積載効率の4つの留意点
物流の効率化を考えるとき、しばしば積載率の向上がうたわれる。しかし、国土交通省が提示しているように、積載率と積載効率では定義が異なるし、実際には積載効率の向上が重要となる。
そこで今回(第36回)は「積載効率を考える」のまとめとして、次の4つの留意点を示すことにする。
1) 計測する時点での積載率の違い
2) 輸送と配送での積載効率の違い
3) 積載効率と他の指標のトレードオフ
4) 積載効率における走行距離比の重要性
計測する時点での積載率の違い
積載率は、積載可能量に対する積載量の比率である。積載率は、重さ(重量積載率)ないし容積(容積積載率)で示すことになる。たとえば、最大積載量4トンの貨物車に2トンの貨物を積んでいれば、積載率50%ということになる。
人が乗用車で移動する場合、家から出発して家に戻るのであれば、途中で乗車人員が変わることはない。5人乗りの乗用車に2名で出かければ、出発時も帰宅時も乗車人員の比率(乗車率)は40%である。
ところが貨物を運ぶ場合は、貨物車の出発時の積載率が100%であっても、貨物を届け終わった時点で積載率が0%になることは多い。つまり、貨物車の積載率は、積みおろしをするたびに変わることになる。
輸送と配送での積載効率の違い
輸送では、一般に長距離で1か所に貨物を運ぶ場合が多い。このため、往路で貨物の積載率が100%であっても、復路で貨物がなければ積載率0%になり、往復の積載率の平均は50%になってしまう。しかし、復路に貨物があれば、往復で積載率100%になることもある。このため、長距離輸送の場合には、復路の貨物(帰り荷)を探して、往復での積載率を高めることが重要とされている。
配送では、コンビニの商品配送や宅配便のように、多くの配送先に順次貨物を届けることになる。しかも配送の途中で貨物を積むことは難しい。このため、配送先ごとに少しずつ貨物をおろしていき、最後の配送先で貨物をおろすと貨物はなくなる。つまり、出発時の積載率が100%であっても、複数の配送先に貨物を届け終わったときには積載率が0%になってしまう。このため、配送時の積載率の平均はおおむね50%になる。
積載効率と他の指標のトレードオフ
トレードオフとは、「こちらを立てればあちらが立たず」というような関係である。輸送効率の向上を優先することで他の指標に悪影響を与えるようなトレードオフの関係があれば、「積載効率の向上だけを最優先にすべきなのか」という問題につながる。たとえば、第34回でも示したように、あえて重い貨物を積載しながら走行すれば積載効率は向上するが、燃料の消費や車両への負荷が大きくなる可能性がある。つまり、積載効率の向上も重要であるが、関連する指標(CO2排出量、車両への負荷など)への影響も考慮しておく必要がある。
積載効率における走行距離比の重要性
国土交通省が示している積載効率は、「各走行区間の積載率と走行距離比の積」を「全走行区間で足し合わせた和」に相当する。このため、高い積載率での走行距離が長いほど積載効率は高くなる。
すなわち、積載効率は「積載率の単純平均」ではなく、走行距離比を考慮した「積載率の加重平均」に相当する。
今回の補論では、積載効率における加重平均の意味を示すことにする。
単純平均と加重平均
「単純平均」は算術平均とも呼ばれ、「すべての値を足してデータの数で割る」という方法で計算する。平均点、平均年齢、平均年収などの値は、この単純平均を用いて算出されている。
これに対して「加重平均」は、それぞれのデータの重み付けを考慮して求める平均である。
例として、4回の試験の平均点で成績が決まる場合を考える。1回目から4回目の得点はそれぞれ60点、55点、80点、85点とする。
このとき、4回の試験の平均点(単純平均)は、
(60 + 55 + 80 + 85 )÷ 4 = 70
となり、70点である。
次に、試験問題はその時点までに習った範囲から出題されることになっており、回を追うごとに出題範囲が広くなるという理由で、試験ごとに異なる重み付けがされたとする。仮に、1回目の試験に0.1、2回目に0.2、3回目に0.3、4回目に0.4の重み付けがされたとする。ここで、重み付けの合計は1(=0.1 + 0.2 + 0.3 + 0.4)になることに注意する。このとき、試験の得点の加重平均は
60 × 0.1 + 55 × 0.2 + 80 × 0.3 + 85 × 0.4 = 75
となり、75点である。
全4回の試験において、得点の単純平均が70点であるのに対し、加重平均が75点と高くなったのは、重み付けの大きい3回目、4回目の試験での得点が高かったことによるものである。
なお、単純平均は、すべてのデータの重み付けが等しい場合の加重平均とみなすことができる。したがって、上の例でいえば、1回目から4回目までの試験の重み付けをすべて 0.25とすれば、単純平均と加重平均は等しくなる。
加重平均として算出される積載効率(「積載率」と「走行距離比」の積)
貨物車の積載率(=積載量/積載可能量)は、輸送途中で積みおろしをすると変わるので、積載率が変化するたびに走行区間を分けて考える必要がある。このとき、全走行区間における「積載率の平均」は、各走行区間の積載率の「単純平均」となる。
これに対して、全走行区間における「積載効率」は、各走行区間の「積載率と走行距離比(=積載時の走行距離/総走行距離)の積」を計算し、それらを合計して求めている。なお、すべての走行区間の走行距離比を合計すると1になる。
よって、積載効率は次式のように、走行距離比を重み付けとした積載率の「加重平均」と考えることができる(式1参照)。
積載率(単純平均)と積載効率(加重平均)の違い
総走行距離100kmの輸送における「積載率の単純平均」と「積載効率」の違いを、輸送途中で荷おろしする場合で考えてみる。このとき、出発地点から荷おろし地点までを走行区間1とし、荷おろし地点から到着地点までを走行区間2とする。輸送途中にある荷おろし地点で貨物の半分をおろすとき、走行区間1と2の距離が異なる3つのケース(A、B、C)を以下のように設定する(図1参照)。
(A)走行区間1は50kmで積載率100%、走行区間2は50kmで積載率50%とする。
(B)走行区間1は80kmで積載率100%、走行区間2は20kmで積載率50%とする。
(C)走行区間1は20kmで積載率100%、走行区間2は80kmで積載率50%とする。
積載率の平均(単純平均)は、(A)、(B)、(C)のすべてのケースで等しく、75%となる。これは、いずれの場合も積載率100%の区間と積載率50%の区間の2つの区間で構成されているため、それぞれの区間の距離にかかわらず平均(単純平均)は、75%(=(1.00+0.50)/2)となるからである。
積載効率(加重平均)を求めると、(A)は0.75(=1.00×0.5+0.50×0.5)であり、積載率の平均(単純平均)と等しい。しかし、(B)の積載効率は0.90(=1.00×0.8+0.50×0.2)であり、(C)は0.60(=1.00×0.2+0.50×0.8)になる。この3つのケースにおいて積載効率が異なっている理由は、積載効率が加重平均だからである。すなわち積載効率は、積載率100%の走行区間1と積載率50%の走行区間2の距離に応じて変化する。この結果、積載効率が最も高いケースは、積載率100%で走行する区間の距離が長い(B)となっている。
積載効率の算出式の一般化
積載効率の算出式については、すでに第32回において一般式を示したが、今回は「積載効率を考える」のまとめの回でもあるので、以下に再掲しておく。
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