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物流企業の新型コロナ対応/柔軟な動きと急速な業務変革迫られる

2020年12月08日/調査・統計

日本物流団体連合会は12月8日、物流業における新型コロナウイルス感染症への対応動向について調査を行い、概要速報版をとりまとめ公表した。

<指示を出した対策(現場系業務)>
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<今後の物流への影響 輸送部門(BtoB)国内>
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それによると、「感染拡大期における初期対応と課題」では、コロナ禍では、物流が人々の生活に欠かせない職業(エッセンシャルワーカー)として、あらためて認知された一方、緊急事態宣言時下には多くの会員企業が現場を原則出社、一部は自転車・車通勤して対応するなど物流を止めてはならないという懸命な活動が続けられていたことが判明した。

危機感を持って対応を始めた時期は、国内拠点2月(41.4%)、海外拠点1月(34.5%)が最多、緊急対策本部が設置、経営トップがメッセージを発信するなど全社的な支援体制が形成された。

現場では、1.接触・対面が避けられないドライバー業務や庫内作業における集団感染リスクへの対策、2.人の移動制限があるなかでの業務遂行の体制維持、3.貨物の急増減による自宅待機・応援指示への対応、が急務とされた。

「テレワーク、Web 会議、ペーパーレス化の推進」では、働き方改革の一環で、昨年からテレワーク・サテライトオフィス等を始めた企業は比較的スムーズに実施できたものの、全社ベースでの運用は想定していなかったこと、必要な機器・通信環境(持ち運び可能なパソコンや携帯電話、通信機器、個別システム等)も整わない中、対応を強いられた企業も多かった事が判明した。テレワーク・在宅勤務の効果有無について、事務 74%、現場(現場事務)69.3%と高い一方、「全く機能しなかった」、「なんとも言えない」と否定的な意見も、テレワークに向く仕事とそうでないものの整理に課題があった。

メリットとして、1.電話対応が減り業務に集中できるようになったこと、2.全国規模の社内会議が web で完結されて経費削減が実現、3.個人のやるべき仕事が定義(ジョブ型化)さえされていれば、生産性の確保が可能といった意見も。

デメリットとして、1.会議の数・時間ともに以前よりも増えたこと、2.業務の指示、進捗具合、評価など、生産性の評価が難しいこと、3.入出庫作業など“現地現物”の性質上そぐわない(手間が増える)といった点が指摘されている。

「新型の感染症に対応したBCPの整備」については、初期対応に関して、既存の自然災害 BCP・新型インフルエンザ対応マニュアル等内容では不足、新たに総務部や対策本部等で検討、すでに策定/改定済みの事業者もみられる。さらに、今回の感染拡大をふまえ、多くの事業者が今後の感染症拡大、未知のパンデミック発生も視野にいれた BCP の早急な策定の必要性を感じている。

<ウィズコロナ、アフターコロナ下の物流業経営に必要な対応>
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「ウィズコロナ、アフターコロナの物流に向けて」では、現状は EC 市場など BtoCは堅調な一方、BtoB(企業間取引)貨物量が回復に至らず、1.輸送単価の下降、2.車両等の固定費負担、3.低稼働率、など事業への影響が長期化。一部では、コロナ禍の暫定的な対応として、1.月末・月初納品等の分散化、2.時間指定の緩和、3.専用車両など固定費の補てん要求、4.助成金の活用等を行っている状況としている。

しかしながら、このような応急処置に留まらず、コロナ対応を機に、1.パレット等の荷姿の標準化、2.納期の分散化、3.商習慣の見直しなど、関係者が一体となって物流の生産性向上の取組みを加速させていくことが重要であるとの意見が多数挙がった。

物流事業者も、これを機に1.無人フォーク・AGV 等の実証研究など省人化への取組みの加速、のほか、2.テレワークの継続運用、サテライトオフィス整備による本社のスリム化、3.テレワーク推進に関わるデジタル化・ペーパーレス化の検証など、柔軟な働き方を探る動きも顕著になってきたとしている。

国内の感染者総数が15万人を超える(2020年12月1日時点)状況にあることから、このコロナ禍を乗り切り、新しい物流業界のためにも、取引条件の改善や商慣習の見直し、荷役作業の効率化やテレワークを含む働き方改革は、継続的に取り組むべき課題と言えようと結んでいる。

新型コロナウイルス感染症は第三波を迎え、未だ感染収束の目途が立たない状況。改めて、これまでの経験を踏まえ、感染対策、BCP等について検証を重ねて、改善を図っていくことが必要と思われる。また、新型コロナウイルス感染症を機に「非接触・非対面」の取組みに加え、「パレット等の荷姿の標準化」、「業務のペーパーレス化」、「商習慣の見直し」等の物流の生産性向上に向けた取組みを進める動きが活発になってきている。こうした動きを加速していくことが望まれるとしている。

なお、調査報告書は、引続き作業を進め、年明けを目途にとりまとめ、公表する予定だ。

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