(株)日立製作所は、巻上機や制御盤等を昇降路内に設置することにより、建物屋上のエレベーター用機械室が不要で、建築設計の自由度を高めることができる「機械室レス荷物用エレベーター」を9月3日より発売した。
従来のロープ式荷物用エレベーターでは、建物屋上にエレベーター用機械室を設置することから、屋上スペースの利用に制限があるほか、道路や近隣の通風や採光を確保するための建築上の制限である斜線制限の対象に屋上機械室も含まれることから、北側にエレベーターを配置しにくいなど、建物内でのエレベーターの配置に大きな制約があった。
また、油圧式荷物用エレベーターでは、建物最下階などに機械室を設置する必要があり、店舗や倉庫、事務所など建物のスペース活用に制限があった。
機械室レス荷物用エレベーターの特長
(1)屋上機械室が不要
従来、建物屋上の機械室に設置されていた巻上機や制御盤等を、エレベーター昇降路内に設置することにより、屋上機械室が不要になった。このため、斜線制限に対して有利になり、建物のレイアウトを計画する上で、エレベーターの設置位置の自由度が増す。倉庫や工場、店舗等の建物内の物流経路を優先したエレベーターの配置が可能で、機械室が不要となることから建築工事の期間とコストの低減も可能となる。
(2)オーバーヘッドの縮小
せり上げ方式の採用と、かご上機器の高さ寸法の低減により、従来のロープ式荷物用エレベーターと比べて、オーバーヘッド(最上階停止時のかごの床面から昇降路の頂部までの高さ)の寸法を短縮した。
例えば、積載質量1,500kg、速度45m/分のエレベーターを設置する場合、ロープ式荷物用エレベーターでは4,450mm、油圧式荷物用エレベーターでは3,450mmのオーバーヘッドが必要だが、機械室レス荷物用エレベーターは3,250mmで、より省スペースでのエレベーターの設置が可能となり、建物屋上の形状への影響がほとんどない。
(3)消費電力の低減
ギヤレス巻上機、インバーター制御の採用により消費電力を低減した。例えば、積載質量1,500kg、定格速度45m/分のエレベーターの場合、電動機容量は7.4kWと、従来のロープ式荷物用エレベーターの8kWに対して約8%、油圧式荷物用エレベーターの40kWに対して約81%低減できるなど、省エネ運転が可能。