
2022年6月にフクダ・アンド・パートナーズ(F&P)が福島県郡山市で開発をスタートした新たな広域防災拠点「福島郡山LLタウン」。その1棟目となる施設が2025年9月に誕生した。前編ではF&Pの福田社長に「福島郡山LLタウン」の構想実現までの思いを振り返ってもらったが、後編では2025年10月20日に竣工式と並行して行われた災害支援に関する協定締結式での4社1自治体の代表の言葉や、広域防災連携拠点としての全体構想と、「福島郡山LLタウン棟」の地域防災機能を紹介する。取材:2025年10月20日 於:福島郡山LLタウン棟(B敷地)
東日本大震災の現場体験活かす
5者の一致で災害支援協定の締結が実現
JR郡山駅から車で西へ約20分(約7km)、東北自動車道「郡山中央スマート」IC至近と交通の利便性の高い場所に「福島郡山LLタウン」の開発地がある。総開発敷地面積は15万2272.18m2という巨大な面積。今回1棟目となる福島郡山LLタウン棟(B敷地)が竣工し、竣工式とあわせて福島郡山LLタウンを活用した災害支援協定(災害時における避難者支援・支援避難所等の協力及び物資等の緊急輸送等に関する協定)締結式が開催された。
会場の壇上には、「福島郡山LLタウン」プロジェクトの縁により結びついた、郡山市の椎根 健雄市長、ヤマトホールディングスの長尾 裕社長、プロロジスの山田 御酒代表取締役会長 兼CEO、NTT東日本の熊谷 敏昌副社長、そしてフクダ・アンド・パートナーズの福田 哲也社長が並ぶ。
多くの関係者や報道陣を前にあいさつに立った福田社長は、東日本大震災に思いを馳せ「震災後、津波で施設がやられた悲惨な現場状況のなか、お客様の72施設の復旧支援に全力で取り組んだ。食品関係の倉庫が多く、復旧後にパンやおにぎりが店頭に並んだ時に涙したことはいまだに忘れられない。物流は生活のインフラであり、『物を届けること』は、災害時に命を守るライフラインになると強く心に刻んだ」と感情を抑えつつ、静かに語る。
<壇上での福田社長>

この経験から、「災害時は一人の力だけではだれも救えない。災害時の役割を決め、どう助け合うか仕組みづくりが必要だ」との思いに至ったという。
また、本開発の経緯については、「最初にこの土地の紹介を受けたとき、不動産開発が私たちのメイン事業ではないとの理由でお断りした。しかし、実際に現場を見て、自衛隊の駐屯地が近くにあるインターチェンジであることに驚き、複数の交通手段が選択できる素晴らしい立地だと気がついた。広域物流拠点としてだけでなく、国のレジリエンスに貢献する事業を企画できる地になるのではないかと。そこで、開発についてプロロジス様に相談し、同時に新しい物流拠点としてヤマト運輸様にも提案をした」と説明。それから、郡山市の災害時における物資等緊急輸送に関するニーズを聞き、NTT東日本の支援と協力を得て、助け合う仕組みのひとつとして「福島郡山LLタウン」を活用した災害支援協定の締結を実現させたという。
また、福島郡山LLタウン棟の特長として「電気の3次バックアップシステムにより電気が消えない施設を実現したことで、『止まらない物流』と『明かりが灯り続ける避難所』を実現している」として、「電気が消えたことで物流が止まれば、店舗に食品は並ばないし、真っ暗な中では避難者が不安になる。また、この場所は私たちF&Pにとっても、本社や支社が被害にあった時を想定した食料や災害備品の保管場所として機能し、当社のBCPの一端を担っている」と、震災での経験を本施設に生かしていることを語った。
<プロロジスの山田代表取締役会長兼CEO>

続いてプロロジスの山田代表取締役会長兼CEOは「物流施設開発デベロッパーとして、この23年間の間に約120棟の施設を開発してきた。大型物流施設開発を進める中で、『地域との共生』を掲げて、これまでに(郡山市を含めて)15の自治体・行政機関と有事の際の避難場所として施設を提供するとの協定を結んでいる」と自社の取り組みを紹介。
また、「福島郡山LLタウン」開発については、「施設自体に、どんな時も使えるトイレや水回り、電源等様々な工夫を凝らして、有事の際に快適に過ごしてもらえるようにしている」ことをアピールした。
そして、1棟目となる福島郡山LLタウン棟と、2026年10月に竣工予定の「プロロジスパーク郡山1」にヤマトグループが入居し、災害時に2棟連携で支援を行っていくことを明らかにした。さらに、同年1月着工の「プロロジスパーク郡山2」の計画についても明らかにし、「新たな入居企業にも協定への参加を呼びかけて『物流プラスアルファ』のモデルケースとして育てていく」と語った。
<郡山市の椎根市長>

郡山市の椎根市長は、市では、東日本大震災や令和元年東日本台風など度重なる自然災害の教訓を踏まえた減災・防災のまちづくりを推進するため、各分野のノウハウを持つ民間事業者の皆様と応援協定を締結いただくなど、災害時の体制強化に努めているとし、「本協定により、避難所運営や災害支援物資の集積に関する協力体制が構築されることは、誠に心強く、御礼申し上げたい」と述べた。
また、「今後も全力で地域の防災力向上に取り組んでいく」と、市としての防災意識の高さを表明した。
<ヤマトホールディングスの長尾社長>

ヤマトホールディングスの長尾社長は、郡山市との関係を「1955年に路線便の拠点として進出したのが最初。宅急便の発売に伴い1976年に営業所をオープンし、現在は8拠点、セールスドライバー約150名を含む、従業員750名の陣容まで成長した」と郡山市内の宅急便のサービス展開について語った。
そして、「福島郡山LLタウン棟」への入居については、「首都圏に好アクセスな立地に拠点を集約することができる。今回『福島郡山LLタウン棟』に開設した、法人向けにコントラクトロジスティクスサービスを提供する郡山ロジセンターに加え、『プロロジスパーク郡山1』に福島県下の宅急便の全国仕分け・輸配送機能や管理・営業機能を移転させる。当社の物流ネットワークを地域防災に生かし、地域のみなさまに貢献していきたい」と述べた。
<NTT東日本の熊谷副社長>

NTT東日本の熊谷敏昌副社長は、東日本大震災発災当時、NTT東日本福島支店の営業部長として、被災現場で復旧活動していた自身の経験を重ね、「当時の記憶は色褪せず、1日も忘れたことはない」と語った。
その経験と記憶をNTT東日本グループとして風化させないための取り組みとして、「2025年4月1日にグループとして防災研究所を設立した。学術団体とも連携し、蓄積した情報を福島郡山LLタウンにも注入したい。」と、防災・減災に関する知見を蓄積していることを説明。
そして、「郡山が防災の最先端地域になるよう尽力したい。われわれは災害から逃げない、目を背けない」と力強く締めくくった。
<署名を終えた各代表者(左から、NTT東日本の熊谷副社長、ヤマトホールディングスの長尾社長、郡山市の椎根市長、プロロジスの山田会長兼CEO、F&Pの福田社長)>

日本海と太平洋を結びつける
広域物流と広域防災連携の適地
「福島郡山LLタウン」のLLには、Logistics(平常時に人の生活を支える社会インフラである物流拠点)とLife-line(災害時に人の命を守る広域防災連携拠点)の2つの意味を込めた。その意味通り、平常時には人の暮らしを支える物流施設としての役割、災害時には命を守る防災機能を発揮する施設として開発を進めている。
本開発は、F&Pのグループ会社である(株)福島郡山LLタウンとプロロジスの共同開発プロジェクトとなる。全体像は、今回竣工した「福島郡山LLタウン棟」(B敷地)及び、2026年10月に竣工予定の「プロロジスパーク郡山1」(A敷地)、2026年1月に着工した「プロロジスパーク郡山2」(C・D敷地)及び、2025年4月に着工したE敷地と、4棟からなる広大な物流施設集積パークとなる。
<平常時・災害時ともに複数ルートが利用可能>

締結式での5者の発言でもあったように、物流および防災の観点から考えても、まさに「適地」。郡山市は、太平洋と日本海を結ぶ重要な高規格道路である磐越自動車道と東北自動車道が交わる「東北の交差点」であり、東西南北を結ぶ結節点というわけだ。東北だけでなく、首都圏や、関西圏への輸送が可能であるだけでなく、東北自動車道や首都圏が被害を受けた場合は、磐越自動車道により、首都圏を経由せず、北陸自動車道を経由して関西圏に物を運ぶこともできる。
また平常時には、物流拠点として郡山貨物ターミナル駅からの貨物輸送に加え、福島空港からは航空輸送、小名浜港からは海上輸送も可能だ。さらに、災害時には、近くに陸上自衛隊の郡山駐屯地があり、災害救助活動に連携して国のレジリエンスに貢献できる。
このように「福島郡山LLタウン」は、広域物流と広域防災拠点として最適な立地を有している。また、企業のリスク分散やBCP(事業継続計画)の観点からも優れた拠点となり得ることが、地図上で浮かび上がってくる。
なお、この事業はF&PのBCPも兼ねている。F&Pは、3年前に仙台市長町エリアに防災型リバーシブルビル「仙台長町未来共創センター」を完成させ、本社機能の代替地として選定。今回竣工した「福島郡山LLタウン棟」(B敷地)にも、BCPの広域拠点として「未来共創センター」の機能を持たせ、社員250名×6日分の食料やBCP災害備品を用意している。協定に基づき、災害時にはこれらの配送をヤマト運輸に委託。また、福島郡山LLタウン周辺が被災した場合には、避難者に無償提供する。
被災しても明かりが消えない仕組みや紙トイレ
よりパワーアップした防災機能
今回竣工した「福島郡山LLタウン棟」(B敷地)の機能先進性についてみてみよう。敷地面積は2万1015.47m2、延床面積8619.72m2で、ヤマト運輸が「郡山ロジセンター」として入居する物流施設となる。鉄骨造、倉庫は平屋、事務所棟は地上2階建てである。また、100%再生可能エネルギーを活用するなど環境性能を高めた施設となり、BELSの最高ランク6ツ星とZEB認証を取得している。
<空撮による福島郡山LLタウン棟(B敷地)の全景>

<開放的な空間で訪問者を迎える、事務所棟エントランス>

立地面では前述した通り、災害時には複数の輸送手段(陸路:新幹線+日本貨物鉄道+4つの高速道路、空路:福島空港、海路:小名浜港)を活用した広域物資輸送が可能だ。
機能面では、平常時はヤマト運輸の「郡山ロジセンター」が法人顧客の物流を支え、災害時には、3次バックアップシステム「①太陽光発電パネルと蓄電池、②非常用発電設備、③V2Xシステム」による、電気が消えない施設となる。
<V2XシステムによりEV、FCVから建物へ給電が可能>

また、事務所棟にはテナント事務所のほか、「福島郡山未来共創センター」を併設した福島郡山LLタウンの管理事務所、大会議室、食堂、ラウンジ、BCP倉庫を設けており、以下がそれぞれのポイントとなる。
1.福島郡山LLタウン管理事務所
(株)福島郡山LLタウンの本社であり、F&Pが展開する「福島郡山未来共創センター」でもある。災害時には、F&Pの災害対策室として情報集積・発信基地となる。災害時に重要とされるTKB(トイレ・キッチン・ベッド)に加えてシャワーも利用可能。
2.大会議室
平時は産官学共創の会議室や、学生への防災教育の場、イマーシブ(没入感のある映像空間)の活用により、防災訓練を実施する場として機能する。災害時には、地域の避難所として避難者を受け入れる。
3.食堂
テナント企業の社員やドライバーが利用し、郡山市のブランド米「あさか舞」を使用した米の地産地消を行う。災害時には地域の避難所となり、大会議室とあわせて85名の避難者受け入れに活用。
4.ラウンジ
F&Pが施設利用者に無料開放する共有スペース。災害時は、能登半島の震災時にも避難所に看護師の派遣を行った特定非営利活動法人ジャパンハート(Japan Heart)による緊急医療支援活動(避難所への医療チーム派遣)拠点となる。
5.BCP倉庫
前述のF&P社員250人分の食料やBCP災害時備品が保管される。多様な食料は、老若男女に好まれる商品を社員が試食して選定。毛布やマット、衣類、工具なども用意される。
さらに、グループ会社であるスマイル・ブラザーズ・ジャパンが製造・販売を行う「ほぼ紙トイレ」の販売在庫を保管。し尿約1600回分の使用が可能な備蓄型・組立式・個室トイレである。ヤマト運輸の輸配送網を活用し、平常時は全国への配送を委託。災害時には、郡山市の要請に応じて指定の避難所への配送も想定している。
<5者の役割分担>

今回締結された協定では、災害時の5者の役割を定め、それに基づいた連携を行うこととなっている。
具体的には、郡山市の要請を受け、ヤマト運輸・プロロジス・F&Pが避難所や物資の集積・配送場所を提供。さらにヤマト運輸が支援物資配送を担い、NTT東日本はそれぞれに対して災害情報の提供を行うといった、プッシュ型支援体制の構築である。
また、平常時にも継続的、定期的な防災訓練に取り組むことが盛り込まれている。形骸化しやすい防災訓練だが、F&Pが開発・運営する「仙台長町未来共創センター」では毎年、テナントや電力会社の協力のもと、帰宅困難者の受け入れ訓練や停復電訓練など、実践的な訓練を行っている。訓練では、毎回課題抽出とその後の改善を繰り返すことによって、その実効性を高めている。この経験を「福島郡山LLタウン」にも生かし、完成した「福島郡山LLタウン棟」を中心に、今後入居するテナント企業とも一体となって防災訓練を実施していく方針だ。
<式典での福田社長>

【編集後記】
東日本大震災で、72もの物流施設の応急対応および復旧支援を経験した福田社長の思いが、また一つ福島県の地で実った。様々な縁で結び付き、多くの賛同者を集め、「福島郡山LLタウン棟」(B敷地)の完成となる。福田社長の「災害時には『物を運ぶこと』や『助け合う仕組み』を構築していくことが人を守る」という信念に基づく事業は、国のレジリエンスにもつながっていく官民連携の好モデルである。災害時における物流施設の価値を示し、さらに連携の方向性を切り開いた物流施設の在り方として今後も高く評価されるだろう。(LNEWS編集部)
<F&Pの福田社長>
■プロフィール
福田 哲也(ふくだ・てつや)
1966年10月19日千葉県生まれ
1989年フジタ工業(現フジタ)入社
退職後、2002年フクダ・アンド・パートナーズ創業
代表取締役社長
現在に至る
■フクダ・アンド・パートナーズ 企業概要
事業内容:コ・ソーシング事業(設計監理/プロジェクトマネジメント /PM/不動産サービス)/社会課題解決型事業
売上:約118億(2025年9月期) ※創業以来増収増益基調で成長
創業:2002年1月
人員:215名(2025年9月期)
特長:物流施設作りの設計やプロジェクトマネジメントで東京ドーム534個分の延床面積累計実績
外部評価:
2025年12月 令和7年度「ふるさと企業大賞(総務大臣賞)」を仙台長町未来共創センターが受賞
2023年4月 内閣官房「国土強靭化・民間の取組事例」に仙台長町未来共創センターが選定
2021年12月 経済産業省「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定
EcoVadis(フランスの国際的なサスティナビリティ評価機関)ESG評価62点ブロンズ