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農水省/卸売市場の先進事例、農家直接仕入れ・量販店直接販売

2009年04月08日/SCM・経営

農林水産省がまとめた2008年度卸売市場の先進的な取り組み事例を紹介する。1回目は、関西地域の中央卸売市場で事業を行う青果物卸売市場の子会社。

同社は、9軒の農家との契約栽培による全量買い付け、地元農協からの直接仕入れ、市場内仲卸業者からの仕入れを実施。量販店や外食産業などへ直接販売している。また、冷蔵室を利用した低温保管業務と包装も行っている。販売先は、マックスバリュ西日本、万代、イカリスーパーなどの他店舗経営スーパー数社。取扱い品目は、トマト、キュウリ、ハクサイ、キャベツ、ホウレンソウ、コマツナ、ミズナなど。

2006年2月に会社が設立。2007年12月に物流センターが完成した。敷地3647㎡、建築面積約1490㎡(うち事務所面積約130㎡)、鉄骨2階建て延べ床面積2040㎡。施設は、冷蔵庫4基、予冷荷捌室2室、予冷加工施設2室、加工包装機2基(ピロー包装機)、オゾン水洗浄設備一式を備えている。

関西地方は、仲卸の影響力が強く、卸売が仲卸を介さずに第三者販売を行うのは一般的ではない。だが、量販店は仕入れ規模の観点から、仲卸だけでは仕入先としては不十分という現状がある。また、京都や大阪の仲卸は開設区域外で販売活動を行っており、卸売としては京都や大阪の仲卸の進出に直面している。地場生産者の中には、農協や卸売市場を通さずに販売したいと考えている者も多く、地場生産者と卸を結びつけることには意義があった。

親会社の青果卸売市場が所有していた物流センターは、地物の野菜を集めることはできたが、量販店対応ができなかったために十分に機能せずに、2006年2月に閉鎖した。その一方で、すでに2003年6月に親会社内に開発チームを立ち上げ、量販店への直接販売の可能性を探っていた。これが、2007年12月の新物流センター完成につながる。

当初の事業目的は、地場野菜の直接集荷だった。ところが、市場を介さない販売を希望する農家・農協に加え、包装部門を持たない仲卸もあり、現在では、地元農協も仕入先となった。また、仲卸も、親会社から仕入れた青果物の包装を委託したり、量販店向けの商品を卸したりするようになった。

当初計画では、設立3年間は赤字を見込んでおり、3年目の現時点では当初予想通り赤字となった。地場野菜の集荷も順調で、契約農家も9軒に達したほか、新規開拓の量販店も増加するなど事業目的は達成しつつある。

新規開拓の過程では、「安ければ買う」という事業者は多いが、すべて取引を断っている。数量の伸びは十分ではないが、安売りで既存の流通構造に支障をきたすような事態は避けている。

今後は、仲卸や親会社との競合も生じる可能性がある。このため、集荷・販売の独立性を強化し、営業活動を強化する必要がある。新たな事業展開として、物流センター内の空きスペースを活用し、袋詰めの業務を行う事業者への賃貸を検討するほか、直接生産者から集荷した青果物を、センターで包装・加工して卸売市場に出荷したり、場内の仲卸への販売も考えている。

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