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資生堂/ロジスティクス部長インタビュー

2007年04月01日/未分類

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物流アウトソーシングした資生堂

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岡崎 和夫氏(ロジスティクス部長)

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関東物流センター

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近畿商品センター

「成長と躍進」を掲げた3か年計画(2005-2007年度)の最終年度を迎えようとしている(株)資生堂。販売チャネル構造が大きく変化し、量販店などの小売店がロジスティクス機能でも大きな影響力を発揮する中、同社は将来のロジスティクス戦略を方向付ける岐路に立っていた。

めまぐるしく変化し続ける流通環境に、資生堂が出した答えは「(株)日立物流への物流アウトソーシング」。業界トップが決断した経緯は何だったのか、その狙いは――。資生堂ロジスティクス部の岡崎和夫氏に聞いた。

課題/チャネル構造が変化
― ロジスティクス部の機能は

現在のロジスティクス部がカバーしているのは国内のロジスティクス分野で、アイテムごとの需要予測、生産数量のコントロール、在庫管理、各センターへの供給業務を行っている。実際の物流は(株)資生堂物流サービスが行い、ロジスティクス部が総括管理している。

― 海外のロジスティクスはどの部門が担当しているのか

海外と国内のロジスティクス部門を同じ本部の中に置いた時期もあったが、一元的に担当するのが効率的とはいえないと判断し、各事業部門がロジスティクス機能を併せ持つ形にしている。

― 売上高に占める物流コスト比率は

物流コスト比率は約4%。資生堂物流サービスがいくつかの関連会社の物流も担当しているが、資生堂ロジスティクス部がカバーするのは、国内向け製品。ただ共通要素はあるので、横串で見ていこうという動きもある。

― 従来のセンター立地は

当時は1販社1商品センターという方針だった。しかし、その後道路網の整備、販売チャンネル・流通構造の変化にともない、この4年間で物流拠点の集約を進め、11の商品センターを8センターにした。

― 商品センターと物流センターの差異は

現在、資生堂物流サービスに委託して、関東と関西に物流センター、全国に8商品センターの10拠点を展開。工場倉庫(=物流センター)と配送倉庫(=商品センター)という考え方に基き、東西の2物流拠点と各配送拠点に位置付けて運用している。

― 資生堂物流サービスへの支払いイコール資生堂の物流費なのか

物流センターへの輸送費は工場側が負担しているなどの例外はあるが、ほぼそう考えてもらっていい。

― 2001年頃から、かなりのスピードで組織を改編しているが

当時掲げた経営改革の3本柱が、マーケティング改革、SCM改革、組織改革で、その際にロジスティクス部を独立させた。

― 当時国内の物流が抱えていた課題は

無駄な在庫を持ちすぎていた。こうした在庫を生まないようにしようと、2001年からのSCM改革の中で手掛け、2センターの統廃合など配送を含めた物流の効率化を進めた。効率化の背景には、国内の販売チャネル構造の変化が大きい。

資生堂物流サービスの設立から20年になるが、それ以前は商物分離ができておらず、全国の販売会社内に倉庫を持っていた。当時のチャネル構造は、化粧品専門店が中心だった。これが、現在は百貨店や量販店、ドラッグストアなどの「組織流通」が半分以上を占めるように大きく変化した。最初の商品センター(赤羽)は1977年の設立。そこから随時各地の商品センターを設立していった。

― どのような変化か

販売物流の分野で、小売側が独自に物流センターを運営するなど物流機能を整備し始め、メーカーが提供する物流機能活用されにくくなってきた。例えば北陸の大規模小売店には、名古屋の商品センターから出荷している。つまり、センターの立地によって、地方商品センターは出荷量が相対的に減少、都市部のセンターは逆に増加する「ねじれ」が発生している。複雑な物流構造になってしまったのだ。

― 出荷精度について

100万分の3程度。満足できるレベルだと認識している。

日立物流への一括アウトソーシング/狙いは変化対応力
― アウトソーシングに踏み切ったきっかけは

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日立物流に期待する岡崎氏

チェーンストア制度や販売会社制度など、資生堂は従来からサプライチェーンのシステムを備えていたとが、これらはすべて「川上」から作った仕組み。時代の変化とともに流通構造が変わってしまった。相対的に、流通側の主導権が強くなっている。

そうすると、物流も流通側のしくみに対応しなければならない。結果として、メーカーからみた物流は、効率が低下する要因となる。これまでも店頭起点などの改革に取り組んできたが、今後はさらにこうした傾向が強まることが見込まれることから、「抜本的に仕組みを作り変えなければならない」と考えた。

こうした考えに基き、工場再編、商品開発のあり方、メガブランド構想などを進めた。販売についても、チャネル構造の変化に合わせて動いている。やはり市場にあわせた販売体系に変化していくことが必要だと考える。

店頭で新製品を販売する際、ノルマを持って販売するのが、本当に顧客のためになっているのか。こうした一連のサプライチェーンをすべて、抜本的に見直そうと考え、現在3ヵ年計画に取り組んでいる。今回の物流一括アウトソーシングだもその取り組みの一つである。

― 物流を一括でアウトソーシングしようとした狙いは

ずっと自前物流でやってきたが、販売チャネルが大きく変化した。今後も様々な物流ニーズが出てくるだろうが、こうした変化に対応するために、自社ですべて開発していくのが本当にいいのか、と考えたのが一番のポイント。

販売の仕組みが多様化する中で、その業態それぞれに合わせて変え続けていくのか。いずれはこの部分が「コスト」となって圧しかかってくるのではないか。販売チャネルの多様化が進む環境で、さらに物流品質を向上させていこうと思えば、自前の物流は早晩限界が来るのではないか、ということ。外部で専門的な機能を持つ企業と連携したほうが、お互いにプラスになるとして、今回のアウトソーシングに踏み切った。

― 今回のアウトソーシングでは、枠組みの詳細にいたるまで資生堂が提示したのか

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アウトソーシングのスキーム
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コンペ方式で、「子会社とその従業員全員の受け入れ」「従業員の処待遇の維持」「物流資産の買取」「KPI(主要業績評価指標)の向上」「物流フィーの低減」といった条件を提示し、これら以外の提案については、コンペ参加各社にお任せした。

― 日立物流をパートナーに選んだ決め手は

資産などの買取価格が妥当だったということもあるが、提示した基本要件を全てクリアーしていたことに加え、アウトソーシング後の物流改善策が具体的で、実行可能性が高いと評価できたからである。

― 今回の枠組みの中で、資生堂としてはほかにどのようなポイントを評価しているのか

資産売却益が目的ではないので、譲渡額が高ければいいというものではない。高ければ物流コストが高くなって跳ね返ってくる。従って、株主価値からみて妥当であればいいという考え方だった。委託側、受託側がともに利益を享受できる関係を維持しつつ、最小限のコストで、今後変化する物流ニーズにもきちんと応えてくれることを期待している。

つまり、変化対応力を向上させようということだ。10年、15年先のあるべき姿が見えているなら、自社で構築するほうがいいが、大胆に変化するチャネル構造に対して、将来あるべき姿が見えないという判断から、アウトソーサーと一緒になって変化対応力をつけていこうとなった。自社だけで変化に対応する物流体制を構築することに比べ、他社にも適用できるアウトソーサーに委託したほうが、より良いサービスが提供できると考える。

― 株式市場からの評価については、どう感じているか

資生堂はこれまで、中期的計画をベースにさまざまな改革に取り組んできたが、全ての計画が必ずしも順調に進んでいたわけではなかった。今回は3年計画の3年目に当たり、発表後の株価も上昇傾向で、市場から「今回の改革は本物」と評価してもらっているのではないか。

― 今後、日立物流が変化対応していく中で、資生堂物流サービスの組織改革を行う可能性もある

当然ありえる。日立物流に対して常にベストプラクティス、アジリティを求めていくのだから、資生堂と協議しながら、日立物流が物流ニーズに対応する最適なシステムを構築していくのは、歓迎することだと思う。

― 4月からのアウトソーシング開始に向けて、現在取り組んでいることは

譲渡に伴う詳細な売却額や作業面を協議しているところで、最低限、月次の定例協議で確認しながら進めている。当面の課題は、資生堂物流サービスの社員が、より大きな物流の舞台で、気持ちよく業務を遂行できる環境、雰囲気に配慮していくことだと考えている。

― 4月以降のロジスティクス部の機能は

現行の需要予測、工場から物流センターへの供給機能に加え、日立物流と連携して最適な物流ニーズに応えていくためのチームを立ち上げる。日常的にコミュニケーションを図りながら進めることが重要だ。

― コンペの評価は

まだスタートしていないので見極める段階にないが、これまでの進捗状況は「うまくいっている」という感触を得ている。

― 委託先の日立物流が資生堂の同業他社の物流を請け負う可能性について、どのように認識しているのか

十分に考えられる。かつては「物流には企業機密があるから自前で」という考え方を持っていた時期があったかもしれないが、現在のITを駆使すればデータ管理の方法はある。日立物流もプラットホーム構想を掲げている。

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