ヤマトホールディングスは9月28日、2019年の創業100周年に向けた中期経営計画「KAIKAKU 2019 for NEXT100」を策定し、山内雅喜社長が発表した。
<「KAIKAKU 2019 for NEXT100」の全体像 >
中期経営計画は「働き方改革」を経営の軸に据え、「デリバリー事業の構造改革」、「非連続成長を実現するための収益・事業構造改革」、「持続的に成長していくためのグループ経営構造改革」の3つの改革を断行することで、次の100年もヤマトグループが持続的に成長していくための経営基盤の強化を目的とする。
最終年度の2019年度には、売上高1兆6700億円(2016年度実績1兆4668億円)、営業利益720億円(348億円)、利益率4.3%(2.4%)を計画している。営業利益の720億円は同社史上最高となる。
山内雅喜社長は「現在、労働力人口の減少、人口減少と地域格差の拡大、生活と嗜好の多様化、事業活動のグローバル化、新技術の急速な発展と普及など、大きな環境変化に直面している。この課題を解決するために中・長期的に4つの取り組みを進めていく」として、まず「働き方改革」を最優先で進めていくと話した。
「働き方改革」では、「新たな働き方の実現」として、「総労働時間の抜本的改善」、「ライフステージに応じた自分らしい働き方を実現できる人事制度」、「短時間社員(有期・無期)がステップアップできる制度の構築」、「ワークライフバランスの推進」、「社員のケアに目が行き届く管理者の配置拡充」を挙げている。
総労働時間の抜本的改善では、フルタイマー超勤時間の50%削減とパートタイマーの超勤時間の大幅抑制を挙げている。
「個の力」の最大化を挙げ、自主・自律が評価され、イキイキと働くことができる評価制度の導入や、教育体系を再構築することで、社員の経営参画意識を高め、誇りとやりがいを創出する、としている。
さらに、オープン型宅配便ロッカー(PUDO)、8次 NEKO システムによる集配オペレーションの効率化、AIやロボット技術などテクノロジーをフル活用し、働きやすさの基盤となる業務の徹底的な効率化を実現するなど、徹底的なオペレーションの効率化を図る。
働き方改革では2009年までの3年間に1000億円を投じる。
2つ目の取り組みとして構造改革を挙げ、そのうち、デリバリー事業の構造改革では効率的なラストワンマイルネットワークの再構築と、継続的かつ適正なプライシング施策によって、デリバリー事業の集配キャパシティの拡大と収益力の回復を両立させるとしている。
そのために、新たな「複合型ラストワンマイルネットワーク」の構築を図る。従来の宅急便の「多機能型ドライバーネットワーク」に加え、投函商品や特にニーズが高い夜間の配達を専門に行う「配達特化型ドライバーネットワーク」、大口顧客の商材や大型の荷物を専門に扱う「域内ネットワーク」など、パートナーを含めた分業型・複合型ネットワークの整備を進め、伸張が続くECをはじめとする荷物の増量に対応する。
配達特化型ドライバーネットワークでは、7時間勤務の契約社員とパートナーを組み合わせ、2019年までに1万人を確保するとしている。これにより、同社のサービスドライバーの負担を減らし、キャパ自体は増やしていく仕組みを作る。
プライシング戦略では、契約運賃の決定プロセスを標準化するため、出荷量だけでなく、行き先、サイズ、集荷方法、不在率、また、燃料費や時給単価などの外部環境変化によるコスト変動等を組み込んだ「法人プライシングシステム」を確立し、恒常的に契約運賃を見直すことで、将来の環境変化にも柔軟に対応できる適正な運賃を設定する。
収益・事業構造改革では、羽田クロノゲート、厚木・中部・関西の各ゲートウェイや沖縄国際物流ハブ、サザンゲートなど主要基幹ターミナルとアジアを中心に拡がるクロスボーダーネットワークを有機的に結び付け、スピード輸送ネットワークに付加価値機能を加える「バリュー・ネットワーキング」構想を更に進化させる。
グループ経営構造改革では、グループの総合力を発揮し「稼ぐ力」を高めるため、今後、組織構造を改革し、アカウントマネジメント・管理会計・人事(評価)の三位一体の経営システムを刷新する。
経営基盤の強化では、最先端のデジタルテクノロジーを取り入れ、新たな事業を創出し、既存事業を進化・革新することに加え、既存ビジネスにとって破壊的となるモデルに先手を打って機動的に対応するとしている。デジタル・イノベーションへの対応には500億円を投じる予定だ。
山内社長は「このように中・長期的にさまざまな改革施策を実行することで、今では確かにハードルの高いフルタイマー超勤時間の50%削減なども必ず実現できると思っている。1000社との運賃の値上げ交渉については、現在約8割以上進んでいる。その結果については10月に発表する予定だ。福岡での書類送検は深く受け止めている。さまざまな現状の課題を、今回発表した改革を実行していくことで、ヤマトの次の100年の成長につなげていきたい」と述べた。