デロイトトウシュトーマツ(以下:DTT)は、中国におけるテクノロジー、メディア、テレコミュニケーション(以下:TMT)業界のグローバルな技術標準の開発に向けた動きに関するレポート「ChangingChina(変貌する中国)」をまとめた。
中国はもはや世界有数の製造拠点であるだけでなく、今後、技術の標準化に関し主導的な役割を持つことは必至であるとし、中国発の技術スタンダードがTMT業界のグローバルな競合にどのような影響を及ぼすか詳しく論じている。
TMT業界における中国が進める標準化の脅威
現在、中国は多くのテクノロジー製品の主要な消費国であり製造国でもある。さらに長期的には健全な成長が見込まれることから、中国市場はTMT業界における国内市場とグローバル市場の標準化に強い影響力を持つようになっている。
中国の標準が広く受け入れられれば、世界の技術開発面で中国企業が指導的な立場を強めていくことになるだろう。
「テクノロジー・ベンダーが、中国で起きている標準の大転換の影響について判断を誤れば、不利な立場に追い込まれるばかりでなく、その市場での地位を奪われかねないだろう」また、「中国企業・政府は標準化をめぐる競争において巨大な市場と急速な成長を有利な材料として利用することができる。
世界規模のテクノロジーやテレコミュニケーション企業は、技術標準に対する中国の出方を検討し、必要に応じて、標準化となりうる技術開発段階で中国企業と協力する必要がある」とDTTのTMTグループは分析している。
中国での技術革新が標準化につながる中、テクノロジー企業がとるべき戦略
「中国国内企業、外資企業ともに、中国の企業や消費者の間で強力な支持基盤を築いた企業が、有利な立場で自社の標準を推進することができる。広い支持を得られない企業は、競争よりも協力関係を選択することが賢明だろう。」その上で、テクノロジー企業が長期的に市場でチャンスを創り出すために、DTTでは4つの戦略を提示している。
・中国で標準となりうる技術を確保した企業と協力する
・中国で技術標準が義務付けされにくい分野に絞って競争する
・中国市場の現状課題を改善するサービスを提供する
・新興成長市場に早期投資し、市場成長を促し、早い段階でシェアを得る
オペレーティング・システムやアプリケーション・ソフトウェアからストレージ・メディア(フロッピーディスクやMOなどのコンピュータ内でデータやプログラムを記憶する装置)、ワイヤレス通信、衛星測位システムまで、さまざまな分野において、中国の政府機関や企業は、新しい技術標準を作り上げることで、経済的優位を獲得しようとしている。
中国の製造業に従事する企業は、まず国内で決定的なシェアの支持を固めた上で、そのテクノロジーを東南アジアや中近東などの新興成長市場に輸出するようになると、DTTは予想している。
さらに、「テクノロジー企業は中国の動きを注視し、中国の技術標準が持つ影響力を評価し、それに合わせて戦略を修正する必要がある。中国市場では、次々と中国発の標準が確立されており、企業が標準化への対応を怠れば、いつの間にか、世界最大にして最も急速な成長を続ける市場から結果的に締め出されていたということになる」と付け加えている。
TMT業界において中国発の標準化の影響力が高いであろう事例
テクノロジー分野
オペレーティング・システム
・中国政府はリナックスに対する強い関心を表明している。国内市場向けに特化した新しい「標準」を策定しており、すべてのITベンダーやサービス・プロバイダーに同標準を義務づけることを考えていると発表した。
・中国のソフトウェア業界はまだ発展途上期にあるため、中国は一般大衆に手ごろな価格のソフトウェアを調達、あるいは独自に開発することを望んでいる。
RFID
・中国はRFIDタグ技術について、国内標準を策定、開発するための作業グループを設置した。一部の報道は同グループが国際標準に追従するとしているが、独自の路線追求を目指しているという報道もある。互換性のないRFID標準が採用されれば、中国の新興IT産業の利害と中国製品の大量購入先の利害が対立することにもなりかねない。
他省略