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ヤマト運輸/郵政民営化委員会に意見提出

2007年05月22日/3PL・物流企業

ヤマト運輸(株)は、郵政民営化委員会の調査審議に向け、下記の意見を提出を行った。

1.はじめに
本来、「官業は民業の補完に徹する」という官民分担の大原則があります。これは「見えない国民負担」を最小化するために当然のことであり、また、市場化テスト法においても「民でできることは民で」という考え方に則っています。

そもそも民で十分できているサービスに民営化後とはいえ政府出資が残る新会社が官の優遇措置を残したまま参入してくるということについては十分ご理解の上、当該実施計画の内容について慎重なご判断をお願いしたいと思います。

ある有識者は「政府出資が残る間は、大人に保護された子供と同じ。規模が大きいだけに規律が働かない組織が自由を得ると社会全体に悪影響が出かねない。」と指摘しています。

本年10月に予定される郵政民営化を前に、郵政民営化が本当に国民の利益にかなったやり方で実施できるのか、公平、公正な競争条件が確保されているか、貴委員会においてしっかりチェックしていただくことが肝要と考えます。

2.実施計画の適否の判断は原点に戻ることが必要
平成16年9月10日の閣議決定に基づく「郵政民営化の基本方針」を再度読み返して原点に立ち戻って判断していただきたいと思います。

郵政民営化の基本方針の中で、その基本的視点として、(1)経営の自由度の拡大、(2)民間とのイコールフッティングの確保、(3)事業毎の損益の明確化と事業間のリスク遮断の徹底が必要条件としています。

3.郵政民営化の必要条件が守られているか(その1)
「経営の自由度の拡大」については、その条件として、民営化した後、または、最終的な民営化において、との条件があったはずです。

しかし、日本郵政公社の生田前総裁は、「いきなり民と競争すると心臓が止まってしまう。助走期間が必要である。」と言って、民営化への準備期の期間であるにもかかわらず、官業としてのさまざまな特典をフル活用し、やみくもに事業拡大に走っている状況にあります。

これは、郵政民営化の基本方針にもとるフライングの行動であると考えています。

当社では、日本郵政公社のさまざまな不公正取引に対する差止めを求めて、平成16年9月28日、東京地方裁判所に提訴いたしました。その後、当社の請求が棄却されましたので、平成18年2月1日、あらためて東京高等裁判所に控訴し、現在も係属審理となっています。

また、公正取引委員会に対しても、平成18年9月11日、日本郵政公社を独占禁止法違反被疑行為者として申告し、その取締りをお願いしています。

貴委員会におかれましても、上記の当該訴訟、当該申告の内容について十分確認された上で、当該実施計画の妥当性について慎重な審議をお願いしたいと思います。

4.郵政民営化の必要条件が守られているか(その2)
「民間とのイコールフッティングの確保」については、その条件として、①民間企業と競争条件を対等にする。②民間企業と同様の納税義務を負う。③郵貯と簡保では政府保証を廃止する、ということになっています。

しかし、日本郵政公社は各種税金の免除、郵便車両の駐車規制の除外など数々の優遇措置を受けて、事業拡大のみがすでに先行している事実について、貴委員会は十分ご承知のことと思います。

これらの優遇措置は、今後、いつの時点で解消されるのかが当該実施計画において明確に示されておらず、監視を要する点です。

当社は、今回提出された実施計画は、民間企業として必要な前提条件である公平・公正な競争条件をクリアした上での計画ではないと考えています。

特に、当該実施計画に記載されている数値が、民間とのイコールフッティングを前提として優遇措置のないものか、それとも優遇措置を残すことを前提にしたものかが明確になっておりません。

貴委員会には、優遇措置の全容をリストアップの上、個別にその適否についてあらためて調査し直して、日本郵政公社ならびに日本郵政(株)に対し、適切な指導、監視をしていただく必要があるものと考えます。

もし、ご調査の結果、完全に民間とのイコールフッティングが確保されていない実施計画であるならば、また、仮に一定の優遇措置が必要であると判断された場合においても、その価額、適用範囲、適用期間等が不適切であるならば、直ちに当該実施計画の撤回または見直しの方向で指導力を発揮すべきであると考えます。

5.郵政民営化の必要条件が守られているか(その3)
「事業毎の損益の明確化と事業間のリスク遮断の徹底」については、①郵政3事業の事業毎の損益を明確化する。②他事業(郵便事業)における経営上の困難が金融部門に波及しないようにするなど、事業間のリスク遮断を徹底すること、を必要条件としています。

これは、まさしく今まで郵便事業に対し、郵貯事業や簡保事業からの内部補助があったとみなさざるを得ないということを危惧し、民営化後の新会社にあっては、そのようなことのないように釘を刺したものといえます。

第3項中段に述べているとおり、東京地方裁判所に引き続き、現在東京高等裁判所において日本郵政公社の不公正取引の差止めを求める裁判が進行中です。日本郵政公社は、本来、官業(公企業)であれば、官のコスト計算を部門ごとの採算で開示する義務を果たさねばならないところ、ゆうパック事業にかかる経理情報は、営業秘密であるとしてかたくなに情報公開を拒んでいます。自分に都合の悪い情報は開示しないように見受けられます。

したがって、日本郵政公社の業務等を承継する新会社には、有利情報、不利情報を問わず、民間企業であれば当然求められるディスクロージャーが完全に行われる仕組みが当該実施計画書に明記されているか確認する必要があります。

その結果、もし完全なディスクロージャーが担保されない仕組みであれば、貴委員会において事前にチェックして見直しの指導をされるべきであると考えます。

6.当該実施計画に対する具体的指摘事項
当社は、宅配便事業を主力とする運送会社として、郵政民営化後において競合する郵便事業(株)および郵便局(株)について、日本郵政公社より承継する実施計画上のいくつかの問題点について特に指摘しておきたいと思います。

(1)優遇措置の取扱いについて
平成19年10月以降、新会社の郵便事業(株)は、郵便法のもとで展開する郵便事業(信書)と貨物運送法制のもとで展開する貨物運送事業(小包サービス)の2事業を実施するとなっています。現在、日本郵政公社はこの2事業を展開していますが、そこには数々の特典を有する優遇措置が設けられています。

10月の民営化後、当然のことながら、少なくとも貨物運送事業における優遇措置は完全に撤廃されるべきでありますが、その道筋が当該実施計画に明記されておりません。また、優遇措置撤廃の有無、時期について明記のないまま、各年度の損益計画が立てられていることについては、信頼性が担保されていない計画であると考えます。

当社は、民間でも同様のサービスを提供しているのにも関わらず、民営化後の郵便事業(株)が、「ユニバーサルサービスの提供」という名のもとに、コスト補填を受けられるような仕組みが導入され、民間とのイコールフッティングを妨げることがないように適切な監視がなされることが必要だと考えます。また、民間と同基準のディスクロージャーが是非行われるべきであり、貴委員会にその継続的な監視をお願いしたいと思います。

(2)2事業のコスト構造について
「承継会社が行う業務の運営の内容及び見通し」別紙3-②に掲げる郵便事業株式会社の損益見通しでは「郵便事業」と「貨物運送事業」の収益は分離されているものの、コスト面では2事業の費用がそれぞれ明確になっておりません。

引き続き優遇措置を受ける事業と、そうでない事業の損益を別に明記していない現状の当該実施計画では、民間企業との公平、公正な競争が担保されているとは言えません。

(3)郵便局(株)の受託手数料について
「承継会社が行う業務の運営の内容及び見通し」別紙3-③の郵便局(株)の損益見通しでは、営業収益は各事業会社からの受託手数料が多く占めていますが、郵便事業からの受託手数料が郵貯、簡保事業よりも低く計画されていることについて、それがどのような根拠で計算されたもので、業務実態に合わせて検討したものか、明記されていません。

このような当該実施計画では、当該事業の承継が適切に行われるのか判断することはできません。

(4)将来の国民負担の排除について
郵便事業(株)の損益計画が未達となった場合、民間企業の市場原理と反するような補填がなし崩し的に行われたりするおそれがあります。また、ユニバーサルサービスの提供会社であるとの理由で、ユニバーサル基金等、将来の国民負担となるような仕組みが導入されるおそれがあります。

したがって、貴委員会には今回の事前計画のチェックはもとより、民営化後の郵便事業(株)をはじめとする新会社に対し、定期的に十分な監視をお願いし、将来の国民負担排除のためのご尽力をお願いする次第です。

7.まとめ
本年10月の郵政民営化に際し、国内外にわたり、健全な経済社会の構築、維持発展のためには、常に公平、公正な競争条件が確保されていることが大前提となります。これを守るための最後の砦が貴委員会であり、貴委員会には是非その役割を全うしていだだきたいと考えております。

つきましては、本意見書の内容についてよくよくご検討いただき、今般の日本郵政株式会社作成の事業承継計画に対し厳正なチェックをお願いいたします。併せて日本郵政公社による民営化前の駆け込みフライングの阻止と民営化後の各新会社に対しては、違法、または不適切な事業活動が行われないように、継続的かつ十分な監視を強くお願いするものです。

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