公正取引委員会は8月31日、日鐵運輸(株)に対し、独占禁止法第49条第2項の規定に基づき、審判開始決定を行った。
本件は、当委員会が北九州市が発注する下水道設備工事の入札参加業者27社に対して行った平成16年6月22日付けの課徴金納付命令について、日鐵運輸から審判手続の開始の請求があったものである。
日鐵運輸ほか32社は、北九州市が指名競争入札の方法により発注する下水道の施設(浄化センター、ポンプ場及び低地ポンプ場をいう。)に係る機械器具設置工事(北九州市に機械器具設置工事業のほか電気工事業又は電気通信工事業についても建設業登録をしている者のみを指名して発注する工事、ディーゼルエンジン設備に係る工事及び機械器具製造業者のみを指名して発注する工事を除く。)について、共同して、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた(独占禁止法第3条の規定に違反し、同法第7条の2第1項に規定する「役務の対価に係るもの」に該当する。)。
第1回審判期日及び場所
(1) 期日:平成16年10月22日(金) 午後2時
(2) 場所:公正取引委員会審判廷(中央合同庁舎第6号館B棟19階)
本件審判開始決定により失効した課徴金納付命令
納付命令番号:平成16年(納)第230号
課徴金額:1759万円
違反行為(事実)の概要及び法令の適用
第1違反行為(事実)の概要
1.日鐵運輸ほか26社(以下「27社」という。)、三島光産(株)、若松熱錬(株)、日機プランテック(株)、龍建工業(株)、(株)近藤商会と新光エンジニアリング(株)の33社(以下「33社」という。)は、遅くとも平成11年4月1日以降(阿部機設工業(株)にあっては平成11年7月22日、エスアイ技研(株)にあっては平成11年8月25日、日立金属工事(株)にあっては平成13年8月1日、(有)黒崎エンジニアにあっては平成13年10月31日ころ以降)、北九州市発注の特定下水道設備工事について、受注価格の低落防止等を図るため
(1) 北九州市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には、次の方法により、当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
ア 当該工事について受注を希望する者が1社のときは、その者を受注予定者とする
イ 前記ア以外のときは、当該工事に係る営業活動の実績、機械器具の種類、受注実績等の事情を勘案して、指名業者の間の話合いにより受注予定者を決定する
(2) 受注すべき価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する旨の合意の下に、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
2 33社は、前記1により、北九州市発注の特定下水道設備工事の大部分を受注していた。
3(1) 33社のうち、三島光産は、遅くとも平成12年11月27日以降、前記1の合意から離脱した。
(2) 33社のうち、若松熱錬は平成12年4月3日ころ以降、日機プランテックは平成13年6月30日ころ以降、龍建工業は平成13年10月23日ころ以降、近藤商会は平成14年6月20日ころ以降、新光エンジニアリングは平成14年11月11日ころ以降、事業活動の全部又は一部を取りやめている。
(3) 平成15年3月25日、本件について、当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ、27社は、同日以降、前記1の合意に基づき受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
第2 法令の適用
33社は、共同して、北九州市発注の特定下水道設備工事について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、北九州市発注の特定下水道設備工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、これは、独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反するものである。