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農林水産省/「食品流通の効率化等に関する研究会」論点整理

2002年12月22日/未分類

農林水産省は、食品流通を取り巻く情勢の変化に対応した食品流通の効率化・高度化を図るための改革の方向等について、「食品流通の効率化等に関する研究会」を設け、議論を頂き、これまでの論点整理がまとめた。
「食品流通の効率化等に関する研究会」論点整理
 
はじめに
・食品流通は、安全で良質な食品を生産者から消費者まで、安定的かつ効率的に供給する役割を担っており、その的確な機能発揮を確保するため、卸売市場制度等各般の施策が講じられている。
 
・食品流通を取り巻く情勢については、我が国の経済社会構造、国民の生活スタイルや消費者の食品に対するニーズが変化するとともに、輸入食品が増加するなどの食品の供給構造が変化しており、これに対応して、食品流通の効率化、高度化をはじめとする構造改革が求められている。
特にデフレ経済の継続、社会の成熟化等の下で、消費者の食生活の安定向上を図るため、農水産物の生産・流通を通じた高コスト構造の是正を図ることが喫緊の課題となっている。
 
・本研究会は、こうした情勢に対応して食品流通の効率化等を図るための改革の方向、関連施策のあり方について、本年7月以来、関係者からのヒヤリングも行い検討を重ねてきたところである。
 
・この論点整理は、これまでの本研究会での議論に基づき、今後、更に検討を深めるに先立って、生鮮食料品流通の現状認識と基本的な方向について取りまとめたものである。
Ⅰ 食品流通の現状と課題
1 食品流通を巡る状況の変化
(消費者の食料消費等の動向)
・消費者の食品に対するニーズは、高齢化の進展、健康志向の高まりなどを背景として、安全性や安心に対する要求が高まっている。また、近年の国民の生活スタイルの変化、デフレ経済の継続などを反映して、外食、中食等の食の外部化、利便性・簡便性を追求するほか、食品の品質・機能性等に応じた価格選択の志向が強まっている。
 
・食品の購買においては、土日のまとめ買い、単身者をはじめとした最寄り当用買いの増加に対応して、大規模小売店、コンビニエンスストアからの購入割合が増加している。
 
・国民の食の安全・安心に対する関心の高まりに伴い、「顔の見える商品」、個性化商品への志向が高まっており、これに関連して、食品の生産・流通段階についての情報の整理や的確な提供が求められている。
 
(産地の出荷・販売の変化)
・産地においては、農協合併による出荷団体の大型化が進展する中で、出荷ロットの大型化、安定的な出荷先の確保が進められている。また、価格低下や輸入農産物との競争に対処し、生産者の手取りを確保するため、生産、流通面における高付加価値化、流通コスト削減などの取組が進められている。
 
・こうした動きの中で、出荷先となる卸売市場の絞り込みが行われるほか、産地と小売店や実需者との間での直接取引、消費者への直接販売等の多元的な販路の開発が進められている。また、食の安全・安心に対する消費者の関心の高まりに応えるため、契約栽培や直接販売が拡大する傾向にある。
 
(外食、中食等の動向)
・加工・外食等の実需者サイドは、消費者の健康志向、食材に対するこだわり志向等の要請への対応の充実とともに、経営の安定や効率化を図るため、食材調達に関して、継続的かつ安定的なルートの開発を進めており、生産者との契約栽培や海外からの食材調達への依存が増加している。
 
(食品卸売業の動向)
・食品卸売業では、大規模小売チェーンの拡大や直接仕入れ等が進む中で、加工食品卸売業では、小売業界等のニーズに対応する品揃えの拡大と併せ、再編・統合や系列化が急速に進んでいる。一方で、生鮮食品卸売業では、店舗数の減少が緩やかに推移している等再編・統合が進んでいない状況にある。
 
・また、海外の大手流通資本の進出や異業種の食品の卸売、物流分野への新規参入が増加し、チャネルの多元化も進んでいる。
 
(食品小売業の動向)
・食品小売業では、食品スーパー、コンビニエンスストアなどのシェアが拡大しており、また、経営面では、近年の景気低迷や価格不振等の影響もあり、生産性や収益性が低下している。
 
・食品スーパー等量販店では、消費者の健康志向や安全に対するニーズの高まりに応えるため、特別の栽培方法、品質管理にこだわった商品の品揃えなどのブランド化に取り組んでいる。
また、低価格競争を展開する中で、ローコスト管理の徹底を進める一方、バイングパワーを背景とした納入業者への過剰な要請が問題となっている。
 
・食品専門小売店は、対面販売など地域に密着した食品販売活動により消費者の食生活を支えるとともに、大規模小売業との公正な競争を通じた消費者への多様な選択の提供等を果たしている。しかしながら、近年、担い手の高齢化、後継者の確保難等から店舗数が減少傾向にあることから、商店街において空店舗が生じ、高齢者をはじめとするモビリティーの低い消費者などの地域住民の利便性の低下を招いているとの指摘がある。
 
(卸売市場流通)
・生鮮食料品の流通においては、卸売市場流通が基幹的な役割を果たしているが、市場経由率が低下する傾向で推移するとともに、近年の価格低下も重なり、取扱金額の減少が著しい。
 
・また、生鮮食料品流通の広域化や産地の大型化、遠隔地化が進んでおり、卸売市場の集荷先も広域化するとともに、生産者の出荷が大規模集散市場へ集中する一方で、中小の卸売市場では、集荷力が低下し、集荷を転送に依存する割合が高くなっている。
 
・こうした経営環境の下で、取扱金額の低下に比べコスト削減等の経営合理化、効率化が遅れていることもあり、卸売業者、仲卸業者の収益性が低下し、経営が悪化している。
2 食品流通の効率化等の基本的な考え方
・こうした食品流通を取り巻く状況に対処するため、食品流通全体を通じたコスト削減、合理化などの効率化や消費者ニーズや社会経済情勢の変化に柔軟かつ的確に対応するシステムの整備が急がれる。
 
・食品流通の効率化に当たっては、食品を最終的に消費する消費者の利益を第一に考えたシステム構築を最優先すべきであり、消費者の志向する価格・品質で安全・安心な食品を安定的かつ効率的に供給し、その中で消費者が多様な選択ができるようにすることが重要である。
 
・このため、民間の自由な競争環境の拡大を基本として食品流通の効率化を促進することが必要であり、このような観点からの規制緩和を進めることが重要である。
 
・この場合、食品の安全性や円滑かつ安定的な供給の確保など消費者の利便確保、環境問題への適切な対応等に配慮し、食品流通システムの円滑な機能発揮を図りつつ、確実な改革を進めていくことが重要である。
 
・このような効率化等の取組を通じて、卸売市場流通と市場外の様々な流通が相互に公正な競争を行い、食品流通全体として、効率的で利便性の高いシステムを構築していくことが重要である。
 
3 食品流通の効率化等の方向
(物流の改善)
・食品流通の効率化を進めるためには、ITの進展、物流技術の革新等を踏まえて、これらの技術の積極的な導入・活用を促進することが重要である。
 
・特に、今後、多様化、複雑化する消費者や実需者のニーズに対応し、取引や物流の多様化などのきめ細かな対応を効率的かつ確実に実施するためには、ITの導入・活用の促進が喫緊の課題である。
 
・出荷段階においては、選別や調製の時間短縮等の効率化を図るため、規格の簡素化を進めるとともに、コンテナ輸送の活用を検討することが必要である。こうした取組は、環境負荷低減にも寄与することが期待される。
 
(フードシステムとしての連携・協調)
・食品流通は、生産者から消費者へ届く供給行程において、多数の関係者がそれぞれ役割を分担し、連携することによって機能する。しかしながら、関係者による連携・協調した品質管理、効率化、情報伝達等の取組が十分に行われず、その取組の効果発現が低下するなどの問題が生じている。
 
・食品流通の効率化を図るためには、生産、流通、消費の流通ルートに携わる関係者が、効率化や商品供給力の向上のために、一連のフードシステムとして連携・協調した取組を充実強化することが必要である。
 
(加工、調製への対応)
・外食、加工等の業務用需要や簡便化志向等消費者ニーズに対応する安定的な供給、物流の効率化を図るため、生産サイドと流通サイドが一体となった商品開発、供給を行うとともに、生鮮食料品についての一次加工品へのニーズに対応するため、生産・流通段階における効率的な加工・調製を進めることが必要である。
 
・こうした生鮮食料品の一次加工流通の促進は、流通の効率化に加えて、農山漁村の地域振興や環境対策を図る上でも効果が期待される。
 
(担い手の活性化)
・生鮮食品卸売業については、収益性が低下しているにもかかわらず、再編・統合等経営の合理化・効率化が遅れている。生鮮食品卸売業の経営の効率化、事業体質の強化を図るため、業者間の合併・統合、連携を進めるとともに、加工、サービスの充実等業務の多角化を進めることが必要となっている。
 
・食品専門小売店は、消費者の身近に接している利点を活かし、加工・サービスの取組、こだわり志向への対応等のそれぞれの地域の特性や小売店の個性を発揮するとともに、個別事業者のネットワーク化による集中仕入れ、鮮度管理等の協業化等を進め、魅力ある店舗作りを図ることが求められる。
 
(食の安全・安心への対応)
・食品の流通段階において、食の安全・安心への要請に応えた的確な対応の充実が一層重要となっている。
 
・このため、流通の各段階において、品質管理や適正な表示の徹底を図るとともに、流通段階を通じた一貫した品質維持のためのコールドチェーンシステムの整備、生産・流通段階における情報を確実かつ正確に消費者等に伝達するためのトレーサービリティシステムの整備等の取組をさらに充実することが必要である。
Ⅱ 卸売市場流通について
 
1 卸売市場流通システムの評価
(基幹的な流通機構)
・卸売市場は、国民の食生活に欠くことのできない生鮮食料品等の流通において、安定的な供給や公正な価格形成等の機能を有し、基幹的な流通機構としての役割を果たしている。
 
・一方で、近年、情報化の進展に加え、流通技術の発達により、消費者、実需者のニーズや商品特性に応じて、多元的な流通経路が展開される中で、卸売市場の経由率が低下している。
 
(品揃え機能)
・欧米における生鮮食料品の流通とは異なり、我が国では多様な生鮮食料品を食する食文化が形成されている。卸売市場は、優れたワンストップショッピング性を発揮することによって、我が国の食文化に適合した生鮮食料品の効率的な流通システムとして機能している。
 
・一方で、卸売市場流通においては、卸売業者と仲卸業者等との役割分担の下で公正な競争による取引の実現が図られているが、この役割の分担により卸売業者と仲卸業者との間において情報の共有化が不十分となっており、消費者、小売業者等のニーズや産地の商品情報の円滑な伝達や的確な対応の遅れを招いているとの指摘がある。
 
・特に、差別化商品の供給や、量、価格、品質面での安定的な商品の供給において、消費者や実需者のニーズに十分応えるものになっていないとの 指摘がある。
 
(集分荷機能)
・大量かつ多品目で多様な生鮮食料品等について、流通関係者が一つの場所に一堂に会することによって、極めて短時間のうちに確実に集分荷を行う効率的なシステムとしての機能を有している。
 
・一方で、こうした集分荷機能を確保するため、原則として卸売市場内に全品を搬入して取引することとしているが、このことが、市場の狭隘化を招くとともに、物流技術の進展、大規模小売店の郊外展開等への柔軟な対応の遅れを招いている。
 
(価格形成機能)
・生鮮食料品等の価格形成は、中央卸売市場が全国的な指標として機能している。一方で、生産者による直接販売や実需者等との直接取引等の多元的な流通ルートが形成され、サービスやルートの違いにより多様な価格形成が行われている。
 
(代金決済機能等)
・卸売市場は、出荷された農水産物について、全量引取り、期日内の確実な代金決済を保証するシステムとして、国内農水産業にとって重要な販路を提供している。
 
・反面、質・量を問わない全量受託システムは、出荷される農水産物を原則として差別なく引き受けることにおいて、優位な産地の健全な発展・育成に悪影響を与えているとの指摘もある。
また、国民の食品に対する安全・安心の要請に応えるため、衛生チェックの強化、トレーサビリティに対するニーズへの適切な対応等食品の安全性確保への対応を充実強化することが必要となっている。
 
 
2 卸売市場流通の効率化等の考え方
・卸売市場における生鮮食料品流通は、基本的には民間事業者による営業活動として担われている。卸売市場流通の効率化を進めるに当たっては、食品流通ニーズの変化に柔軟に対応できるよう、民間による経営革新の積極的な発揮を促進することを基本とすべきであり、そのための規制緩和等制度の見直しを進める必要がある。
 
・その際、卸売市場が国民の日々の食生活に欠かすことのできない安全で安心な生鮮食料品を安定的に供給する役割を担っていること等を踏まえて、消費者利便の確保や国内農水産業の健全な発展にも配慮することが必要である。
 
・卸売業者等の経営問題については、民間企業として一層の自己責任に基づき対応すべきであり、そのためには、ビジネスによる経営革新、意識改革が重要である。
 
 
3 卸売市場流通の効率化等の方向
(卸売業者、仲卸業者の連携強化)
・流通の効率化を促進するためには、需要サイドの情報の正確な把握と需要に対する的確な供給が重要である。卸売市場流通の効率化を進めるために、卸売業者と仲卸業者とが産地、実需者等と連携し、消費情報や商品情報の提供、商品開発等の機能を充実強化することが求められる。
 
・こうした取組は、卸売市場が中心的な仕入先となっている食料専門小売店等の中小事業者の安定的な調達や活性化にも資することが期待される。
 
(物流面での効率化等)
・ITを取り入れた新たな流通手段が生まれており、物流面での効率化を進めるためには、卸売市場流通においてもこれに積極的に対応することが求められる。ITや物流技術の進展等を積極的に活用した効率的な流通システムを形成するため、商物分離取引の拡大等市場取引等に関する規制の緩和を進めることが求められる。
 
・交通事情や物流技術の向上により、生鮮食料品の広域流通が進んでおり、こうした中で、品揃え、集荷力の向上、効率化を図るためには、今後、単に一つの市場で卸売機能を行うだけでなく、複数の卸売市場が連携し、機能分担することを進めることが必要であり、このための市場取引等に関する規制の緩和を図ることが求められる。
 
・特に、地方の中小の卸売市場においては、中核となる卸売市場を中心として周辺卸売市場のネットワーク化により集荷力の向上等を図ることが求められる。
 
(卸売市場の効率的な整備・運営等)
・中央卸売市場については、地方公共団体が卸売市場の整備、運営を行っているが、卸売市場の適正かつ健全な運営を確保するため、市場経営の一層の効率化を図ることとし、例えば、整備手法の多様化や関係事業者が自主的な整備を行うなど民間活力の活用等による市場整備・運営の多様化を図ることが求められる。
 
・また、大規模小売店、外食等の広域チェーン展開、首都圏等の交通混雑等に対応して、今後、卸売市場の配置等についても見直すことが求められている。
 
(卸売手数料の弾力化)
・卸売業者が、出荷者や買受け者のニーズに応えて、取引内容やサービスの多様化に即応し、柔軟な収益構造を実現するとともに、流通実態に即応し、卸売市場流通が魅力ある発展を図るためには、機能・サービスに見合った手数料を弾力的に徴収できるようにすることが求められる。
 
・なお、その対応に当たっては、卸売業者が手数料収入に大きく依存している実態等を踏まえ、一定期間をかけて進めることを検討する必要がある。また、あわせて、業務等に関する規制の緩和、卸売業者の合併等の経営対策を検討する必要がある。
 
(市場関係事業者の体質強化等)
・卸売市場流通を取り巻く環境が厳しくなっている中で、卸売業者、仲卸業者の収益状況が悪化し、財務内容が劣化している業者もでている。卸売業者については、財務基準に基づく自己責任により一層の経営改善を進めるとともに、仲卸業者についても経営の自己管理と改善を促す必要がある。
 
・産地や小売の大型化に対応して、卸売市場が公正な取引の場として機能を発揮するためには、卸売市場の関係事業者の機能強化を図り、産地からの集荷、小売への販売の面で対等な取引関係を実現することが重要である。このため、卸売業者、仲卸業者について、業者間の合併・統合を進めるとともに、業務内容の拡充・多角化等企業活動の自由度を高めるような規制の見直しを図ることが求められる。この場合、卸売市場の再編・統合を進めることも視野に置いて検討すべきである。
 
(取引の情報開示)
・予約相対取引や相対取引が進んでおり、自由な取引の幅が拡大しているが、一方で、その決定過程が当事者間でも明確でないとの指摘もある。今後、卸売市場流通が健全な発展を図るためには、卸売市場の役割と市場関係事業者の民間企業としての活動との関係も踏まえつつ、取引の情報開示のあり方について検討することが求められる。
 
(食の安全・安心の確保への対応)
・卸売市場は、生鮮食料品流通の基幹的な流通機構としての役割を果たしていることから、卸売市場段階における食品の安全性確保の一層の徹底・強化が重要である。また、取扱商品にふさわしいトレーサービリティへの的確な対応が求められる。
 
おわりに
この論点整理をもとに、今後さらに食品流通の効率化・高度化のあり方について検討を深めることとする。
その場合、行政における制度見直し等の検討とあわせて、食品流通業界が自らの問題として取り組むべき課題について明確にすることが重要である。
また、構造改革を進めるに当たっては、時期を限って可及的速やかに、その円滑かつ確実な実施を図るためにも、改革のビジョンと具体的なスケジュールを明確にすることが重要である。

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