商船三井は10月30日、モバイルアプリケーション上での電子決済サービスによる給与支給等を通じた船員の生活品質向上を目指し、グループの船舶管理会社が管理する船に乗る全船員向けに、海運に特化した決済サービスMarTrust(マートラスト)の導入を決定したと発表した。
2024年度中に対象の全船員が利用できるよう導入を進める。
<2023年10月17日に実施したMarTrust社長との打ち合わせ時の写真(左より商船三井の木村 隆助常務執行役員、MarTrust社 Director Domenico Carlucci氏、商船三井の遠藤 充常務執行役員、商船三井の山内 章裕エネルギー輸送船船舶管理戦略統括部長)>
MarTrustは、海運業界向けに特化したDXソリューションプロバイダーであるマルクラ・グループのMarTrust社が提供する船員給与向けの国際送金サービス。
MarTrustの導入により、船員にe-Walletアカウントと国際ブランドの付帯デビットカードが付与され、モバイルアプリケーションを通じた銀行口座への送金やe-Wallet間の送金が可能となる。また、ほぼ全世界のATMからの現金引き出しにも対応しているため、電子で受け取った分をキャッシュに変えることも可能。
船員の給与は、国際条約によって銀行口座への振り込みが義務化されていますが、給与の一部を船上で受け取れるようになっており、これまではその分が現金で支給されていた。MarTrustの導入によって、現金で受け取っていた分を電子で受け取り、また、国際ブランドの付帯デビットカードも合わせて支給されるようになることで、いくつかの変化・メリットが生まれた。
それは、これまで、現金で受け取った給与を親族などに送金する際には、船員配乗会社を通じて送金手続きをしなければならず、送金先に制限があった上に、送金まで約1か月要していたが、MarTrustの導入により、現金支給されていた給与分をモバイルアプリケーション上で受け取ることができ、希望する送金先へ直接数日で送金することが可能となった。
また、船員の国籍によっては、全世界で使用できるクレジットカードを保有していない場合もある。その場合には、オンラインショッピングの利用に制限があったり、寄港地での買い物は現金のみで行う必要があり、両替の手間も発生していた。MarTrustの付帯デビットカードはほぼ全世界で利用できるため、オンラインショッピングや寄港地での買い物が容易となる。
さらに、これまで、給与の一部が現金支給されていたため、主に船長が船上での収支管理や船舶管理会社への報告を行っていたが、電子化によりこの作業の手間と時間が省かれるようになる。現金支給分を全てモバイルアプリケーション上で受け取ることで、現金紛失のリスクもなくなる。
2023年4~7月にかけ、グループの管理船にてMarTrustの導入トライアルを行い、トライアルに参加した船員からのこのサービスに対する必要性、メリットを感じる多くの声も受け、本格導入決定に至ったもの。