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三菱総合研究所/自動車NOx・PM法の施行によるトラック運送業界への影響

2002年10月06日/未分類

(株)三菱総合研究所は、自動車NOx・PM法の施行によるトラック運送業界への影響について緊急調査を実施した。
調査の背景
・自動車NOx・PM法によりディーゼルエンジン車への排出ガス規制強化が進もうとしている。これらは都市の環境改善に寄与することが期待される半面、規制不適合となるトラックの強制的な代替が必要となるため、トラックユーザーに新たな費用負担を強いることになる。この影響を分析するため昨年度も同法に関する運送事業者への調査を実施した。
・その後、車種・車齢に応じて1~2年程度の準備期間を設ける新たな特別措置(いわゆる激変緩和措置)等が公表されたこと及び運送事業者の経営状況の改善がみられないことから、今回改めて営業用・自家用を含めたトラック運送を行う全国の事業者に緊急調査を実施した。その結果がまとまったので報告する。
 
自動車NOx・PM法による強制代替の対象台数
・2002年3月末(2001年度末)時点において普通トラックは173万台保有されており、このうち将来的に規制対象となるのは44万台である。これらの車両は使用期限到来後、自動車NOx・PM法の対象地域内では保有が不可能となる。今回調査結果を集計すると、規制対象地域内に本拠地のある運送事業者の98%、その他の自家用トラックユーザーの97%が同法の影響を受ける。
 
トラックユーザーの深刻な経営状況
・他方、運賃の低下と物流減少の両面から、トラックユーザーの経営状況は厳しい状況にある。今回アンケートでは運賃は98年度と比べ2割程度低下しており、運送事業者の76%が98年度より経営状況が悪化しているとされ、運送業界でもデフレ不況が深刻化している。自家用ユーザーでも67%で経営が悪化している。
・現状についても、運送事業者の47%が「非常に厳しい」としている。特に運送事業者については、保有台数50台以下の中小規模の企業で経営が厳しく、10%の企業が「事業の継続も難しいほど厳しい状況にある」としている。自家用ユーザーについても38%の事業者は経営が「非常に厳しい」としている。
 
自動車NOx・PM法への対応による運送事業者の経営への負担
・自動車NOx・PM法に対応しつつ、事業を継続していくため、今回調査で回答のあった運送事業者の64%は規制不適合車の代替を行う意向をもっている。
・しかしながら、当社試算では、現在の低運賃・売上低迷下で車両代替を続けていくことは、資金調達が可能であったとしても、償却負担・金利負担による損益赤字化、負債の累積によるバランスシートの急激な悪化を招く。このため中小規模の企業では、平均的な経営状況にある事業者ですら、5年後には経営が成り立たなくなる可能性がある。
 
望まれる支援策
・今後、失業問題の悪化、輸送能力の低下を回避しながら、自動車NOx・PM法の目的である大都市部の大気環境改善を円滑に進めるためには、トラックユーザーに対して、資金調達・融資円滑化のための公的保証枠の拡大や車両代替コストへの支援措置(税制優遇、補助金、低利融資、利子補給、リース補助等)が必要である。
・支援策の1つとして、最新規制車への代替促進奨励金なども視野に入れるべきである。類似施策はイタリア、フランス及びスペイン等で導入実績があり、使用過程車の排気ガス削減策としても効果を上げている。
・このような支援策などが行われない場合、運送事業者に関して、当社試算では今後4年程度の間に、中小規模の企業を中心に3 900社(全運送事業者の7%)前後の廃業が発生、1~2万人程度の雇用に影響が及ぶ可能性がある。これは業界全体としての輸送能力の低下につながる規模であり、産業・社会全体への影響が懸念される。昨年度調査では2003年度に集中するとみられていた影響が、激変緩和措置によって4年程度にわたって分散して及ぶことになると考えられる。
注: 自動車NOx・PM法とは「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」の略。
代替促進奨励金は低年式車を廃車して新車に代替する場合に資金補助をする施策。

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