日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は3月10日、企業のロジスティクス・物流担当者と大学関係者との情報交流を図る催しを東京都内で開催した。
人手不足を背景に、省人化や物流効率化の軸となる高度物流人材育成が求めれている。講演会や名刺交換会を通じて産学連携やインターシップの機会創出につなげ、学生に物流・ロジスティクスの社会的な重要性や魅力を伝えることが目的だ。
参加したのは企業のロジスティクス・物流採用担当者や、物流事業者の採用担当者、IT系、デベロッパーなどから約60名と、流通経済大学や東京海洋大学、早稲田大学など9つの大学から16名。前半のプログラムでは早稲田大学 創造理工学部・経営システム工学科の大森岐一教授と、東京海洋大学 海洋工学部 流通情報工学科の渡部大輔教授が登壇。「大学におけるロジスティクス・物流教育の実践状況」をテーマに講演を行った。
早稲田大学の経営システム工学科では、社会を支える様々なシステムを研究対象とし、大学・大学院併せて14名の教員が指導にあたっている。同学科の教育方針は「知識より問題解決能力」を重視する点。実際のビジネスにおいて、数理的な手法を用いて課題解決の意思決定支援を行うことができる人材の育成に重点を置く。カリキュラムは学部前半で数学や統計学などエンジニアリング基礎科目を学び、3年次から各分野の専門研究に取り組む。大学院ではサプライチェーン戦略や生産マネジメント、会計、企業経営論などさらに高度な教育体系を提供している。
大森教授の専門は、データドリブンSCMやサプライチェーンレジリエンス、フィジカルインターネットなど「オペレーションマネジメント」。大学内には産学連携を目的とした研究所も設置されており、企業との共同研究や実務データを活用した研究も行われ、学生にとっては企業の実課題に触れる貴重な機会となっている。
東京海洋大学 流通工学科は「分理融合」のユニークな教育内容が特徴だ。1978年、日本で初めての物流・ロジスティクスを専門に学ぶ学科を設置したことでも知られ、入学定員42人に対し教員19人という少人数体制で、工学、情報、社会科学の3分野を柱とした教育を実施している。
教育方針は「理論と実践」。1年次から「ロジスティクス概論」など専門科目を配置し、早くから物流やロジスティクスについて学ぶ機会を提供。経済学や経営学、マーケティングのほか、データ分析や可視化に必要なプログラミングや工学系科目を総合的に学ぶカリキュラムとなっている。
近年はAI・データサイエンス教育も強化しており、機械学習やデータ分析の科目を充実させている。大学院では海洋産業分野におけるAI活用を目的とした教育プログラムも実施し、海外インターンシップや東南アジアの日系物流企業で実務経験を積む機会が提供されている。
学生の動向、就職先はIT系が主流
物流・ロジスティクス教育の高度化が進む一方、学部卒業者の進路についてはどうか。早稲田大では約半数が大学院進学、IT系とコンサルティング会社など専門サービス業がともに17.1%、製造業・物流業は8.6%にとどまる。修士課程修了者でも専門サービス業が40.3%、IT系が29.9%、製造・物流業は11.9%となっている。大森研究室では6~7割が物流分野へ就職しており「生成AIによりITやコンサル人材の価値もコモデティ化する傾向がある。そうすると社会課題としての物流が注目されてくるのでは」と話す。
東京海洋大でも運輸・郵便業への就職状況は2013年度は44.7%だったが、2020年度には21%に減少。学生の志向も変わり、近年は物流系からIT系へと大きく変化しているという。こうした状況に渡部教授は、「物流DXにより学生が企業においてキャリアパスが描けることが必要。学科設立から50年を経て企業のトップマネジメントを担う人材輩出につながっている。CLO(物流統括管理者)選任義務化で高度人財が注目されるが、教育には時間が必要だ」と説く。
その後の名刺交換会では、企業と大学関係者が、互いの事業内容や研究分野などについて情報交換を行う場となった。「物流最適化などプラットフォーム事業の取り組みを加速するため大学との連携を考えている」(IT・メーカー)、「社内教育プログラムの参考事例としてのヒアリングが目的。産学連携や採用につながれば」(物流事業者)、「物流DXを推進している。産業連携やインターシップにつなげたい」(自動車メーカー)など、サプライチェーン全体領域でDX人材の確保、育成を求める声が多く聞かれた。
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