LNEWSは、物流・ロジスティクス・SCM分野の最新ニュースを発信しています。





物流・ロジスティクス・SCM分野の最新ニュースを発信

文部科学省/教科書物流コスト60億円を33億円に圧縮検討

2007年01月22日/SCM・経営

文部科学省は、教科書の物流について、宅配への切り替えを視野に、はじめて改革に乗り出す。削減シミュレーションを行った結果、改革により約60億円かかっている物流コストを最大33億円まで圧縮する案も出ている。

シミュレーション結果を踏まえ、4月以降に有識者、教科書会社、宅配業者らによる検討会を設置、2007年度中には物流コスト削減方針をまとめたい考え。ただ、入学までに確実に届けることが絶対条件とされ、納入時期が年度の変わり目に集中するなどの特殊条件があることから、同省では「1年間で成案を得るのは難しい」として、数年間かけて改革につなげる方針。

現行の教科書供給制度では、教科書の配送は発行者である各教科書会社に委ねられており、都道府県に1か所ずつ指定された「特約供給所」、全国3,640か所の書店を指定した「取次供給所」が個別に配送している。

明治政府が、1903(明治36)年の国定教科書制度創設後、教科書を確実に届けるために設置した官営供給所が戦後、民間に移行したものの、仕組みそのものは制度発足以来104年間、手付かずのままで変わっていない。教科書予算400億円の15%にあたる60億円を物流費に充てられていることから、コスト削減を求める財務省の指摘をきっかけに、見直しを検討することとなったもの。

現状では学校近くの書店が取次供給所に指定されており、教科書会社に代わって需要を確定する特約供給所と並び、種類、数量、納品時間を最適な条件で実現するための中間流通を担っている。

文部科学省が昨年、日本ロジスティクスシステム協会に委託してコストシミュレーション調査を行ったところ、最大のネックとなったのが過不足調整と呼ばれるこうした需給マッチングだった。

教科ごとに複数の教科書会社が異なる教科書を発行しており、小中学校分合わせて1億1,000万冊を年度末、年度始めに特約、取次供給所で集約した上で、学校別にセットしなおしてできる限り過不足なく、配送しなければならない。

1億冊を超える印刷を行うため、現状では前年の9月に需要を確定しているが、年度末までに転校、国立・私立学校受験数などの不確定要素も発生するため、特約供給所が再調査しても完全な精度で配送するのは困難としている。

出版元から学校まで直送する場合に、最低で33億円まで削減できるシミュレーション結果も出たが、こうした過不足調整を年度境の一時期に確実に行うのは困難として、当初の2006年度中に改革案をまとめる予定を断念、検討会を設置することにした。

調査に当たった日本ロジスティクスシステム協会では、製造業の出版・印刷業界、出版・印刷を含む卸売業との物流コストを比較。それぞれ4.50%、4.93%だったのに対し、教科書物流は400億円のうち60億円(15%)かかっているものの、「再送本、返本に対応しなければならない100%供給を実現するため、他業種よりも高コストになるのは当然」と指摘している。

また、報告書の中で教科書在庫管理システムの構築、「余裕教室」の活用など12項目の改善案を提示した。

なお、同協会では調査に当たり、大手物流会社6社に見積もりを取ったが、結果は34億1,100万円から75億400万円までと、大幅な差異が生じている。

今後の検討のベースとなる供給コストのシミュレーション結果は次の通り。
①現況再現:確定注文分(70%)を取次供給所に直送し、その他(30%)は特約供給所経由で送本。→61億6,600万円
②静岡モデル:特約供給所から学校に直送し、過不足調整と回収、返本のみ取次経由で送本。→43億6,900万円
③宅配利用(過不足調整なし):発行者から学校まで、過不足調整なしで宅配で送本。→32億9,900万円

関連記事URL
http://www.lnews.jp/2007/01/22094.html


教科書コストシミュレーション
(画像をクリックすると拡大します)

関連記事

SCM・経営に関する最新ニュース

最新ニュース