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日本貨物航空/改善措置を国土交通大臣に提出、担当役員退任

2018年08月17日/3PL・物流企業

日本貨物航空は8月17日、国交省の航空輸送の安全の確保に関する事業改善命令と業務改善命令に対し、背景や問題点・要因を分析の上、改善措置を国土交通大臣に提出した。

機材は全11機中2機が運航再開しており、残り9機は機体の健全性を確認し耐空検査を受検後、順次復帰する予定。

役職員への処分として、大鹿社長、佐高専務を30%減給、松田整備担当執行役員を8月末日付けで退任を発表した。

親会社の日本郵船は同日、日本貨物航空に対し、法令・規程等の遵守と安全意識の再徹底をはじめとし、提出された改善措置を確実な実行と、その内容を適宜見直し継続的な改善に取り組み、また、コンプライアンス体制の強化により再発防止の徹底に取り組むことを監督・支援するとともに、グループ全体の法令遵守の徹底に全力を尽くすと発表した。

日本貨物航空の主な改善措置

人員規模に見合った運航規模への見直しを図る。

ボーイング747-8Fへの1機種化による整備を含む生産体制に見合った運航規模に見直す。

今年3月にANAと契約締結した「戦略的業務提携」に基づき、今年4月よりANAから5名の人的支援を受け、整備スタッフ部門及び整備現業部門の強化を図った。更に9月1日よりANAから3名の人的支援を受け、品質保証部門、技術部門、現業部門のマネジメントの強化を図ることで、整備グループ全体の組織強化も図る。

整備間接部門である技術管理、生産管理、品質管理の担当者各1名を整備現業部門に常駐させ、それぞれの機能面からのサポート体制を強化する。

成田以外の空港の整備サポートのため、運航便が多い時間帯について、MOC(24時間体制で整備支援を行う部門)の責任者を現行1名から2名に増員する。

今回の不適切な整備と整備記録の改ざん、隠ぺいの内容を全社で共有し、各部門でグループディスカッションを行い全社での情報共有及び意見収集を行う。

社長と安全統括管理者による全部署との直接的な対話の機会を設定し、安全意識とコンプライアンス意識の醸成を図る。

全役職員と階層別に対して、安全意識とコンプライアンス意識に関する教育を実施する。また、それらを定着させるために、マネジメント層による日常的なモニターや指導を実施するとともに、社外有識者等による各職場の状況確認及びディスカッションの機会を設定する。

耐空証明更新受検を確実に実施する体制を構築し、全機の耐空検査受検(連続式から有効期間1年への変更)を速やかに実施する。

自社航空機における機体構造に関する整備作業への対応は、自社における体制の再構築が完了するまで、香港の整備会社(HAECO)と台湾の整備会社(EGAT)による委託体制を継続するとともに今後は、迅速性の観点よりANAの支援を受ける予定。

今後の進め方について、これらの改善措置は、取り組み実施後の評価と現在継続中の社内調査委員会による最終的な調査結果等に基づき、内容の見直しを適宜行い、安全文化の更なる定着と安全管理システムの継続的な改善に取り組んでいく。

対象社員について懲戒規程に則り厳正に対応する。

行政処分に至った背景や問題点

社内調査委員会による調査、第三者の立場から監査を依頼した全日本空輸による検証等を受けて、今回の行政処分に至った背景や問題点を分析した。

2007年7月の自社整備体制確立後、ボーイング747-400Fを運航していたが、2012年よりボーイング747-8Fを順次導入したため、1機種に比べ整備業務量が増加した。また機数についても、2011年度に比べ2016年度は約1.6倍の機数を運航していたにもかかわらず、整備部門の人員数は、微増にとどまっていた。結果として、運航規模に比べ整備部門の人員数が徐々に不足していった。

このような業務量増加のため、整備部門のマネジメント層・スタッフ部門が整備現業部門を組織的に十分サポートできなくなり、整備現業部門からの信頼低下、独自判断・解釈を行う環境が醸成された。そのような中、経験・知識を有する者の権威が高まり、経験者への意見が言えない組織風土が生まれ、その結果として整備記録の改ざん、隠ぺいにつながった。

2016年10月に国土交通省から厳重注意を受けた事例の対策が効果的に機能しなかった原因は、問題発生の背景把握もふまえた対策が適切に行われなかったことが挙げられる。

特に役職員の安全意識とコンプライアンス意識の徹底について、知識付与にとどまりそれを個々の実行動として定着させるための施策がなされなかったこと、また厳重注意に至った事象について個人が特定されることを過度に恐れたことから具体的な事例共有が全社で行われず、全社員への情報共有、意見聴収が行われなかったことが考えられる。

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