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経済同友会/地球温暖化問題の克服に向けて提言

2004年12月21日/未分類

経済同友会は地球温暖化問題の克服に向けての8つの提言を行い、そのうち物流分野は下記のとおり。

●「モーダルシフトの可能性に大いに目を向けよ」
鉄道・船舶等のサービス品質レベルを向上する等により、モーダルシフトを着実に推進するとともに、物流・人的移動・交通流も含め、温暖化問題の解決に資する国家としての総合的交通体系を構築するための基盤整備を進める。

具体的事例※トン数はCO2トン
1)500km以上の宅配便輸送の鉄道輸送化:削減ポテンシャル年間59万トン
運輸部門の温暖化対策を検討するうえで、自動車から鉄道・船舶等の大量輸送手段に置き換える「モーダルシフト」の強化は避けて通れない。自動車に比べ、鉄道・船舶の温室効果ガス排出源単位は圧倒的に小さいからである。

具体例としても、鉄道会社と運送会社とのタイアップによって東京-大阪間の輸送を鉄道にシフトしたことにより、年間1.4万トンのCO2排出量削減を実現したケースがある。自動車輸送網の全てを鉄道に置き換えることは不可能であるが、仮に東京-大阪間をはじめとする輸送距離500km以上の宅配便全てを鉄道にシフトすれば、それだけで年間約59万トンの排出削減が可能と推定される。

荷主のニーズに応えやすく、鉄道・船舶の競争力が比較的高い長距離貨物輸送を中心にモーダルシフトを推進すれば、得られるCO2削減効果は非常に高い。

企業はこうした削減ポテンシャルに着目し、これまで以上に鉄道・船舶の利用を組み込んだ物流体系を構築する必要がある。自動車メーカーなど一部企業で、鉄道・船舶の積極的な活用が模索され取り組みが開始されているが、上記の事例のような荷主と運送事業者との連携強化や、他社との共同配送等によるモーダルシフト・物流効率化のさらなる推進が今まさに求められている。

モーダルシフトの可能性実現のために
各企業においてモーダルシフトの努力が続けられているにもかかわらず、現実にはその取り組みの規模はかなり限定的なレベルにとどまっており、モーダルシフト化率も近年はむしろ低下傾向にある。

その要因としては、鉄道においては、路線のほとんどを旅客鉄道会社のインフラに依存している貨物鉄道会社の輸送対応力の脆弱さから、スピードやフレキシビリティ等のサービス品質面で、運送会社をはじめとする利用者側の求めるレベルに対応しきれていないという問題がある。

船舶においても、港と鉄道との結節点のインフラの未整備など政策上の連携不備の問題が大きい。また、道路輸送における通行車両の総重量や車両高制限等の規制を、船舶や鉄道での輸送と自動車輸送との連携を阻む要因の一つとして指摘する声もあり、船舶・鉄道と自動車間のアクセス地点において総重量規制や車両高規制を一部緩和するなど、制度的な見直し・整備も求められる。

鉄道におけるサービス品質の観点では、例えば、新幹線インフラの活用による貨物輸送の高速化を検討すべきである。深夜時間帯の騒音問題、保守の問題、積込施設の問題、車両の開発など解決しなければならない課題は多いが、モーダルシフトの可能性の追求として検討する価値は大きい。

こうした多様な方策の検討を通じて、鉄道・船舶の輸送サービスレベルの向上が求められるが、そのインフラ整備には巨額の投資が必要である。

例えば鉄道の場合、貨物の輸送能力増強に投じられている資金は、民間企業である鉄道会社の設備投資が主体であり、現状では多くとも年間約十数億~数十億円の規模にとどまっており、政府資金はあまりにも少ない。

政府は長期的視野に立ち、モーダルシフトを含めた運輸部門のCO2排出削減を国の運輸政策の核と位置づけ、物流のみならず公共交通機関のあり方・交通渋滞の緩和策など人的移動面の課題や交通流の問題についても同様に取り組みを広げ、地球温暖化問題を解決する運輸・交通システムの実現に力を入れるべきである。

そのためには、物流、人の移動、交通流などあらゆる観点から、自動車・鉄道・船舶・航空等全ての輸送手段やインフラ整備を最適に組み合わせた総合的な交通体系を構築することが必須である。

●「発想の転換を図れ」
地道な努力の積み重ねだけでなく、発想の転換を行うことにより、コストダウン
と排出削減とを両立させるような施策を実施する。
具体的事例※トン数はCO2トン
1)自動車を使わない集配送:削減ポテンシャル年間2.9万トン
企業は、「力技」による地道な努力の積み重ねだけでなく、「発想の転換」という「頭脳プレー」も必要である。視点を変え違った角度から問題解決にあたれば、思わぬ効果がもたらされる可能性がある。

運送会社F社では、大都市を中心に宅配便における「自動車を使わない集配送」の仕組みを導入し、集配業務を自動車で行わず手押しの「台車」で集配荷物を運ぶことでCO2排出を大幅に削減している。

この取り組みの優れたところは、単に環境負荷を低減させるだけでなく、同時に車両にかかるコストを削減することにより、CO2排出量削減とコストダウンとを両立していることである。加えて、自動車を使用しないことで交通事故を起こす危険がほとんどなくなり社員にも歓迎される、という3つ目のメリットも生じている。

こうした「運送会社が自動車を使用しない」という「逆転の発想」によって「環境と経済の両立」が実現されていることは、大いに注目すべきである。

他企業においても、こうした発想の転換により、コスト削減とCO2削減とを両立するような施策を徹底的に追及していく必要があろう。

ここでは、アイディアをいかに生み出しそれを取り組みにどう活かすかが重要になるが、そのためには、現場からの声をもとに地道にイノベーションの種を発掘し、それをどう実現するかが鍵になる。このF社の事例でも、配送現場からの意見が発端になったという。

発想の転換は専ら企業自らの努力に帰せられる問題であるが、こうした発想の転換を阻害せず、むしろ活かすような条件整備を政府に求めたい。例えばこのF社の事例に関していえば、貨物自動車運送事業法上の最低車両台数基準を緩和・撤廃すれば、さらにフレキシブルな集配システムの構築が可能になる。

また、集配用のパーキングの整備や歩道の段差解消(バリアフリー化)など、都市基盤の整備が行われることもこの取り組みの促進要因となる。政府には、こうした民間の創意工夫を促進する規制緩和やインフラ面からのサポートが大いに求められる。

詳細は下記アドレスを参照。
提言の本文
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2004/pdf/041220_02.pdf
提言の構成(サマリー)
http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2004/pdf/041220_01.pdf

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