LNEWSは、物流・ロジスティクス・SCM分野の最新ニュースを発信しています。





物流・ロジスティクス・SCM分野の最新ニュースを発信

東京地裁/ヤマト運輸の日本郵政公社訴訟を棄却

2006年01月19日/未分類

東京地方裁判所は1月19日、ヤマト運輸(株)が日本郵政公社に対し独占禁止法第24条、第19条に基づいた不公正取引行為とした差止め請求について、「日本郵政公社のゆうパックにおける取引が、不公正な取引とは認められない」として、いずれも棄却した。

ヤマト運輸は、見解を発表し、控訴するかどうかも含め、判決理由を充分検討した上で判断するとしている。

ヤマト運輸の見解では、「1年4ヶ月に亘る裁判の結果、公正で公平な競争条件を求めた主張が認められない判決が出されたことについては、誠に残念」「しかし、現在の宅配便市場における日本郵政公社との競争条件は不公正・不公平であるという考えは変わっていないので、今回の裁判結果によってこれまでの主張を変更することはない」としている。

また、「郵便事業は民営化後も依然として将来も政府の出資が残ることになっており、今後とも民間との競争条件が整わないなかでの業務拡大には断固反対していく」と述べている。

一方、日本郵政公社は、「お客様の利便性の向上に資するため、関係法令に基づき、ゆうパックのサービス改善と公正な料金設定を行ってきたものであり、独占禁止法に抵触するような行為は一切行っていないことを本件訴訟を通じて一貫して主張してきた」、「本日の判決は、司法の場においてこれまでの主張が認められた公正妥当なものと考えており、引き続きお客様の利便性の向上に取り組んでいく」としている。

判決文は、下記のとおり。(一部省略)
平成16年(ワ)第20498号不公正取引差止請求事件
原告:ヤマト運輸(株)
被告:日本郵政公社

主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事案の概要
本件は、宅配便事業を営む原告が、被告は、一般小包郵便物(ゆうパック)の新しい料金体系による役務の供給によって、「不公正な取引方法」の「不当廉売」に当たる行為を行い、かつ、(株)ローソンに対して、郵便局舎の余裕スペースを低額の賃料で賃貸したり、ローソン店舗内の私設郵便差出箱からの取集料を免除するなどの利益を提供して、一般小包郵便物(ゆうパック)サービスの取次所となるよう誘引することなどによって、「不当な利益による顧客誘引」に該当する行為を行っており、そのため、原告は利益を侵害されていると主張して、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律24条所定の差止請求権に基づき、これらの被告の行為の差止め等を求めた事案。

主たる争点
ア 被告が一般小包郵便物(ゆうパック)について不当廉売を行っているか

イ 被告がローソンに対して正常な商慣習に照らして不当な利益を提供して不当な利益による顧客誘引を行っているか

判決理由の要旨
(1)不当廉売の有無について
ア 「供給に要する費用」とは総販売原価を意味するところ、一般小包郵便物(ゆうパック)における総販売原価については、原告は、どのような項目で構成され、その額がいくらであり、その総額がいくらになるかについて具体的な主張、立証をしていない。

「供給に要する費用」とは、当該行為を行っている者における「供給に要する費用」であって、業界一般の「供給に要する費用」又は特定の競争者の費用をいうものとは解されないので、原告の料金との比較から直ちに被告の一般小包郵便物(ゆうパック)の新料金体系による役務の供給が「供給に要する費用」を下回ると推認することはできない。

また、被告の一般小包郵便物(ゆうパック)については取扱個数が増加しているにもかかわらず、赤字が増加しているといった状況は認め難いので、被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパツク)の役務が「その供給に要する費用」を下回る対価で供給されたと推認されるということもできない。

原告は、「被告の一般小包郵便物(ゆうパック)に関する事業は、税金の免除をはじめとする種々の優遇措置によって成り立っており、被告の一般小包郵便物(ゆうパック)単独では赤字である」とも主張している。

しかし、所得税、事業税及び住民税の支払に要する費用は、総販売原価を構成する性質のものではなく、「供給に要する費用」とはいえないし、被告が優遇措置を受ける一方で、法律上、郵便料金についての認可制等の負担や郵便局を全国に設置する義務を課されていることからすると、「供給に要する費用」の算定に当たり、所得税等を除いた優遇措置による影響を経済的に考慮するとした場合には、これらの負担や義務が被告の事業に与える経済的な影響も併せて検討する必要がある。

被告にこれらの負担や義務が課されていることが被告の事業に与える経済的な影響などについては、何らの主張,立証もないから、上記の主張を認めることはできない。

また、原告は、「郵便事業と郵便貯金事業及び簡易保険事業との共通経費の配賦において、郵便事業への配賦が不当に少なく調整されている」と主張するが、郵便事業と郵便貯金事業及び簡易保険事業との共通経費の配賦については、法制度上、明確に区分するとともに公認会計士等の外部者による監査を受けていることとされていることなどからすれば、この点の主張も認めることはできない。

以上のとおり、本件においては、一般小包郵便物(ゆうパック)における総販売原価については、どのような項目で構成され、その額がいくらであり、その総額がいくらになるかについて、具体的な主張、立証がされていないうえ、原告の主張する各事由を個別に検討しても、被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパツク)の役務が「その供給に要する費用…下回る対価」で供給されているという事実を認めることは困難である。

イ 原告は,「被告が民業を圧迫する形で官業を肥大化させようとする動きを、していることは、そもそも国の政策に反し不当である」と主張するが、「不当廉売」によることを「不公正な取引方法」として指定する規定であり、「不当」も「商品又は役務を低い価格で供給すること」について判断されるべきものであって、原告主張のように民業の圧迫に該当するか否かなどが考慮されることは予定されていないので、被告が,「一般小包郵便物(ゆうパック)の役務を「不当に…低い対価で供給し」ていると認めることはできない。

ウ 「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」の有無については、被告の一般小包郵便物(ゆうバック)の事業の規模に比べ、原告の宅急便の事業規模が大きいこと、原告の平均単価が被告及び他の競争事業者と比較して高額であるにもかかわらず、最大のシェアを維持している。

宅急便の物流事業においては、価格の高低のみならず、配達時間の短さや配達の正確性その他のサービスによって需要が左右される傾向が見受けられること、原告は、被告の新料金体系による一般小包郵便物(ゆうパック)の役務の供給を開始した平成16年10月以降も、売上及び収益を増やしている。

原告自身、そのような傾向は今後も続くものと予想していることなどが認められ、これらの事情を総合的に勘案すると、被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の供給によって、原告の事業活動を困難にさせるおそれが存在すると認めることは困難である。

エ したがって、被告の新料金体系に基づく一般小包郵便物(ゆうパック)の役務の提供は、「その供給に要する費用…下回る対価」で供給するものとも、「不当に…低い対価で供給し」ているとも認められず、また、「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある」とも認められないから、不公正な取引方法に当たるということはできない。

(2) 不当な利益による顧客誘引の有無について
被告が、株式会社ローソンに対し、郵便局舎の余裕スペースを不当に低額な賃料で賃貸していること、将来における郵便貯金、簡易生命保険の窓ロ業務の委託に関し、具体的な経済上の利益を提供していることを認めるに足る証拠はない。

また、被告は、自らローソン店舗内に郵便差出箱を設置したものと取り扱っていることが認められるところ、そのような取扱いは郵便法施行規則24条2項2号及び業務方法書12条1項2号で定める基準に照らし直ちに不当であるとはいい難いから、ローソン店舗内にある郵便差出箱について本来徴収すべき取集料を徴収しないという不当な利益を提供しているとは認められない。

したがって、被告が(株)ローソンに対し不当な利益を提供しているとは認められないから、その余の争点について判断するまでもなぐ、被告が不公正な取引方法に当たる行為を行っていると認めることはできない。

(3)結論
よって、原告の請求はいずれも理由がない。

関連記事

未分類に関する最新ニュース

最新ニュース