敷地面積は2万8,700㎡で、三井倉庫(株)様に一括で賃貸することになった。
横浜町田ICロジスティクスセンターは、これまで10年以上前から多数の会社がこの地の開発に挑戦したが、いずれも断念した経緯がある土地。地権者が10人以上と多く、幹線道路へのアクセスがなかったのが理由だが、幹線道路に面した土地を同時に購入し、最終的に3万4,300㎡の土地を取得することに成功した。不動産の難しい要素が凝縮された土地だったが、周囲に代替地は皆無で、24時間稼動も可能な環境であることから、物流施設としての価値は高い。
― 今後の開発物件もマルチテナント型が中心となるのか
テナントが前もって決定していなくても、物流用地としてポテンシャルが高いと判断した場合は、積極的に投資をしていく。
― ファンドとの関わりは
これまではほぼ自前の資金で開発、投資してきた。ノンリコースローンもほとんど利用していないが、土地を押さえる際、スピーディに対応できる点で、こうした自前資金が強みになっている。
SPCを立てて、ファンドからの投資を受けて…というプロセスを経ると、どうしても意思決定のスピードで劣ってしまう。これを理由に、オリックスは100%自前の資金で取り組んでいる。
― 今後も自前資金での開発に徹するのか
土地の取得については、今後も自前資金となる。しかし、土地購入後に建物を作る際には、リスク分散の観点からノンリコースローンを利用したり、共同投資家を探すといったことも考えられる。
― 物流不動産マーケットが成長を持続するための課題は
外資系の開発会社が大きなシェアを握っているが、特定のプレイヤーが圧倒的なシェアを保ち続けるというのは、テナントの立場、市場の活性化という観点の両方からみて好ましい状況ではない。一方でこのマーケットを切り開いたのが外資というのも事実。開発会社の新規参入が増えること、2番手3番手のオリックスのような会社がシェアをのばしていくことが、健全な物流不動産マーケットに必要ではないか。
― 2007年の投資目標額は
当面の目標として、アセットを積み上げていきたい。今後も適した物件があれば積極的に投資をしていきたい。
オリックス・リアルエステート株式会社 会社データ
設立年月:1999年3月11日
事業内容:
●オフィス・住宅・商業施設・物流施設等の投資企画商品の開発、購入
●オフィス・住宅・商業施設・物流施設等のリーシング、バリューアップ、売却およびアセットマネジメント業務
所在地 : 本社 東京都港区浜松町2-4-1 世界貿易センタービル
代表取締役:西名 弘明(オリックス株式会社 取締役兼執行役副社長)
http://www.orix.co.jp/ore/logistics/index.htm
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