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LNEWS分析/上場会社による中間決算における物流・SCM戦略傾向

2004年12月05日/未分類

LNEWSでは、製造業・流通業・物流業・卸等の上場会社について、平成17年期中間決算短信で、物流、SCMなどをキーワードとした、主要企業の動向を掲載してきた。

今回、そのうち製造業・流通業(卸売業は除く)物流対策について平成17年期中間決算短信での傾向を紹介する。

企業経営が、連結決算の4半期決算の浸透、定着により、グループ企業として、ダイナミックで具体的でスピードを必要とするようになったため、決算短信では幅広い業務分野での現状分析、課題、対策を明確に説明する傾向がより強くなっている。

従来では、「SCMを浸透させ、在庫を圧縮する」とか「物流費を削減」するといったあいまいな表現が中心だったが、より具体的な計画・対策を明示する傾向になっている。

例えば、キーコーヒー(株)は経営成績のなかで、『物流戦略を含めた総合的な営業提案力の強化を目指し、多店舗展開している外食チェーン店に対する一括物流への対応や、Web活用による受注システムなどの新たなビジネスモデルや営業システムの研究とその推進を目的にして、5月12日付で広域営業本部に「営業システムサポートチーム」を新設した。』と説明している。

さらに設備投資について、『中長期的な生産物流体制策定の下、関東工場と中部工場及びそれに併設する両物流センターのリノベーションが完了したのに続き、平成16年7月より九州工場と併設の九州物流センターの改修工事に着手した』と補足している。

設備内容も『多様化する需要に対応するため、粉砕機を増設して粉砕能力を高めるとともに包装ラインを拡充する一方、物流センターでも新たな搬送機器類の設置により商品保管機能や物流機能の強化を図っている』と加えたり、『平成16年10月1日付で(株)キョーエイコーポレーションの発行済株式の全量を取得し子会社化した。同社は長年に亘り同社の首都圏エリアの物流業務委託先であり、商品の鮮度向上や多頻度物流、共同配送化など物流業務へのニーズが多様化している中にあって、直営の物流子会社を擁して、より柔軟、機動的に客先ニーズに対処し、キーコーヒーグループの業容拡大と事業基盤の拡大を図っている』といった詳細な説明をしているケースも出ている。

家電量販店の(株)コジマは、経営方針の対処すべき課題のなかで、『全国5箇所の物流センターの設置や需要予測型自動発注システムの導入による発注業務と物流の効率化並びに在庫の効率化、管理者への成果主義の導入やパート比率の引上げを目指した人事体制の変更、また販売面ではお客様との関係強化を狙った「コジマお客様カード」の発行、出店政策面では効率的な店舗網構築のための統廃合の推進を行っている』とかなり具体的だ。

経営成績でも、『タイムリーに商品情報や内部連絡等が行える情報端末機器を店頭販売員に携帯させることで適宜適切な接客ができるよう販売面の強化を図り、需要予測型自動発注システムの活用による在庫の効率化や店舗オペレーションの改善による人員の抑制、パート比率の向上を推進するなど、収益体質の強化に取組んだ』としている。

こういった傾向はより強くなる方向にある。連結決算によって、そのグループの強み、弱みが明確に浮き彫りにされ、その対処策を企業戦略としてSCMという物流、製造、販売は最適な組み合わせ、リアルな情報管理が必要なことが経営者層にとって重要な課題になっているからだ。

物流対策には大きく2面性がある。販売の後方支援として品質面の向上の役割と、コスト低減対象だ。SCM戦略を中心にしている企業ほど、拠点集約、商品集約、アウトソーシング、需要予測に関する展開は積極的だ。

調達、製造、販売を最適な仕組みは何かという理論を追及していくと、情報と物を分離して、最適な連携ができる仕組み、コントロールできる仕組みを構築していく。

医薬品業界は、事業を製品開発に焦点に絞り、物流アウトソーシングが一番積極的に行われている。大手だけでなく、ゼリア新薬工業(株)では、『経営成績で、生産物流の状況ついて、より高い品質の確保を目指すとともに原価低減をメインテーマとして業務を進めたとしている』、『また、物流関連部門は、物流業務のアウトソーシングを実施する中、更なる業務の効率化とコストの低減に努めたという』としている。

食品は、肉類を中心としたトレーサビリティの問題が中心となるが、伊藤ハム(株)は経営方針で、『外部環境の変化に左右されない強固な経営基盤を築くため、生産拠点の統廃合、不採算事業の再建と撤退など経営資源の最適配分を図り、生産性を高める』としている。

経営成績でも、『生産工場を中心に、製造・販売・物流現場での生産性向上を目的としたIHPS(伊藤ハム・プロダクション・システム)活動を全社的に取り組むとともに、生産基地の集約化や配販分離によるコストダウンに鋭意努力してきた』という。

そのうち生肉部門について、『国産牛肉につきましては預託牛のトレーサビリティシステム(個体履歴情報管理システム)を導入するとともに、ホームページ上で国産銘柄牛と海外の同社オリジナルビーフの生産履歴を開示した』という。

通期の見通しでも、『生産面は、コスト競争力をさらに強化するため、IHPS(伊藤ハム・プロダクション・システム)を中心に工場の生産性向上を推進するとともに、生産体制の最適化を進め、将来的な視点から販売と物流の一層の効率化を図るため、アイテム数削減と、社内組織を横断する共同配送を推し進めて収益力の向上に努める』とSCMの強化を明確にしている。

一方で、中国生産、販売については(株)加ト吉が、経営方針で、『中国事業の成長戦略のスピードアップを図るため生産基地としての位置づけだけでなく、2008年の北京オリンピックを契機に冷凍食品の需要も飛躍するものと考えられることから、中国市場での販売も視野に入れ、中国で冷凍物流販売網をもつ企業へ中国工場で生産する商品を積極的に販売する』としている。

アウトソーシングでは、プリマハム(株)が具体的な取り組みとして、『引き続き仕入の見直し、物流業務の外注化、在庫ロスの削減および不採算営業拠点の統廃合、商品単品ごとの利益管理の徹底等コストカット型の施策を徹底するとしている』と連携した取組みをみせている。

販社の集約などは、関西ペイント(株)が『納期対応の迅速化による顧客満足度のさらなる向上と、在庫圧縮および配送方法の効率化によるコスト削減を狙いとして、主に建築・自動車補修用塗料の販売を行う国内販売子会社との間で、在庫の一元化ならびに管理の共通化を実施し、物流の効率化を推進している』といった対策を打ち出している。

システム面では、ハウス食品(株)が対処すべき課題で、『製品をより低コストで作り出せることが企業競争力には不可欠な要素と考え、開発・調達・生産・販売に亘る全ての部門におけるシステム・機能の見直しを図り、一段の合理化・効率化に取り組み、コストダウンを推進する常設組織を置き、恒常的なコスト削減に努めるとともに、マーケティングコストの効果的運用や雇用の多様化による人件費の削減など、全社的なコスト低減運動を展開し、利益重視経営の浸透に注力し、今春SCMを導入し、在庫の削減を図るほか、新退職年金制度を導入するなど、コスト競争力のアップに取り組んでいる』

通期の見通しでも、『コスト面について、引き続き効果的なマーケティングミクスを推進するほか、SCMの運用や、事務センターの機能充実等によってコスト削減を図り、利益重視の経営に注力する』と触れている。

より進めた形では、井村屋製菓(株)が、『システム経営を行うとして、ISO9001の定着化、SCM構築を実現し、全ての部門すべてのプロセスにおいてシステム的な思考で実行し、社内改革として、「顧客満足」をさらに強化するため「ユニット制」の導入を行い、市場環境の変化やお客様のニーズへの素早い対応を目指し、販売においては、販売効率の向上、流通過程での無駄・ロス削減を目的として売上計上基準を出荷日基準から着荷日基準に変更した』と説明している。

さらに、『前期から継続して取組んでおりますISCM(イムラヤサプライチェーンマネージメント)活動による在庫削減・物流費減少等の効果に加えコスト削減に取組んだ結果、販売費・一般管理費も減少した』という。

小売業では、(株)ミスターマックスは、『東西2箇所に設置した自社物流センターへの納品精度の向上による欠品や売り逃しロスの排除に努め、商品発注の本部集中により、在庫管理の徹底を図り、商品回転率を向上させるとともに、柔軟な売場レイアウトや品揃えの変更、迅速な商品の投入や切替を実施していく』と表明している。

また、『ローコスト・オペレーションとしても、発注の本部集中及び荷受・検品業務の自社物流センターへの集中により、店舗での作業体系を抜本的に見直し、店舗作業時間、店舗人件費の大幅削減を目指す』という。

拠点整備では、大王製紙(株)が会社の対処すべき課題のなかで、『物流合理化による経費圧縮を掲げ、工場の在庫スペース拡張により出先に分散する在庫を工場にシフトするとともに、各地の拠点倉庫に在庫を統合し、在庫圧縮・物流体制の強化に努めている。現在、首都圏における物流体制の強化を目的として埼玉県行田市に約13,000トンの保管能力を有する自社物流センターの建設を進めている』と明確にしている。

クリナップ(株)も経営成績のなかで、『生産面では、引き続きVE活動を推進し、コストテーブルによる調達部品の価格低減、部材点数の削減、製造ラインにおける効率化を図り原価低減に努めた』とともに、物流面では、『平成14年6月より稼働させた、最適配送計画支援&配送管理システム「SLIM(スリム)システム」を駆使した共同配送を、新たな荷主企業の参加により拡大させるとともに、顧客の信頼を損なわない荷扱いのできるよう、全国的に助手を乗車させる体制を取った』とより具体的な内容を盛り込んでいる。

こういった傾向が今後も強まると考えられ、従来、決算短信が数字の報告のみが注目されていたが、LNEWSではできるだけ、表に出ない物流分野の情報、SCMの戦略状況についての分析をより進めて行きたいと考えていいます。

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