フィジカルインターネットセンター(JPIC)は6月27日、東京国際フォーラムにおいて、CLOカンファレンス2025「物流の新たな潮流、企業成長を加速せよ」を、現地とオンラインで開催した。
開会に先立ち、JPICの森隆行理事長が挨拶。「今春、物流効率化法改正により、CLO(物流統括管理者)設置が義務化されたこともあり会員が増え、現在74社となっている」と報告した。
また、CLOに対応するカウンターパートナーとして、物流サービスの提供企業の責任者を「LPD」(ロジスティクス・プロデューサー)と名付けたことを発表した。
LPDは、CLOと対等に議論・交渉できる視座・職務権限、能力を持つ物流事業者・サービスプロバイダーの経営層を意味する。
森理事長はJPICの今後の活動について、「物流は所有からシェアの時代。持続的で環境に優しい物流システム構築を目指していきたい」と展望を語った。
続いて経済産業省 商務・サービスグループの平林孝之課長が、「改正物流効率化法にて求められる、物流統括管理者の役割」と題し講演した。
このなかで平林課長は、CLO選任が義務付けられる特定事業者の指定基準等について「取扱貨物の重量が9万トン以上の(上位3200社程度)を省令で定める予定」とし、CLOには事業運営上の重要な地位につく者を充てなければならない旨などを説明した。
またCLOの役割について「荷主と荷主、荷主と物流事業者間の関係をつなぐ『外交』の責任者」とし、今後のサプライチェーンマネジメント(SCM)のあり方について、「物流の能力が競争力を左右する時代、企業は物流も統合したSCMを確立するため、経営をDXすべき」との見解を示した。
パネルディスカッションでは、イオングローバルSCMの山本浩喜社長、野村不動産 物流事業部の宮地伸史郎副部長、三菱食品の田村幸士常務SCM統括兼CLO、ヤマト運輸の小菅泰治会長が登壇。
モデレーターを務めた野村総合研究所の藤野直明シニアチーフストラテジストはまず、「政府主導ではなく、企業成長のために戦略的にCLOを位置づけるべき。CLOを支える「責任と権限」のバランスのとれた健全な組織設計が必要だ」と自論を語り、物流事業者側にとっても「CLOが誕生した今、LPD(ロジスティクスプロデューサー)として、3PL企業、LLP等が本格的に活躍できる事業環境が到来した」と議論を切り出した。
イオングローバルの山本社長は自社の取組みついて「上流から下流まで、いかに効率化を図るかという視点で進めている。課題となっているのは人手不足、作業時間が制約される中での短いリードタイムや季節波動。今後、法改正に対応し荷待ち、積載率の向上をいかに形にしていくか、計画的な物流体制に移行しないと改善が図れない。物流センターだけでなく全体最適やシステムを含む情報連携が必要だ。需要予測型体制への移行により効率化を図っていきたい」と述べた。
同社は物流だけでなく店舗を含め、成功事例をつくり全国に水平展開を進めている。
三菱食品の田村常務は、「我々はメーカーと小売りを繋ぐ立場。着荷主・発荷主両方の役割を持っている。配送を丸投げしているにもかかわらず、メーカーに対しては着荷主の立場をとっていた。営業都合優先の部分最適も反省点。可視化、最適化、持続可能化の3つにスポットを当てて取り組んでいる」と現状を語った。
また、従来からの物流委託先に加え、物流の革新を先導するスタートアップや大学などの研究機関とコラボにも取り組んでいるという。
藤野氏から「物流部長では難しいCLOでしかできないことは?」と問われると、「物流部長の最大ミッションはコストと品質。CLOは事業経営に重要なポジション。いかに会社全体の企業価値を最大化するか。環境、労務、ステークホルダーなど持続可能性にも配慮し、端的にいえば物流コストが上がっても、株価が上がればいい。これこそがCLOのミッション」と回答。
山本社長は「最近、物流コストをかけても運ベなくなっているという実感がある。運べなくなると小売業は成り立たない、サプライチェーン全体の最適化には構造改革が必要。その役割は物流部長ではなく、CLOだ。共同配送を推進する外交的な役割もある」と語った。
野村不動産の宮地副部長は、自社の物流施設を活用した物流DX推進プラットフォーム「テクラム」を紹介。「CLOの役割はモノの流れを可視化して、最適化に取り組むこと。交流の場としてテクラムを積極的に活用してほしい」と述べた。
LPD(ロジスティクス・プロデューサー)の立場となる、ヤマト運輸の小菅会長は「持続可能な物流と環境に対応していくためには、オープンな物流プラットフォームが必要」とし、そのための自社の取組みとして、ボックスチャーターやSST便の事例を紹介。そのうえで、「日本の物流課題解決にはCLOとLPDがセットになってやっていかないと上手くいかない。ぜひJPICのなかで議論をし、よりよい物流環境を築きあげていこう」と呼びかけた。
この後、パネルディスカッションでは「CLOとLPDが対等なパートナーとして関係を築いていくためにどうすればよいか」などのテーマについて活発な意見が交わされた。