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日本鉄鋼連盟/ 「環境税」に関する見解

2003年09月25日/未分類

(社)日本鉄鋼連盟は「環境税」に関する反対の見解を表明した。
1.地球温暖化問題は世界全体で取り組むべき課題
地球温暖化問題は人類共通の重要課題であり、一国のみならず世界全体で対策に取組むべきである。
一方で、京都議定書は世界のCO2排出量の1/4を占める米国が入っていないことや、中国(第2位)やインド(第5位)が削減義務を負っていないこと等から、世界のCO2排出量の1/3しかカバーしていない。真に実効性のある国際的枠組みとするためにも、また、国際競争力上のイコール・フッティングの観点からも、米国と途上国を含む共通のルール作りが強く求められる。
2.地球温暖化問題は各主体(国、自治体、企業、国民)が責任を持って取り組む課題
地球温暖化問題は、企業のみが「加害者」ではなく、エネルギーを消費し、CO2を排出する誰もが「加害者」であり、「被害者」でもある。従って、各主体(国、自治体、企業、国民)がそれぞれ、CO2削減に向けて努力すべきである。
わが国のCO2排出量の半分弱を占める産業界は、1997年のCOP3(京都会議)以前から積極的にCO2排出削減を実行してきており、地球温暖化対策推進大綱の中心施策である日本経団連自主行動計画の目標(CO2排出量対1990年度±0%)に対して、▼3.2% (2001年度)と着実に成果を挙げている。また世界最高のエネルギー効率の素材や製品を提供し、民生・運輸部門のCO2削減にも貢献している。
しかし、2001年度のわが国のCO2総排出量は、対1990年度▼6%目標(2010年度)に対し、+5.2%となっており、特に国民が主体である民生部門(わが国CO2排出量の1/4)と運輸部門(同1/4)が計画に対して大幅な未達となっている。
こうした実情にも拘らず、本来国民が自ら削減すべき民生・運輸部門の未達分をCO2削減に努力している産業界に「環境税」を重課することにより負担させることは本末転倒であり、先ずは国民に対して省電力等の実践によるライフスタイルの見直しを要請すべきである。
その上でなお民生・運輸対策の財源が必要というのであれば、既存の予算を最大限活用するとともに、日常生活(民生)や車の運転(運輸)でエネルギー消費の恩恵を被り、CO2を排出している国民一人ひとりに、何らかの経済的負担を求めるべきである。
3.新たな「環境税」の導入は、鉄鋼業に壊滅的な打撃を与える
日本鉄鋼業は1971年度から1989年度までに3兆円もの環境対策・省エネルギー対策費を費やし、▼20%の省エネルギーを実現した。また、わが国の最終エネルギー消費量の11%を占めているため、「省エネルギー目標の達成は社会的公約」との認識のもとに、さらにエネルギー消費量▼10%(1990年度対2010年度)を上乗せするという極めてチャレンジングな目標を掲げ、2001年度には既に▼8.5%を達成している。この間(1990年度~2001年度)、1兆4千億円の環境対策・省エネルギー対策費を投じてきている。
世界最高のエネルギー効率(中国は日本の1.5倍の低いエネルギー効率)と国際競争力(コスト、品質)を有する日本鉄鋼業が、将来に亘る鋼材の供給基地として、高級鋼を使用する自動車や電気機器等の国内需要家、或いは中国等、アジアの各国と強いリンケージを保ちながら共に発展していくことが、グローバルな地球温暖化防止とアジアの発展に貢献しうるものと考える。
現在、韓国の有力鉄鋼メーカーは固定資産税等が極めて軽く、トータルの税負担が事業収益の30%程度であるのに比べて、日本の鉄鋼メーカーは、事業収益の60%もの負担を強いられており、税制上劣位にある。
そのうえ仮に、3,000円/t-Cの「環境税」が導入されるとすれば、鋼材1トン当たり約2,000円の追加負担となるが、激しい国際競争の中での価格転嫁は、到底困難である。その結果、これまで国際競争力を堅持してきた日本の鉄鋼業は、ここ3年間の年度経常利益(1,300億円/年度 1999~2001年度)を上回る税額を毎年支払うことになる。
これは環境対策・省エネルギー対策に多大の投資を行っている鉄鋼業に対して、「二重の負担」を強いるものであり、競争条件の劣位がさらに拡大する。
この結果、鉄鋼業は壊滅的な打撃を被り、国内での継続的な事業存立が危うくなり、鉄鋼生産を海外に移転せざるをえないという、極めて重大な事態を引き起こすことすら考えられる。日本鉄鋼業は勿論のこと、需要産業(自動車、電気機器等)の国際競争力にも極めて深刻なダメージを与えることになる。
同時に製鉄所が立地する地域に加えて、関連する産業の立地地域にも打撃が波及し、経済・雇用にも甚大な被害を及ぼすことになりかねない。このように「環境税」の導入は政府の掲げる「環境と経済の両立」と逆行するものである。
4.他国への鉄鋼生産移転は地球規模での温暖化防止に逆行
地球温暖化防止の観点からも、世界で最もエネルギー効率の良い日本から、エネルギー効率の低い他国に鉄鋼生産が移転することによって、却って世界のCO2排出量は増えることになり、地球規模の温暖化防止にとっては全く逆効果となる。
5.「環境税」ありきを前提とした議論に踏み込むことに反対
環境問題に対する税制面の検討に際しては、京都議定書批准を巡る不透明な国際情勢を踏まえた環境施策全体の中での幅広い視点が重要であり、さらには国民の十分な理解・協力が得られなければならない。
また、今年10月には石油石炭税が施行され、石炭も加えた全ての化石燃料に課税されることになっており(2007年度までに段階的に税率アップ)、その使途は、経済産業省と環境省の共管のもとに、地球温暖化対策に充当されることになっている。
「環境税」は、石油石炭税と歳出、歳入とも同じ性格を有しており、石油石炭税を課税強化する同じタイミングに、「環境税」を議論しようとする考えは極めて遺憾であり、「環境税」ありきを前提とした議論に拙速に踏み込むことは避けるべきである。
日本鉄鋼業としては、率先して自主行動計画を推進することによって、目標を着実に達成する考えである。同時に、あらゆる主体の活動こそが重要であることから、民生・運輸部門に関しても、削減に向けた国民一人ひとりの着実な行動が求められる。国や自治体としても、とりわけ遅れている民生・運輸部門の具体的な施策を早急に推し進めて戴くよう、強く要望する。

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