富洋海運の完全子会社である堂島汽船(2社をあわせて「富洋海運グループ」)は、2024年10月18日に兵機海運の株式に対する公開買付けを開始したが、株式取得の目的を改めて発表した。
株式取得の目的として、要旨いくつかの項目を挙げている。まず、「収益機会の逸失」では、2020年以降の4年間に渡り、外航事業ブームで多くの海運会社が利益を積み上げられなかったことを財務諸表から推察。
高収益を上げられるはずであった領域での収益機会を複数年に渡って逃したことからの学びがあるべきで、今後の成長機会を見定めた上で経営資源を割り振っていくには、海外事業の強化を含めた事業戦略を持つことが企業価値向上の観点からは重要であると考えている。
「成長戦略の必要性」では、既存ビジネスの構造では収益性の改善が難しいように見受けられる。そのため、事業成長を実現させるには、最低限競合と同程度の収益性を目指すべく、競合に先んじたビジネス展開への挑戦が必要としている。
上場企業として企業価値向上を促進するためには、兵庫県を中心とした限られた地域での商圏にとどまるのではなく、それ以外の領域にも目を向けることが必要。これにより、既存の関西圏でのビジネスや取引先との関係を維持しつつも、新たな収益の確保ができるものと思料。
「マーケットの示唆」では、成長性について、兵機海運の2015年3月期から2024年3月期までの売上高の年平均成長率(CAGR)は年率0.6%(138億円⇒146億円)とほぼ横ばいの推移であり、事業の拡大が見られない状況だ。
近年、資本効率を意識した経営管理の指標として、ROIC(投下資本利益率)に焦点が当たっている。兵機海運のROICを試算したところ3%台にあり、利益率の水準としてはより高めていく余地があると見ている。
そして、「企業価値向上への道筋 ~ 両社の強みを掛け合わせ、新領域を梃子として成長戦略を推進」していくとしている。
富洋海運グループとの業務提携は新たな収益の確保となり、既存の商圏は維持しつつ、兵機海運の企業価値向上を自ずと実現できると考えている。これまでに兵機海運に対しては、提案書、公開買付届出書、対質問回答報告書並びに面談等で伝えている通り、兵機海運の内航、陸運及び港運での強みと、富洋海運グループの外航海運での強みを掛け合わせ、両者の海上輸送、船員育成をはじめとしたノウハウの相互作用を実現していきたいと考えている。
「富洋海運グループとしてもたらせる価値の再整理」として、国際的な海運会社・荷主企業との取引、高度な安全基準が求められる石油タンカーの管理を通じた、各種船型の船舶管理ノウハウ、船員育成のノウハウ、海事クラスターへの積極関与、スタートアップ企業への投資を挙げている。