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農林水産省/食品流通の構造改善方針、食品物流コスト縮減

2007年04月17日/SCM・経営

農林水産省は、今後5年間の食品流通について、政府として行う構造改善策を策定した。消費者意識の変化などでインターネットでの販売増加、有機食品の品揃えに配慮した店舗展開など食品流通の変化が著しいとの認識を示す一方、食料自給率を45%に引き上げるためには流通段階を含む食品供給コストを縮減することが緊急の課題――として、政府レベルで取り組むべき課題を定めたもの。

基本方針としては、①産地から消費者への生鮮食品②産地から加工・業務用需要者への生鮮食品③食品製造業者から消費者への加工食品、の3ルートの流通に大別し、卸売市場を通過しない流通産地直送型流通への対応を図るとともに、中食需要への国産生鮮食品供給を増やすために、需要先に応じた多様な規格への対応、定時・定量出荷など、卸売市場を介したものも含めて強化すべき、としている。

食品製造業者から消費者への加工食品の流通についても、現状は事業者ごとに配送用容器の規格が異なるまま進められているとして、容器規格の統一や取引情報の統一を社会基盤整備に位置付けたうえで、共通する課題として業種間の連携強化が必要、としている。

こうした基本方針に沿って、①流通”機構”の合理化のための構造改善②流通”機能”の高度化のための構造改善に分けて具体策を策定。

流通機構の合理化に向けては、ICタグなどの普及や開発中の技術を用いた実証実験、規格の標準化などの諸策を、食品供給コスト縮減アクションプランに沿って推進。産直など流通経路が多様化している現状を踏まえ、卸売り市場関係者の積極的な取り組みを促すとともに、産地と食品製造業者、販売業者の連携などニーズに応じた「多元的な」流通展開を図るとした。

また、ユビキタス・コンピューティング技術などを活用して、現在部分的に行われているる受発注、在庫管理、配送、決済の電子化などの取組を、生産、流通、小売まで一連の流通行程で統一的なシステムを展開し、取引の効率化を推進することが重要、と指摘している。

流通機能の高度化については、食の安全の確保といった観点から、トレーサビリティシステムの普及を促し、情報提供機能をより強化していくべきとした。

構造改善事業では、①食品生産製造など提携事業②卸売市場機能高度化事業③食品販売業近代化事業④食品商業集積施設整備事業⑤新技術研究開発事業――の5事業ごとに策定した。

<具体的な施策は次の通り>
このうち卸売事業高度化事業では、消費者ニーズの多様化・高度化に対応した物流や卸売市場業務の合理化・効率化、コールドチェーンの確立など品質管理の向上に必要な施設・体制の整備により、卸売市場の機能の高度化を図ることを目標に設定。

産地、卸売市場、小売など各段階での合理化を通じた産地から小売までの流通コストの低減のために必要となる自動仕分搬送保管施設、一貫パレチゼーションなどを推進する。また、一定の広いエリア内で中核的な役割を担う卸売市場を指定し、域内の卸売市場の活性化を図る。

食品販売業近代化事業では、食料供給コストの縮減を推進するため、事業の共同化を進めつつ、インターネットを活用した販売、総菜宅配など多様な食料供給の展開、電子タグを活用した物流管理や電子商取引システムの導入、衛生管理の強化により、食品販売業の業務の合理化、機能の高度化などを図る。

このため、食品の販売に関わる業務のうち、仕入れ、仕分、処理、加工、保管、配送、衛生、廃棄物処理、受発注処理、電子データ交換、後継者育成、宣伝など食品の販売に係る業務のいずれかの業務についての共同化を行う。

これに際し、共同仕入配送センター、共同処理加工施設、共同倉庫、共同冷蔵庫、共同
冷凍庫、共同廃棄物処理施設、共同情報処理施設、共同研修施設、共同会議施設などの施設を整備する。

食品品質管理施設の整備、食品の荷さばき業務用施設の整備その他食品の販売についての業務用施設の近代化を図るための措置としては、冷蔵庫、冷凍庫、多温度帯輸送車、活魚槽などの品質管理施設、自動荷さばき施設、荷受け施設の荷さばき業務施設、廃棄物処理施設の環境への負荷の低減、資源の有効利用の確保を図るための施設などを整備する。

新技術研究開発事業では、食品の出荷の効率化を図るための仕分け自動化技術、多品目の生鮮食品の一括輸送を図るための多温度帯一括輸送技術、野菜流通・販売での一貫ばら輸送技術、生鮮食品などにおける取引情報の効率化を図るための受発注システムなど食品流通の円滑化についての技術開発を行う。

食品流通部門の構造改善促進については、流通機構の合理化のための構造改善の促進として、食料供給コストを縮減するため、アクションプランに基づく取組を行うとともに、実需者、消費者ニーズを踏まえた流通の合理化、効率化を推進する。

卸売市場については、市場の再編・合理化、商物分離電子商取引によるダイレクト物流導入市場の拡大、卸売手数料の弾力化、卸売市場管理運営への民間活力の導入などにより効率的な卸売市場流通を推進する。

このうち物流の効率化については、①通い容器の普及②配送の共同化③電子タグなどのIT技術を活用した流通システムの構築――のほか、青果物輸送のモーダルシフト(トラック輸送から鉄道輸送などへの転換)促進に向け、ロットの確保や帰り荷の確保といった課題の克服に向けた検討を行うとともに、食品小売業で適正仕入れなどを実現するコスト低減のビジネスモデルの実証・普及、消費者に対する商品情報の伝達機能の強化を推進する。

卸売市場を核とした加工・物流機能の強化として、保存性が低いなど長距離輸送に向かない一次加工品の効率的な加工・調製を行うためには、青果・水産物の流通量の6-7割が集荷・分荷される卸売市場とその周辺で加工・物流機能の強化を図ることが廃棄物の効率的なリサイクル処理など環境対策の観点からも効果的、として、事例紹介に努める。

トレーサビリティ・システムなどへの対応を進めるため、生産、卸売市場、小売といった各流通段階で幅広く食品関連事業者が参加する統一的な電子商取引システムを開発し、その普及を図る。

流通機能の高度化のための構造改善を促進するための施策としては、産地から消費地までの一貫したコールドチェーンを展開することにより、高鮮度流通と腐敗などによる廃棄量の低減を実現するため、低温卸売場などの整備を促進するとともに、卸売市場での品質管理の高度化に向けた規範策定のためのマニュアルの普及・定着を促進する。

消費者の信頼の確保の観点から、生産段階ではJAグループによる「生産履歴記帳運動」の展開、小売段階では店頭で生産段階の情報(生産者の写真、所在地など)を提供するなどトレーサビリティに対応した取組の広がりも見られ、流通段階でもさらなる広範な取組が期待されている、として、流通の各段階で、取引実態に合った仕入先の確認が可能となる方法により、トレーサビリティの普及を図る。

環境負荷の低減などへの取組としては、総合物流施策大綱(平成17年11月15日閣議決定)などに基き、環境負荷の低減につながるモーダルシフト、配送の共同化、物流拠点の高度化・効率化などを促進。合理的・効率的で環境にやさしい物流の実現を図る。構造改善事業により省エネ機器の導入を含め環境配慮型の食品流通へのシフトを推進する。

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