公正取引委員会は、コーナン商事(株)に対し、独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ、本日、コーナン商事に対し、優越的地位の濫用等、特定の不公正な取引方法の規定に違反として、勧告を行った。
違反行為の概要
1.ホームセンターを事業とするコーナン商事は、継続して取引する日用雑貨品、日曜大工用品等の納入業者に対し、納入取引関係を利用して
ア決算に向けた粗利益を確保するため、事業年度の下半期に企画するセールへの協力を名目として
イ新たに自社の店舗を展開することとなった関東地区、九州地区など自社が本店を置く大阪府から遠隔の地域において、近隣に有力な競争事業者が存在する特定の店舗の新規オープンに際し、事前に算出根拠、使途等について明確にすることなく、当該店舗の粗利益を確保するため金銭を提供させている。
2.コーナン商事は、自社の店舗の新規オープン及び改装オープンに際し、その取引上の地位が自社に対して劣っている前記納入業者に対し、自社の販売業務のための商品の陳列、補充等の作業を行わせるために、その従業員等を派遣させている。
排除措置の概要
1.コーナン商事は、前記2の行為を取りやめること。
2.コーナン商事は、前記3(1)に基づいて採った措置及び今後、前記2の行為と同様の行為を行わない旨を、前記納入業者に通知するとともに、自社の従業員に周知徹底すること。
3.コーナン商事は、今後、前記2の行為と同様の行為を行わないこと。
4.コーナン商事は、今後、前記2の行為と同様の行為を行うことがないよう、独占禁止法の遵守に関しての行動指針を作成し、当該行動指針に基づく仕入担当者に対する独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。
勧告諾否の期限:平成16年11月22日
(勧告を応諾したときは、勧告と同趣旨の審決を行い、応諾しないときは、審判手続を開始することとなる。)
■本件違反行為の規模
違反行為の種類違反行為の規模
協賛金(平成15年度)約647百万円
従業員派遣(平成15年8月
から平成16年7月)
少なくとも延べ約29、000人
勧告書
平成16年(勧)第32号
大阪府堺市鳳東町四丁401番地1
コーナン商事株式会社
同代表者代表取締役疋田耕造
公正取引委員会は、上記の者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第48条第1項の規定に基づき、次のとおり勧告する。
主文
1コーナン商事株式会社は、継続して取引する日用雑貨品、日曜大工用品等の納入業者に対し、納入取引関係を利用して行っている、次の行為を取りやめること。
(1)決算に向けた粗利益を確保するため、事業年度の下半期に企画するセールへの協力を名目として金銭を提供するよう要請している行為
(2)新たに自社の店舗を展開することとなった関東地区、九州地区など自社が本店を置く大阪府から遠隔の地域において、近隣に有力な競争事業者が存在する特定の店舗の新規オープンに際し、事前に算出根拠、使途等について明確にすることなく、当該店舗の粗利益を確保するための金銭を提供するよう要請している行為
2コーナン商事株式会社は、自社の店舗の新規オープン及び改装オープンに際し、その取引上の地位が自社に対して劣っている前記納入業者に対し、自社の販売業務のための商品の陳列、補充等の作業を行わせるために、その従業員等を派遣するよう要請している行為を取りやめること。
3コーナン商事株式会社は、次の事項を前記納入業者に通知するとともに、自社の従業員に周知徹底すること。この通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、当委員
2
会の承認を受けること。
(1)前2項に基づいて採った措置
(2)今後、前2項の行為と同様の行為を行わない旨
4コーナン商事株式会社は、今後、第1項又は第2項の行為と同様の行為を行わないこと。
5コーナン商事株式会社は、今後、第1項又は第2項の行為と同様の行為を行うことがないよう、独占禁止法の遵守に関しての行動指針を作成し、当該行動指針に基づく仕入担当者に対する独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。
この措置の内容については、あらかじめ、当委員会の承認を受けること。
6コーナン商事株式会社は、第1項ないし第3項及び第5
項に基づいて採った措置を速やかに当委員会に報告するこ
と。
理由
第1事実
1(1)コーナン商事株式会社(以下「コーナン商事」という。)は、肩書地に本店を置き、日用雑貨品、日曜大工用品等の小売業を営む、いわゆるホームセンター業者であって、平成16年7月末現在、東京都以西の20都府県の区域において、「ホームセンターコーナン」と称する大規模小売店舗等を181店舗展開しているところ、これらの店舗のうち、政令指定都市の区域内に所在する44店舗中30店舗の売場面積は3、000平方メートル以上であり、政令指定都市以外の区域内に所在する137店舗中92店舗の売場面積は1、500平方メートル以上である。
(2)コーナン商事の平成15事業年度(平成15年3月から平成16年2月をいう。)における売上高は、我が国のホームセンター業界において第二位の地位を占めている。また、コーナン商事は、近畿地区におけるホームセンター業者の中で最大手の業者であって、その店舗数及び売上高はここ数年毎年増加している。
(3)コーナン商事と継続的な取引関係にある日用雑貨品、日曜大工用品等の納入業者(以下「納入業者」という。)は、約500名であるところ、納入業者にとって、コーナン商事は重要な取引先であり、納入業者の多くは、コーナン商事との納入取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため、納入業者の多くは、コーナン商事との納入取引を継続する上で、納入する商品の品質、納入価格等の取引条件とは別に、コーナン商事からの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり、その取引上の地位はコーナン商事に対して劣っている。
2(1)コーナン商事は、遅くとも平成14年以降、毎年6月又は7月ころ、自社の決算に向けた粗利益を確保するため、納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当部署から納入業者に対し、自社の事業年度の下半期に企画するセールへの協力を名目として、自社の事業年度の下半期の期間におおむね相当する6か月間における納入業者の納入金額の1ないし1.5パーセントに相当する額の金銭的負担の提供を要請している(コーナン商事が納入業者に対して提供を求めている金銭的負担を以下「協賛金」という。)。
これらの要請を受けた納入業者の多くは、コーナン商事との納入取引を継続して行う立場上、その要請に応じることを余儀なくされている。
例えば、平成15年7月ころ、コーナン商事は、納入業者に対し、「四半世紀創業大感謝記念セール企画」と称するセールへの協力を名目として、平成15年9月から平成16年2月までの6か月間における納入業者の納入金額の1パーセントに相当する額の協賛金を提供するよう文書で要請し、要請を断った納入業者に対してはその理由を求めるとともに、仕入担当部署の責任者等から繰り返し要請するなどして、当該セールのための景品代金等に要する費用が約9900万円であるところ、納入業者約440社に、協賛金として総額約5億8600万円を提供させている。
(2)コーナン商事は、かねてから、納入業者との間の割戻金契約に基づき、新規オープン店のオープンセール期間における納入業者の当該店舗に対する納入金額に応じて割戻金を徴収しているところ、平成15年3月以降新規オープンした店舗のうち、新たに自社の店舗を展開することとなった関東地区、九州地区など自社が本店を置く大阪府から遠隔の地域において、近隣に有力な競争事業者が存在する6店舗の新規オープンに際し、事前に算出根拠、使途等について明確にすることなく、当該店舗の粗利益を確保するため、納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当部署から納入業者に対し、それぞれの新規オープン店のオープンセール後4ないし8か月間程度の期間における納入業者の当該店舗に対する納入金額の2ないし3パーセントに相当する額の協賛金の提供を要請している。
これらの要請を受けた納入業者の多くは、コーナン商事との納入取引を継続して行う立場上、その要請に応じることを余儀なくされている。
例えば、平成15年3月ころ、コーナン商事は、横浜市保土ヶ谷区所在の保土ヶ谷星川店及び東京都大田区所在の本羽田萩中店の新規オープンに際し、当該店舗の納入業者に対し、オープンセール期間後から同年8月までの約4か月間における納入業者の当該店舗に対する納入金額の3パーセントに相当する額の協賛金を提供するよう文書で要請し、要請を断った一部の納入業者に対してはその理由を求めるなどして、納入業者約310社に、協賛金として総額約6100万円を提供させている。
3コーナン商事は、かねてから、自社の店舗の新規オープン及び改装オープンに際し、自社の販売業務のための商品の陳列、補充等の作業(以下「陳列等作業」という。)を納入業者に行わせることとし、事前に納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく、納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当者から納入業者に対し、陳列等作業を行わせるためにその従業員等の派遣を受けることを必要とする店舗、日時、人数等を指定し、納入業者の負担で、その従業員等を派遣するよう要請している。
これらの要請を受けた納入業者の多くは、コーナン商事との納入取引を継続して行う立場上、陳列等作業を行うためのものであるにもかかわらず、その要請に応じることを余儀なくされており、例えば、コーナン商事は、平成15年8月から平成16年7月までの間に新規オープンした26店舗及び改装オープンした11店舗の計37店舗すべてにおいて、陳列等作業を行わせるため、納入業者に少なくとも延べ約2万9000人の従業員等を派遣させ、使用している。
第2法令の適用
前記第1の1及び2の事実によれば、コーナン商事は、自己の取引上の地位が納入業者に対して優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、納入業者に対し、自己のために金銭を提供させているものであり、これは、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第14項第2号に該当し、また、前記第1の1及び3の事実によれば、コーナン商事は、百貨店業における特定の不公正な取引方法(昭和29年公正取引委員会告示第7号。以下「百貨店特殊指定」という。)の備考第1項に規定する「百貨店業者」に該当するところ、その取引上の地位が自己に対して劣っている納入業者に対し百貨店特殊指定の第6項ただし書に規定する場合に該当しないにもかかわらず自己の販売業務のためにその従業員等を派遣させて使用しているものであり、これは、百貨店特殊指定の第6項に該当し、いずれも独占禁止法第19条の規定に違反するものである。