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アビーム/食品・日雑メーカーから見た日本型SCMの将来でレポート

2010年02月18日/調査・統計

アビームコンサルティングは2月18日、常温食品や飲料を含む日本の日用雑貨(CPG)メーカーにおけるSCM施策について、在庫日数に焦点をあてたインタビューを実施した結果をまとめた、調査レポート「CPGメーカーの実態から探る日本型SCMの将来」を発表した。

日本の製造業界では、国内の市場環境悪化やコスト削減の要望、グローバル事業展開やM&Aによる事業の統廃合などによって、企業のSCMへの取り組みの重要性が増している。有益なSCM施策を探るにあたり、もっとも重要な要素である在庫レベルが欧米企業に比べて著しく少ない日本のCPGメーカーに注目し、在庫に焦点を当てた実態調査を実施した。

調査の結果、高度なSCMを構築しているCPGメーカーは、これまでセオリーとされてきた「一極集中の組織」ではなく、「自律分散型の組織」とすることで、より少ない在庫でのオペレーションを実現していることが判明した。将来像としては、より機敏に市場変化に対応する「販売計画精度の向上と需要計画との連動」に加え、グローバリゼーションへの対応としての「企業グループ全体でのSCM再編」を志向していることが明らかになった。

調査は、昨年の8月から12月にかけて、日本の中堅以上のCPGメーカーのうち常温食品メーカー14社と日用雑貨メーカー4社、計18社を対象に行った。各企業のSCMレベルを判断する基準としては、SCM部門が管理指標として用いている製商品在庫日数を使ってインタビューを実施。インタビューの項目は、SCM組織構造、SCMに関する責任と権限の配置、需給計画サイクル、需要計画、生産計画、供給計画の立案方法、在庫削減に有効といわれる各種施策の実施状況。インタビュー結果をもとに、SCMの進化過程、SCM高度化へ向けたポイントを整理した。

リサーチで調査した常温食品メーカーは、在庫日数を基準とすると大きく3つのグループに分かれる。グループ3は、在庫日数30日以上(月次生産計画)。グループ2は、在庫日数20~26日未満(週次生産計画)、グループ1は、在庫日数15日未満(日次生産調整をルール化)。

<在庫日数から見たCPGメーカー分類>
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それぞれのグループの間には、該当する企業が存在しない「在庫日数の空白期間」が存在する。在庫日数の空白期間が生じたのは、グループ1に属する企業は1990年代にはすでにある程度のSCMシステムを構築しており、グループ2に属する企業の多くは第2次SCMブームである2005年ごろから本格的に取り組んでいるという着手時期の差が原因とみられるが、全般的な傾向であるかについては検証を行う必要がある。

日用雑貨メーカーの場合、リサーチで調査した企業はいずれも在庫日数が30日以上だった。日用雑貨メーカーは生産ロット数が大きく、これが製造原価低減に寄与していること、廃棄リスクが比較的少ないことなどから、現在の在庫レベルの適否については一概に判断ができない。だが、日用雑貨メーカーに在庫削減の余地がないということではない。

グループ1とグループ3ではSCMに関連する機能が分散型に組織配置されているが、グループ2では過半数がSCM機能を集中化している。グループ1の分散型組織は、分散された機能を担う組織がそれぞれ自律的に市場変化に対応している点が、グループ3とは異なる。グループ1の分散型組織を、レポートでは「自律分散型組織」と位置づけた。グループ1企業群はすべて、過去に集中型組織形態を採ったことがある。

グループ3からグループ2に移行する(生産計画を月次計画から週次計画に変える)ためには、需要計画と生産計画の連携強化が必要となり、その達成手段としてSCM機能の集中化が有効だ。計画立案機能を集中化することにより、生産・営業部門は在庫削減という目標について認識を一にすることができる。

グループ2からグループ1に移行するためには、市場に即応するように、需給管理を自律分散型の組織体制とし、全社で合意された生産日次調整ルールを導入することが有効だ。グループ1企業が目指しているSCM高度化の方向性は2つある。まず、市場変化の早期把握を目的とした、販売計画精度向上と需要計画の連動(デマンド面での連携強化)。グローバリゼーションやポストM&A時の効果の早期享受を目的とした、企業グループ全体でのSCM再編(サプライ面での連携強化)。2つの方向性は業種によって実現の難易度は異なるが、双方を同時に狙うことが可能だ。

<需給管理機能の集中度と在庫日数>
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<在庫削減に向けたステップ>
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調査を受け、プロセス&テクノロジー事業部プリンシパルの安井正樹氏は、「中堅以上の規模のCPGメーカーでは、すでに大半の企業が、需給計画の週次化を終えている。このBPRを実現するための手段として、SCMの一極集中型組織の構築が行なわれた。次の段階は、各人の能力を活かす自律分散型のSCM。全社共通目的である経営目標の達成に向け、それぞれが変化を察知し、自ら判断し、対応することによって、迅速なサプライチェーンを実現できる。自律化が求められるのは、営業も例外ではない。商品特性によっては、営業が販売計画精度をアイテム別に販売直前まで高め、計画どおりに売り切るというS&OP(Sales & Operations Planning)の導入も、今後増えてくるだろう。SCPシステムについても、蓄積された組織ナレッジを活かすために、パッケージを用いたBPRから、スクラッチ開発へと移っていくことも想定される」と話している。

<説明する安井プリンシパル>
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アビームコンサルティング
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