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情報学研究所/ICタグ利用の温室効果ガス排出量取引、新方法発明

2008年12月16日/IT・機器

国立情報学研究所(以下:NII)の佐藤一郎教授が、CO2などの温室効果ガスの排出量取引(排出権取引)の新しい方法を発明した。

商品などに添付されるICタグを利用することにより、排出枠の移転と排出量取引の手続きの問題を解決することに成功したもので、商品の生産から物流、小売りのすべての段階で、商品に温室効果ガスの排出枠を添付することができるようになり、ICタグを通じて排出枠を有価証券または貨幣のように使用可能にする。

<排出枠による部品の選択とそれによる排出量削減効果例>
20081215co2.jpg

この結果、排出量取引やカーボンオフセットがICタグの受け渡しだけで完了し、大幅に簡素化されるとともに、排出枠という新しい経済的インセンティブを与えることもできる。また、ICタグを通じて排出枠の詳細情報を参照できるようにしており、排出枠のサブプライムローン問題化を防ぎ、安全な排出量取引市場の構築・発展においても重要な方法となる。

本発明者の佐藤一郎は、プログラム解析手法を使った共同物流のトラック経路の選択手法など、ITを使ったCO2削減手法を提案・実施してきており、今回の発明は削減したCO2排出量を有効に活かす方法として、排出量取引に情報技術を応用することで、排出量取引の諸問題の解決をはかった。なお、発明者はICタグの国際規格(ISO)の規格委員であり、ICタグに関する知識を最大限活かすことで、新
しい排出量取引方法を実現した。

今回の発明は、生産から物流、小売りまでのすべての取引においてその商品だけでなく、排出枠もいっしょに取引できるようにするため、物流・在庫管理に用いられているICタグを利用する。

既存の物流・在庫管理では、ICタグは商品などに添付され、ICタグから商品情報などを参照できるようになっているが、この発明では商品に添付された排出枠に関する情報も扱えるようにし、さらに商品に添付した排出枠の決済、排出枠を販売者から購買者に移転をするときは、ICタグを販売者に返却することで実現できるようにしている。

なお、ICタグの返却により排出枠の決済する方法は従来にはないだけでなく、排出量取引における複雑な電子的手続きを不要化して、同時にICタグを排出枠を表す有価証券または貨幣として使えるようにする。

商品への排出枠添付とその決済(移転)方法は、販売者は商品に添付する排出枠の重量を決め、排出枠口座データベースからその添付排出枠の分を別口座(引当口座)に移す。

次に、販売者はICタグを商品に貼り、ICタグの識別子と排出枠に関する情報を関連づけ、これによりICタグを介して商品に排出枠が添付されることになるとともに、ICタグを介して商品に添付された排出枠の詳細情報を調べられるようにしている。

商品の購買者は商品からICタグを外して、そのICタグを返却すると、そのICタグの識別子から、ICタグに関連づけられた排出枠の情報を調べます。そして販売者の引当口座から添付排出枠分を引き出す。

そして、引き出した排出枠を購買者の排出枠口座に移転し、ICタグの識別子と排出枠の関連付けを消すことで、ICタグは他の排出枠の添付に再び使えるようになる。

また、ICタグの所有者が自らの温室効果ガスの排出に対するカーボンオフセットをする場合は、国の償却口座を振込先にしてICタグを添付排出枠の管理事業者に返却するか、国にICタグそのものを無償譲渡すればよく、カーボンオフセットが個人レベルでも容易に実現できるようになる。

今後、生産や物流、小売りにおける実証実験を想定しており、すでに物流・在庫管理にICタグを利用している場合、その導入コストは小さいことから、既存のICタグによる物流・在庫管理システムを拡張するところから普及を図っていく。

詳細は下記URLを参照。
http://www.nii.ac.jp/kouhou/NIIPress08_15-2.pdf

問い合わせ先
国立情報学研究所
アーキテクチャ科学研究系
佐藤一郎教授
〒101-8430東京都千代田区一ツ橋2-1-2
電話03-4212-2546
ichiro@nii.ac.jp

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